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2009 06,16 11:00 |
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楽観論だけでは世界経済は回復しない (2009年6月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 先週、景気回復の新芽が萎れた。韓国、中国、ドイツでは、輸出が再び大きく減少した。米国では、米連邦準備理事会(FRB)が公表したベージュブック(地区連銀景況報告)が「4月半ばから5月にかけて、経済は弱い状態が続くか、一段と悪化した」と述べていた。 3月に見えた復調のサインは結局、テクニカルな在庫調整以上のものではなく、根底にあるトレンドには変わりがないことが分かった。世界経済は、今年初めほど急激ではないかもしれないが、今も縮小し続けているのである。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
エコノミストのバリー・アイケングリーン、ケヴィン・オルーク両氏の分析が示しているように、世界の工業生産の落ち込みは今も、1930年当時と同じ軌道を描いている。 唯一の問題は、我々は1931年と1932年の再来を避けられるかどうか、だ。 答えはイエスだ。ただし、これは条件つきで、現行の政策に基づき推論する限り、その条件は次第に達成不能に見えてきた。 我々が惨事を回避する条件は、今の危機が続く限り、経済を支える緩和型の金融・財政政策が継続されること、我々が銀行システムを修復すること、そして、復活した金融セクターを抑制する規制を課すこと――だ。 また、近い将来、再び市場の大きな揺れに見舞われずに済むという幸運にも恵まれなければならないだろう。 言い換えると・・・先の答えはノーである可能性も十分あるわけだ。このため、各国の中央銀行と政府はともすれば、景気後退モードの戦略からの脱却を急ぎすぎてしまうリスクを冒す。
ブンデスバンク(ドイツ連銀)のアクセル・ヴェーバー総裁は現時点で、利上げに関するメッセージをどう伝えていくべきかについて語っている。 筆者はそれを聞くと、少なくとも欧州においては、早計すぎる引き締めの危険が確かに存在していることを確信するのである。 財政政策の出口戦略は、6月13日に開催されたG8財務相会合でも最大の議題となり、とりわけ欧州勢が事を急いているようだった。 今、誰一人として、銀行が抱える不良債権問題および資本増強問題を解決していない。タックスヘイブン(租税回避地)に対する大衆迎合的な見せかけの措置を除けば、金融規制の強化も大して進んでいないように見える。 そのうえ、世界の金融システムには、今も潜在的な崩壊の芽が潜んでいる。例えばラトビアは、カチカチと時を刻んでいる時限爆弾だ。 このため筆者は現時点で、世界的な不況に落ち込む確率と、いわば経済停滞状態へ戻る確率は、ほぼ五分五分だと考えている。
このシナリオについて何が腹立たしいかと言えば、避けようとすれば、避けられるという点だ。各国の中央銀行は正しい判断を下した。だが、政治的反応はほぼすべての国において、最悪に近い惨憺たるものだった。 各国は景気回復をもたらすために問題を解決する代わりに、景気回復が問題を解決してくれるのを待つという政治戦略を取ったのだ。 欧州の人々は米国人が成長をもたらしてくれることを当てにしている。米国人は中国人を当てにし、その中国人は世界各国が回復するのを待っている。 仮に、今夏以降予想されている通り、米国が多少の経済成長を取り戻したにせよ、世界の輸出国の助けにはならないだろう。 中国は世界で最も経済成長の著しい国の1つかもしれないが、ドル換算した経済規模はユーロ圏の半分程度しかない。 そして、エコノミストのブラッド・セッツァー氏が自身のブログで指摘したように、中国が世界経済の回復に貢献するという証拠は一切ないのである。 中国の投資は前年比30%以上増えたかもしれないが、輸入は25%減っている。デカップリングに関する大げさな議論や、中国が世界を景気後退から引きずり上げてくれるという議論は、すべて戯言だ。
統計は、中国の輸出と輸入が両方とも落ち込んでおり、輸出の方が落ち込みが激しいことを示している。 すべての人がほかの人が先に動くことを期待しているために、結局は誰一人動かないことになる。その間にも問題は悪化していく。ピークから30%強落ち込んできた米国の住宅価格は、まだかなりの下げ余地がある。 恐らく2010年のどこかの段階で米国の住宅価格が大底を打つまでは、証券化市場が回復を見ることはないだろう。そして、証券化市場の回復なくしては、十分な信用の伸びが見込めない。 景気後退が続く中で、個人および企業の破綻件数は増えていき、それが銀行セクターの問題を悪化させる。 ブンデスバンクのヴェーバー総裁が銀行システムのストレステスト(健全性審査)の結果を公表することを拒むのは、驚くに値しない。 テストの結果はドイツの銀行システムが債務超過状態にあることを示すはずだ。そして、不良資産と不良化する恐れのある資産を足すと、GDP(国内総生産)のほぼ3分の1に匹敵する額になるということを。
過去3カ月間で、朗報と呼べるかもしれない唯一のニュースは、中東欧諸国における通貨危機の脅威が後退したことだった。しかし筆者はそれさえも、本当かどうか確信が持てない。 ユーロ圏の政策立案者たちが、中東欧諸国に早期ユーロ加盟を認めるのを頑なに拒む姿勢は、地域を不安定にする恐れがある。 先週、欧州中央銀行(ECB)はスウェーデンのリクスバンク(中央銀行)に30億ユーロの資金を貸し出すことを余儀なくされた。 この借り入れがなければ、スウェーデンは過去20年足らずで2度目となる銀行崩壊に見舞われた可能性がある。 もはや避けられないラトビアの経済崩壊はバルト諸国に波及し、その他の中東欧諸国の投資家の間でパニックを引き起こす恐れもある。 回復の新芽が萎れたという先週のニュースが重要なのは、まさにこのためだ。 新芽が萎れたことは、状況が改善するまで待つという無策がうまくいっていないということを教えてくれている。3月の息吹の兆しは、慢心を増幅させてしまった。 楽観論が我々を危機から救い出してくれるのは、それが現実に基づく楽観論である場合に限る。先週のニュースは、今の楽観論が現実に基づくものではないことをはっきり示している。 PR |
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