京都の休日（４）

　さて、それでは選び方などの初歩的な実践ですが、
染付や色絵などの、いわゆる磁器ならば、
江戸末期から明治初期の伊万里が良いかと思います。

　この時代になりますと大量生産が始まり、現在でも品数が
比較的豊富なので、お値段もそれほど高くありません。

　「古伊万里」と「伊万里」の違いは時代的に言って、
十九世紀初頭、文化文政年間より前に有田で生産された磁器を
「古伊万里」、
それ以降のものを「伊万里」と呼ぶのが一般的です。

　ただ･･･
最近では明治以前のものなら全て「古伊万里」と呼ぶ場合も
多くなっている･･･っていうのが現状かなぁ～･･･はぁぁ～

　伊万里では小皿＆豆皿、蕎麦猪口、なます皿、この三種類の器が
値段も安くお手軽だと思います。
蕎麦猪口の人気は依然として高く、人気があるだけに値段も高めです。
また、小皿や豆皿も面白いのですが、小さいだけに、用途が限られて
しまいます。そう考えると、骨董の入門としてはなます皿が最適なのかなぁ
なんて思います。一客七千円から一万円前後であれば、普段遣いには
充分なものが手に入ります。

　最終的には好みになりますが、まずはとりあえず一客でも良いですから
買ってみることです。同じような皿が何十枚と並ぶ骨董屋さんの店先では、
ほかの品物に目が移りがちで、品物が持つ魅力があまり浮き出てきません。
しかし、自宅のテーブルに置いたとたん、その品物は突然いきいきと
輝き始めるでしょう。それが骨董の魅力でもあるんですよ！

　そのあとは、例えば図柄などにこだわって集めるのも良いでしょう。
伊万里には動物をモチーフにした物があります。
兎・龍・馬・猿・犬・金魚・などなど･･･
そんな動物の絵柄を中心に集めるのも方法のひとつです。

「古いものほど値段が高い」と思われがちなのが骨董の世界。
確かに、そういった一面もありますが、品物の値段を決めるのは、
最終的にはどれだけ需要が高いか、つまり人気があるか･･･
と言うことなのです。需要と供給のバランスってヤツです。ハハハッ･･･

　同年代で同じ大きさのものなら、珍しい図柄のもの、
同じ図柄なら、いわゆる「手が良い」とよばれる出来具合が良いもの、
そういったものが高くなります。
「手の良いもの(上手)」と「手が悪いもの(下手)」では、並べたときに
歴然と差が解ります。その差というのは、少し気を付けて焼物を眺めていれば
すぐに気がつくようになります。それが解るようになると、
伊万里の世界が、また一段と面白くなるのではないでしょうか。

　さぁ･･ここで染付や色絵などは、ある程度集めたとします。

では、その次にはどんな物を？

　「焼物やきもの」の種類でいうならば、「土もの」が良いかと思います。
具体的にいうならば、須恵器のようなものから、備前や常滑など、
いわゆる「六古窯」と称されるものです。
花活けや小壷、祭器など、かつては用途があった土ものの中に、
焼物そのものが持つ力強さ、美しさだけで充分堪え得るものが、
つまり鑑賞陶器としても成り立つものが、少なくありません。
もちろん、実際に花生けとしてとして遣うことも可能ですし、
それは遣い手の工夫次第でしょう。こうした観て楽しむ土ものが
一点でも生活のなかに加わると、食器の中に骨董が入るのとは
また違った楽しみ、本当の意味での豊かさが得られますよ！
　ただ、確かに普段遣いとして買う骨董の磁器よりは高価でしょう。
この分野は上を見ればきりがない、つまり美術品に通じるジャンルで
あり、値段の高価なものがあるのは当然です。
ただ、土ものは磁器と違い、キズや汚れなどをあまり気にしない、
かえってそれを景色として尊ぶ部分もあります。
ですから、買い手が納得さえすれば、完品でなくとも手頃な価格の
ものは存在する･･･ということです。
とはいえ、値段にはそれなりの理由がある･･･ということも忘れては
いけません。
　よくお客様のなかで「同じ備前の花活けが向こうの店にもあったけど、
向こうの方が安かった」という方がいらっしゃいますが、
そもそも骨董の世界には同じものはない･･･と考えた方がよいと思います。
とりわけ土ものになると、ほとんど皆無です。
同時代の同じ大きさ形の備前花活けが百個あっても、上がり具合、キズ、
汚れなどの違いで、百通りの値段が生まれてきます。
ただ食器と異なり、キズや汚れは好みの要素もありますから、
それだけ幅が広いということもいえます。

　では、骨董屋さんに掘り出し物はあるでしょうか？

　残念ながらほとんどありません。
少なくとも、骨董屋はその道のプロですから、プロの瞳から洩れたような
掘り出し物が、店に並ぶことは稀有といってよいでしょう。
逆にそんな気持ちで店を訪ねると、骨董屋とは良い関係ができないと
思います。変な商売っ気があったり、やたらと知識ばかりひけらかすような
お客様には、店のほうも腰が引けて、本当に良いものをその方に
お見せしようとは思わなくなることの方が多いのではないでしょうか。
これと決めた店に何度も足を運び、解らないことは素直に尋ね、
人間関係を築き、そしてとにかく買ってみる。昔からいわれていることで
しょうが、良いものを手に入れるには、結局はこうしたことが一番の
近道だと思いますよ。これはなんにでも通ずることだと思います。

　何回も観て、瞳を養っていくうちに、心も豊かになって行きます。
古き良きものを知る･･･ってステキなことですよ。

　財布を豊かにするのも大切ですが、心も豊かにすることを忘れずにね！

それではまた･･･

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