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2009 06,28 17:00 |
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体細胞クローン牛・豚を食用とすることについて、内閣府の食品安全委員会が「従来の繁殖技術と同様に安全」と評価をまとめたのを受け、農林水産省は26日、「クローン牛は『安全』と思うが、生産率が極めて低く、コストが高くなるため、食用として市場に回すことは見込めない」として、当分の間は引き続きクローン牛生産を研究に限定することを明らかにした。 また、農水省はクローン牛を種牛とすることも、「品種改良が進まなくなる恐れがある」として慎重な姿勢だ。今後、「国民への理解を深めたい」とし、方針について来週にも意見募集を始める予定だ。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
金融危機の次は食糧危機の到来か 遺伝子組み換え作物の光と影 人口増加と異常気象、そして金融危機によって食糧危機が目前に迫っている。食糧増産に役立つ遺伝子組み換え(GM)作物は高いリターンが期待できると、不動産バブルで痛手を負ったヘッジファンドが食糧ビジネスに新たな活路を見出そうとしているが・・・
アメリカ発の金融大地震は世界各地に巨大な津波となって押し寄せている。この「100年に1度」といわれる金融パニックの次に控えているのが食糧パニックであろう。 なぜなら世界の人口は1970年の37億人から2007年には67億人へと増加。特に発展途上国においては27億人が55億人へとほぼ倍増しているからだ。すでに世界各地で食糧不足から起こる血なまぐさい争いが絶えない。途上国に限らず、金融危機の震源地であるアメリカでも食糧の買い溜めや家庭菜園に走る市民が急増している。ウォールストリートや首都ワシントンでも食を求めて暴徒化する失業者の動きが懸念されるほど。 加えて、近年新たな変化として注目を集めているのが、バイオ燃料に対する需要とその生産の急拡大である。これまでは食糧として使われていた農作物のうち、特にとうもろこしを原料としたバイオエタノールの需要が急増してきた。 そのため、とうもろこし自体は生産が増加しているが、本来の食糧や飼料用に回される分量が減少することになってしまった。需要が増えた結果、とうもろこしの価格も急上昇することになり、それまでとうもろこしを主食としていた途上国の多くの消費者は米や小麦へ依存する割合が大きくなり始めた。こうした需給関係の変化を受け、米や小麦などの穀物価格も上昇するようになっている。 ところが、地球規模で異常気象が頻発するようになり、1990年代までは食糧の在庫が十分あったにも係わらず、2004年以降は備蓄水準が極端に低下。米の場合は、35%程度であった備蓄在庫量が20%を切るまでになってしまった。また、小麦の場合も35%から20%へ、とうもろこしに至っては30%が15%へといずれも大幅に低下している。 穀物生産の担い手であったオーストラリアを襲った2年連続の大干ばつ、中央ヨーロッパや東ヨーロッパを襲った異常な熱波、そして世界最大の穀倉地帯といわれるウクライナやロシアでの異常な低温による大幅な生産量の低下が世界の食糧事情に深刻な事態をもたらしている。 輪をかけるように、世界各地で水不足や砂漠化の進行が見られるようになった。地球規模で捉えると日本の農地面積を遥かに上回る500万ヘクタール以上の土地が毎年砂漠化の波に飲み込まれている。 たとえば、アラル海では水量がかつての4分の1にまで減少し、周辺の農地では塩類集積が進む。サウジアラビアでは地下水が急速に枯渇し、小麦の生産が大幅に減少。アメリカのロツキー山脈の東側一帯では大規模なスプリンクラー方式の灌漑を進めた結果、地下水位が低下し農業用水の汲み上げができなくなっている。農業大国という一面を持つアメリカですら、地下水の枯渇による農業生産の危機的状況が目前に迫っているようだ。
こうした状況に鑑みアメリカでは遺伝子組み換え(GM)作物への期待と導入が急ピッチで進むようになった。 遺伝子組み換え技術を応用し、さまざまな品種改良が加えられた作物が登場。大豆、とうもろこし、綿花などの品種は除草剤を添付しても枯れることのない除草剤耐性や特定の害虫への抵抗力の備わった害虫抵抗性、あるいはその両方の特性を備えた品種が人工的に生み出されるようになった。 また、最近では収穫量の大きな品種や旱魃や塩害に強い品種、そしてとうもろこしの遺伝子を米に組み込むことでビタミンAの元になるベータカロチンが含まれるようにしたゴールデンライスと呼ばれる栄養強化を実現する品種まで開発された。 このGM作物の栽培に関しては、アメリカが国家的な取り組みを進め世界をリードしている。2007年の統計では、全世界の穀物生産量のほぼ9%は遺伝子組み換え作物であり、その大半はアメリカで収穫されたもの。 実は、こうしたGM種子の開発メーカーや食品メーカーへの投資を専門にするファンドも増えている。たとえば、ウォールストリートでもトップ10に入るクウェーカー・ストラテジック・グロースのファンド・マネージャーであるマヌ・ダフタリ氏曰く、 不動産バブルで痛手を負ったヘッジファンドが食糧ビジネスに新たな活路を見出そうとしているようだ。ゴールドマン・サックスも同様である。
1996年にアメリカでは遺伝子組み換え大豆の商業生産が本格化した。当時は170万ヘクタールであったが、2007年にはアメリカを筆頭に世界23カ国で1億1430万ヘクタールにまで急拡大。10年間で作付面積が700倍に拡大した。その結果、アメリカはGM大豆に関しては世界の64%、GMとうもろこしでは24%、GM綿で43%、GMカノーラでは20%を占めるまでになった。 ドイツ、フランス、オーストリアなどヨーロッパや日本においては、GM作物の安全性や環境面での影響を危惧する消費者の声が大きく、これらの遺伝子組み換え作物の普及には一定の歯止めがかかっている。しかしアメリカに言わせれば 「世界的に広がる異常気象や生産量の低下を放置すれば、価格の上昇や食糧をめぐる対立や紛争が激化する。GM作物こそが、世界の食糧危機にとって救世主になるだろう」。ブッシュ大統領自らがGM作物の安全性を盛んに強調してきた。 こうしたGM作物用の種子マーケットを牛耳っているのはモンサント、デュポン、ダウケミカルの3社。特に新種の種子を大量に開発し、特許を押えているのがアメリカのモンサントである。世界最大の種子メーカーに他ならない。 同社によれば「GM作物の栽培が広がれば雑草を除くために畑を掘り起こす必要もなくなり、農薬の散布回数も減る。そのため土の中から排出される二酸化炭素も抑えられるし農機具のエネルギー消費も抑制できる。地球温暖化対策としては極めて有効である」とのこと。 モンサントでは2030年までにとうもろこし、大豆、綿花の収量を2000年と比べ倍増できるようにするため、品種改良とその普及をアメリカ政府の全面的な支援のもとで進めることを明らかにしている。このような新たなGM作物の導入により、栽培に必要な水や土地、そしてエネルギーの使用量を30%近く削減できるとも主張。 またモンサントは途上国の貧しい農民の生活改善に役立たせようと旱魃に強い品種に関しては、アフリカ諸国を対象に特許料を免除するとの方針を打ち出した。そして、まだ取り組んでいない米と小麦に関しても新たな品種改良に向け、関係する研究機関に対し1000万ドルの寄付を行うことを発表するなどの念の入れ様。 これだけ聞けば、モンサントやアメリカ政府の取り組みは食糧危機を回避する上で実に頼もしいとも思われる。はたして、そのようなメリットばかりが享受できるのであろうか。現実は残念ながらそれほどバラ色ではないようだ。
遺伝子組み換え技術によって生まれた新しい品種が想定されたような結果をもたらすためには相当程度の知識や技術が必要とされる。途上国の貧しい農民たちがそれまで慣れ親しんできた栽培方法から新たな栽培方法に移行するのはうたい文句ほど簡単ではない。 さらに言えば、GM作物は農家による自家採取ができないため毎年種子を購入し続けなければならない。これこそ種子メーカーにとっては「一度GM作物に転換させてしまえば半永久的に種子の売り込み先が確保できる」という美味しいビジネスが成り立つのである。そのために種子メーカーでは1回しか実を実らせない種を人工的に作り出している。 しかもこれらのGM作物の種子の値段は従来のものと比べれば数百倍から数千倍という法外に高い値段で売られている。販売する側に言わせれば「それだけ高い値段であっても労力が節約でき、しかも収穫量が飛躍的に伸びるので、十分すぎるほどの利益が確保できるはず」と売り込み攻勢は強気そのもの。 実際このモンサントのGM作物種子を大量に利用し始めたのがインドだった。ところが、そのインドでは深刻な問題が発生している。昨年秋、日本を公式訪問したイギリスのチャールズ皇太子は直前にインドも訪ねていた。 そこで彼が目にしたのは、インドの農民たちが毎月1000人以上も自殺していることであった。この1年間ですでに13万人を超える農民たちが相次いで自ら命を絶っている。その原因がGM作物にあるといわれるのである。業者から言葉巧みに売りつけられたものの、貧しい農民たちは高い種子を購入できる蓄えが無いため、高利の金貸しから資金を借り受けGM作物の栽培に取り組み始めた。 しかし、予想以上にその栽培方法が難しく、思ったほどの収穫を達成することのできない農家が続出した。また、たとえ収穫できた場合でもその作物を食べたことにより農民自身が健康被害に直面したり、奇形児が急増するという二重の苦難に陥るケースが急速に拡大した。借金取りに追われ、また自らと家族の健康を害したことで自責の念から自殺の道を選択する農民が後を立たないという。 この厳しい現実を目の当たりにしたチャールズ皇太子はGM作物の危険性をイギリスの国民のみならず、日本の消費者や生産者にも伝えたいと願ったようである。とはいえ、イギリスですらブラウン首相は「GM作物の規制を撤廃すべきだと考える」と発言。動物実験でGM作物の健康被害を明らかにしたオーストリア政府など慎重な国々との間で意見の対立が深まっている。
一方、日本においてはGM作物に関する論議はまだ本格化しておらず、チャールズ皇太子の警告をどのメディアも取り上げることはなかった。極めて遺憾なことである。 実は同じ時期アメリカ政府から毎年日本政府に通告される「年次改革要望書」が届いた。今年の要望書の中でひときわ目を引いたのは、このアメリカ発の遺伝子組み換え種子の導入を日本に迫る項目であった。 「世界的にGM作物が広く栽培されているのに日本はさまざまな理由をあげその本格的な導入を拒んでいる。これは世界の食糧不足に対して、アメリカが開発した有効な手立てを無視するものである。世界の食糧危機を乗り越えるためには、日本もアメリカ製の遺伝子組み換え作物を本格的に導入すべきである」というわけだ。 はたして、アメリカ政府が強く求めているようなGM作物が日本のみならず、世界にとって救世主となるものか。我々はインドで巻き起こっている農民の大量自殺という現実を直視し、GM作物が本当に安全で安心できる作物なのか、その実態を正確に把握する必要があるだろう。 食糧の自給率を高めることは必要なことではあるが、副作用や将来の健康被害に繋がる恐れのあるようなGM種子をひとたび導入してしまえば、取り返しのつかない事態になることもありうる。金融パニックのみならず食糧パニックは御免被りたい。その意味でも、チャールズ皇太子の警告を無視するわけにはいかないだろう。 PR |
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