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2009 05,11 23:30 |
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COLUMN-〔インサイト〕偽りの夜明け―白川日銀総裁の警鐘 日銀の白川方明総裁は4月下旬、ニューヨークで「経済・金融危機からの脱却:教訓と政策対応」とのテーマで講演し、“FALSE DAWN=偽りの夜明け”という言葉を使った。この言葉には、1990年代初頭以降の長期経済低迷を経験したわが国金融当局の首脳ならではの深いインプリケーションがある。総裁の意図は、一時的な回復局面=“偽りの夜明け”を本格的な景気回復と見誤らないよう警鐘を鳴らしたかったのだろう。発言のタイミング、その表現は極めて適切だ。 真っ暗やみに突き落とされた景気先行きに対する見方は、ここへ来てかなり改善している。最近発表された米国の経済指標を見ると、下落傾向は続いているものの、下落スピードが緩和しつつある数値が多い。それらは人々のマインド面にも好影響を与えており「このままのペースで行けば、いずれ明るい先行きが見えてきそうだ」という期待が醸成されている。 心理面での改善を背景に、金融市場は世界的に落ち着きを取り戻している。多くの投資家は一時の深刻な危機感から解放され、既に一部の投資資金は、リスクを取って収益機会を探る動きを始めている。それに伴い欧米や新興国の株式市場は、予想以上の速度で戻りを示す展開になっている。 しかし、冷静に経済状況を考えると、問題が全て解決されたわけではないことは明らかだ。足元の景気回復の息吹が、本格的な回復の初期段階=“本当の夜明け”なのか、あるいは一時的な景気回復=“偽りの夜明け”なのか、今のところ見極めは難しい。過度に悲観的な見方をとる必要はないだろうが、かと言って「もうこれで大丈夫」というほど安易な判断を下すことはできない。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
<残る米不良資産の処理> 忘れてはならない重要なポイントは、世界経済の中心である米国には、まだ片づけねばならない問題が残っていることだ。問題の1つは、金融機関の経営状況だ。90年代半ば以降、米国経済は株式―不動産―コモディティーと続けたバブルに酔いしれた。金融機関も多額の収益を挙げ、わが世の春を謳歌(おうか)した。しかし、バブルが破たんした後、金融機関は多額の不良債権を抱えることになった。その処理はまだ終わっていない。 最近発表された米国の大手金融機関の今年1―3月の決算は、専門家が予想した通り、大幅な改善を示した。ところが、株式市場は、収益の大幅改善を好感しなかった。決算の内容を分析すると、今回の収益改善が一種の“化粧”による要素が多いからだ。例えば今回の決算に際しては、時価主義会計の基準が一部棚上げされたこともあり、専門家の中には「政府の支援によって、大手金融機関の収益はかなり水増しされている」との指摘がある。また、一部の大手金融機関には四半期決算の時期を変更したことによって、直近四半期の収益が大きく膨らんだところもある。 さらに専門家の一部が疑問視するのは、“負債評価益”という会計処理だ。これは特定の銀行等が発行した社債などの債務が、当該債務者の信用状況の悪化によって時価が下落し、その結果、発生する評価益だ。この会計処理方法によると、ある銀行が社債100億円を発行し、その銀行の信用状態が悪化したことによって、当該社債の時価が80億円に下落したとすると、100億円―80億円=20億円の評価益が発生することになる。この処理方法をとれば、債務を持った銀行の信用状態が悪化すると必ず、“負債評価益”が発生することになる。 発行体が、時価の下落した債務の買い戻しを行えば、確かに会計上の利益は出るのだが、買い戻しの資金を工面できるかなどの問題は残るはずだ。政府が、こうした処理手法を認めている以上、法律的な問題はないかもしれないが、信用状態の悪化する多くの銀行等が評価益を享受できることに、強い違和感を持つ市場関係者が多いことも間違いない。ニューヨーク在住のアナリストは「今や、米国政府はなりふり構わず対応策を打ってくる」との指摘は的を射ている。
また、今回の景気急落の元凶となった米国の不動産市場の下落に歯止めがかかっていないことも見落とせない。今年2月のS&Pケース・シラー係数は、主要10都市で前年同月比マイナス18.8%、20都市で同マイナス18.6%と依然、大幅な下落を示している。今後も住宅価格の下落が続くようだと、金融機関が抱えるローン債権が痛むことは避けられない。それに伴い多くの金融機関は、直近の四半期にも多額の不良債権処理費用を計上している。不良資産の処理コストは、着実に金融機関の体力を奪うことになる。5月1日現在、米国の今年の銀行破たん件数が31行に達し、昨年1年間の24行を抜いた。これから地方中心に銀行の破たんが続くことだろう。 もう1つ気になるのは、商業用不動産市場及びそれに関連した証券化商品市場の動向だ。4月中旬、全米に約200のショッピングモールを所有する全米第2位のゼネラル・グロ スが破たんした。同社は多額のCMBS(商業不動産担保証券)を活用しており、破たんの影響がCMBSの市場に及ぶことは避けられない。すでに投資家の間では「今後、CMBS市場の機能が急低下することが懸念される」との声が出ている。FRBは、そうした事態をかなり深刻に受け止めており、既にCMBSを担保にした、中・長期の資金供給を行うことを決めた。米連邦準備理事会(FRB)の措置によって、CMBS市場の機能がある程度維持されればよいのだが、期待したほどの効果が上がらないと、投資家の手元で塩漬けになる不良資産が、また1つ増加することになる。それが現実味を帯びてくるようだと、米国経済の立ち直りを遅らせる要因が増えることになる。 その他にも、多額の債務超過に陥っているGMや、再建の足取りが重いAIGなど、ストックベースで抱えている問題は多い。たとえフローベースの経済活動に明るさが見えたとしても、経済全体が背負っている荷物の処理にめどが立たない限り、本格的な景気回復を望むことは難しい。それはバブル崩壊後のわが国の経験を振り返っても明らかだ。 90年代後半、“偽りの夜明け”を“本当の夜明け”と誤認して、景気回復から財政再建へと大きくかじを切った橋本龍太郎政権が、結果的にわが国の景気低迷を長期化させてしまったことを思い返すまでもないだろう。 ニューヨーク在住のベテランディーラーの1人は「政策当局の影響力が増している金融市場の動きだけを見て、景気が回復したと思い込むのは尚早だ」と指摘していた。彼は今、株式市場が上昇することに反対する投資家は、世界に1人もいないとも言っていた。その通りかもしれない。全員参加型で、潤沢な流動性を頼りに堅調な展開を示す株式市場に、不安を持ってみている専門家は意外に多い。そう考えると、今回の白川総裁の発言は、将来、注目されるような効果を持つことになるかもしれない。 景気の底を確認するのは簡単なのです。 不動産市場の下落に歯止めがかかり、不動産の値段が底打ちし、 これは歴史を学べば簡単に導きだせる答えです。 日本でもそうでしたでしょ。 不動産指標一つを基にしてはダメですよ。全ての指標を基に導き出して下さい。 流石!日銀総裁です。 PR |
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