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2009 08,02 12:00 |
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「コレクター」 JMM[JapanMailMedia] 2009年7月31日発行 昨年の終わりだったですか、アムステルダムにあるゴッホ美術館の理事をしているマドレーヌ・ワードナーさんという友人から頼まれごとをされたことがありました。 ワードナー氏いわく:数年前、オランダの若いカメラマンが、ゴッホ美術館の支援で「ゴッホの軌跡 Following Van Gogh」という紀行写真集をつくったことがあった。 そんなあるとき、ゴッホが生前行ってみたかったけれど結局行くことのなかった土地をプログラムに加えたらおもしろいじゃないかと思いついたというのです。 ゴッホがおそらく行ってみたいと思っただろうと彼が考えた国は、日本であります。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
知られるようにゴッホはパリに住んだ時代に浮世絵の影響をおきく受け、浮世絵の版画を買い集め、また花魁を見よう見まねで描いたこともあった。パリで知りあった印象派のマネとドガとも親しくしていたし、マネもドガも日本画の影響を受けていましたから、彼らと日本の話をしていたことも想像に難くなく、そして流浪の画家・ゴッ だから、カメラマンくんは日本へいって写真を撮りたい、浮世絵の原点を見てみたい、東京の神社、京都の仏閣を撮り、浜名湖あたりから富士山をカメラに収めたい、そうすれば「ゴッホの軌跡」がより膨らんで面白いものになるだろうと考えたのであります。おもしろい着想だとわたくしも思い、東京のいくつかの篤志家・企業財団に話してみたのでした。 だが、昨年末というタイミングが悪かったのかね、どこも不況を理由に乗ってこないのです。3万ユーロたらずだというのにである。数年前だったら係長クラスの決裁で落ちた金額ではないか。 ふん、美術や文化に関心があるといったって実際はこんなもんさ、と彼らの鍍金(めっき)が剥げた気がしたのですが、反面、昨今の美術界はけっして不況ではなく、金融不安などどこ吹く風、世間様の不安をよそに大金が動きまくってじつに盛況なのだとワードナーさんは話していた。 「たとえば、先日のロンドンでのオークションね」と彼女は続ける。「17世紀から19世紀までの巨匠の作品がどっとでて、どれもが予想以上の高値で売れたのですよ。」そのニュースは私も知っていて、7月はじめのクリスティーズとサザビーズの競売では、48出展のうち33点が売れたのだという。 もっとも、48分の33という数字が多いのか少ないのかはわからないのですが、どれもが予想を超えた高値で売り切れたというのには、わたくしも驚いたのであります。美術愛好企業がたった3万ユーロを出せないでいるその地球の反対側で、合計8千6百万ドルが一日の競売で動いたのである。(わたくしは訪ねる先を間違えたというわけですね。違うドアを叩いてしまったわけだ・・・。) 競られたのは、フランス・ハイスとかウィレム・ヘッダとか、オランダに住んでいれば聞いたり見たりすることのあるオランダ17世紀の巨匠とよばれる画家たちの作品であります。 ヘッダには「 Still life with pie, silver ewer and crab」という作品があって、ハーレムの美術館だったかな、わたくしも一度見て印象に残っている。薄暗い部屋のテーブルに、殻をむいた牡蠣、ちぎったパン、茹でた蟹が腹を上にむけて冷えたまま皿にのり、横に銀のピッチャーがどんと置かれているという静物画で、ヨーロッパのオールドマスターたちの描く食卓は、たいがいがこの絵のようにむきだしの食欲が描かれております。 わたくしは虚弱体質なのか、ああいう静物画を見て、牡蛎が食べたい、喉が渇いた、銀の水差しから葡萄酒を飲みたい、などととても思えないのですが、西洋人は、ああいう薄暗い絵を傑作と思うらしく、オランダに何年住んでもこれだけはわからない。 それやこれやでクリスティーズもサザビーズも記録的な売り上げを作ったということですが、カタログを眺めていて気がついたことがありました。ジョージ・スタッブスが1789年に描いた「ロベック男爵」という絵が競売にかかっていたのであります。ただし、こちらは大きく値崩れしていた。 ヨーロッパには、「スポーティング・アート」というジャンルがあります。特にイギリスで成立・発展したジャンルですが、ほら、イギリスの田舎にあるお屋敷に招かれると、玄関脇とか階段の踊り場、あるいはゲストルームに狐狩りの絵とか厩舎に佇む馬の絵とか走っている猟犬の絵とかが掛かっているかことがあるでしょう。 多くは自宅の領地で行うハンティングだったり、家族で所有するアラブ馬だったり、そういう情景を描いた絵でありますが、フランスやドイツのアリストクラートが家族の肖像画を好むのと対照的に、アングロサクソンの富裕層はカントリーの風景を切り取るのが好きなのだだということであります。それがスポーティングアートという スポーティングアートというジャンルは、イギリスではすでに300年の伝統があって(アメリカやカナダのインディアンの美術をスポーティングアートとみなす説もあるが、こちらはずっと新らしい)、18世紀以来、サルトリウス親子(ジョン・ノルト、ジョン・フランシス)、アブラハム・クーパー、ジェームス・セイモア、ジョージ・スタッブス、J.L.アガシなどが知られています。(みな200年以上前の人々ですが、現代ではエリザベス女王のもち馬を描くスーザン・クロフォードという画家がいちばん知られているでしょう。) スタッブスは医者を志した学生時代に解剖学を勉強したことがあり、そのおかげで動物の動きを筋肉や骨格の働きから描くことができた。「ロベック男爵」では、馬上の男爵が腹にけりを入れて馬がいまにも駆け出さんとするシーンが描かれていますが、馬のいななきさえ聞こえそうにリアルであります。背景にはイギリスの田舎の穏やかな丘陵が広がっている。その牧歌的な背景と元気いっぱいの馬とのコントラストが、じつに気分のいい、つまりサロンに飾って気持ちのよい絵になっているのであります。スポーティングアートの愛好家は、そういう風情がたまらないのですな。 「ロベック男爵」は、その知名度のゆえに、すでに何回も市場に出ております。1972年にはじめてオークションにでたとき、スポーティングアートとしては史上最高の13万ポンドで買い取られた。15年たった1987年、絵はまたオークションに戻ってきてそのときは220万ドル。2倍半である。1999年になり、同じ絵は200万ポンド(300万ドル)となった。さらに2005年、男爵はこれより法外に高い金額で買い取られたといいます(このときだけ値段は公表されていない。誰が買ったかも秘密のままでした。) インターナショナル・ヘラルド・トリビューンという英字新聞に、美術評をもう30年近く書き続けて来ているゾーレン・メルキアンという批評家がおります。彼は、男爵が競りにはじめて出て来たときから、「スポーティングアートはそんなに値上がりするものではない。いつか誰かが火傷するかな」と言っていた。 そして今回、その「謎の買主」は男爵を売りに出し、絵は190万ポンドで落ちたのであります。手数料その他を引くと、150万ポンドくらいか。値崩れであります。その没落ぶりはほかの名画に比べれば小さいほうかもしれませんが、スポーティングアートは基本的に家族の肖像画とおなじく、プライベートなものでしょう。絵の価値 その下落はスタッブスのせいではないけれど、絵の価値より投機で動いてきた末路であります。 ところで、ずいぶん昔のベストセラーですが、「コレクター」という小説があった。 イギリスの作家ジョン・ファウルスの書いた小説で、ある田舎町に住んでいる青年の話である。彼は子供の頃からトンボとかカブトムシを捕まえて標本にするのが趣味だったのですが、長じて勤めをはじめます。オフィスの窓から毎朝外を眺めるときれいな女性が通る。彼は片思いをはじめるのですが、話すきっかけもなく、ただ見てるだけ。 ところがあるとき、宝くじに当たり、大金が転がり込むのです。そこで彼はこのお金で町外れに広大な屋敷を買う。そして、その女性を誘拐する。屋敷の地下室に閉じ込めるのです。 彼女は地下室から逃げようとありとあらゆる手を使う。ドアを壊そうとしたり、窓ガラスを割り鉄格子をねじろうとしたり、彼を相手に怒ってみたり拗ねてみたり、あらゆる手段を試みる。青年も青年で、彼女の気を引こうといろいろな手を使うのです。 だが、幾週間もふたりきりで地下室に住むのは奇妙な経験であります。幽閉・密閉された空間というのは不思議な作用をおこす。彼女は青年を好きになっていくのです。彼はほっとして、「やっとぼくを好きになってくれた」と彼女に近寄ることができたのです。だが、最後になって彼はうまくいかない。果たすことができないのでした。 ふたりはがっくりと疲れきるのですが、やがて彼女は地下室の寒さで風邪を引き、肺炎を併発して死んでしまう。青年は呆然として死んでしまった彼女をしばらくみつめているのですが、やがて気を取り直して彼女を担ぎだし、ひろい屋敷の裏庭に埋葬する。 この小説は、最初の章が青年の独白、第二章が女性の独白という一人称形式で描かれていて、ですから読者は青年と女性の行動の理由を時系列で知ることになる。ふたりはまったく違う動機(青年は彼女の気をひきたい。彼女はどうしても逃げたい)でお茶を飲み、食事をし、暴力をふるい、仲直りをして時間を過ごし、褥を重ねるまでに至るのでした。 そして、最終章は女性を埋葬した青年の独白であります。彼女が死んだあと、青年は彼女がつけていた日記をみつけるのです。が、日記には青年への思慕などまるでなく、憎しみだけが書き連ねてあって、愛のひとかけらも書いてなかった。彼女は彼を好きになったといって彼に擦り寄ったが、じつはそれは自由を得るための策略・方便だったことが書いてあったのでした。 彼が果たせなかったことで、彼女の目的はけっきょく達せられなかった。その絶望が彼女を衰弱させ、けっきょく彼女は死んでしまった。日記には、ピンで刺しぬかれて動くことも飛ぶことのできない、標本にされた蝶の苦痛が書かれていたが、その個所を青年は無表情で読み終わる。そして、埋葬を終えておおきく息をついた彼は、さっぱりとした表情に戻り、「では、また別の蝶を捕まえてくればいいな」とつぶやいて、街へむかって自動車を走らせるところで、小説は終わるのでありました。 コレクターという題が示すように、収集家にはある種の狂気がありますな。対象に対するとてつもない執着心である。青年が宝くじで大金をつかんだのと同じく、経済が弾むと、絵画のように価値が抽象的な物体(オブジェ)は理屈をこえて沸騰してしまう。それがコレクターの狂気であり、おもしろさなのでしょうが、不況はアタマを ------------------------------------------------------ ─…─…─…──…─…─…──…─…─…──…─…─…─ だから、カメラマンくんは日本へいって写真を撮りたい、浮世絵の原点を見てみた だが、昨年末というタイミングが悪かったのかね、どこも不況を理由に乗ってこな ふん、美術や文化に関心があるといったって実際はこんなもんさ、と彼らの鍍金 ・・・って事で、2009年7月31日付で(対ユーロ)134.32円 もう既にここでお金の話をする事自体、何か失礼にあたるような気がする程、 ワタシはこういった類(たぐい)の恥を世界中で聞いてきました。 双方共に日本企業が世界中の美術品を荒らし捲くった時期で、 日本企業は世界中で文化の恥を振り撒いていますが、
昨今の美術界はけっして不況ではなく、金融不安などどこ吹く風、世間様の不安をよそに大金が動きまくってじつに盛況なのだとワードナーさんは話していた。 コレッ!当然なんです。 これから大不況の時に一番強いのはこういった絵画等の美術品なのです。 ・・・で、話を戻して大不況の時に一番強いのが絵画等の美術品なんですが、 ワタシがいつも紹介しているシルク・スクリーン(版画)でも良いんです。 貴方が良いと思った一品は、必ず誰かも良い・・・って事を理解する一品なのです。
美術品を金にしか換算できない連中は、バチが当たればよい!! PR |
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コメント |
ゴッホの作品はとても好きです。
偶然、デスクの中にゴッホの手紙なる文庫本が入っていましたので・・・・。 DVDでもゴッホの生涯を描いている作品を何度もみましたが、まあ、これは多少脚本化されているのですべてではないのでしょうが・・。 私は古いものが結構好きなのですが、何故かというとその当時の空気、自然、、人が創り上げている・・・やさしくて本当に軽やかな感じでワルツを踊るような・・といったらおおげさなのですが決して重々しくなくて・・ 不況もどこ吹く風で美術会(オークション業界)などはとても潤っているみたいです。某オークション企業の方と知り合いですが、私がちょっと心配なのは、特に日本近代絵画の物故作家の作品にたいする鑑定?とても心配です。いい作品が葬りさられないかと・・新発見にたいする積極的な取り組みとか号サイズで価値を決めてしまうとか・・もろもろです。レゾネの存在も多少影響しているのかもしれませんが。商業的な価値判断だけではさびしい限りです。 ま でも好きで収集している分には関係ないことかもしれませんが・・。 【2009/08/0313:18】||momo#526e6142c7[ EDIT? ]
Re:無題
特に日本近代絵画の物故作家の作品にたいする鑑定?とても心配です。いい作品が葬りさられないかと・・新発見にたいする積極的な取り組みとか号サイズで価値を決めてしまうとか・・もろもろです。
大いに同感です。あの号サイズで価値を決める・・・っていうのは 何々でしょうねぇ~・・・昔から不思議です。 ・・・っていうか、日本の美術界や美術名鑑そのものが不思議だらけで、 意味不明です。まぁ~そのかわりに無名だけれども素晴らしい絵画が 安価で手に入りやすいのですが・・・・・ 昔、親子で絵画を買い漁ったことがありましたが、 現在ではみなさん有名になられて、個展があってもお話しする機会もありません。 まぁ~値打ちは上がったのでしょうけれども、価値を上げる為に 購入したのではなく、こんな素晴らしい絵画が、こんなにも安価で・・・ 勿体無い・・・って処から親子で購入していただけなので値打ちはどうでも良いです。 ワタシは季節季節で掛けかえるのを楽しんでいるだけです。 でも実際・・・・・日本では素晴らしい画家が育ちにくい環境ですね。 |
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