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2008 11,23 12:41 |
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原油が再度マーケットを沸かせる? ■原油価格のカギとなる地政学リスク去る 7月11日、原油価格は最高値の1バレル=147.27ドルを記録した。しかし、それ以来、下落の一途を辿っており、7月時点と比べると実に半分以下の価格となってしまっている。世界的な景気悪化から原油需要が一段と減少するとの見方を背景に、マーケットでは明らかに原油への注目度が下がっているのだ。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
原油を含めた商品(コモディティー)の価格を考えるには“需給バランス”、“投機的売買”そして“地政学リスク”の3つのポイントを注目する必要がある。今年の夏に原油価格が高騰した時には、それが果たして需給バランスによるものか、もしくは投機的売買によるものかについて、主に米系“越境する投資主体”たちと産油国とが対立した。 前者は「原油の高騰は需給バランスによるもの。BRICsなど新興国からの需要が急増しているのにもかかわらず、産油国が増産しないことこそ問題の発端だ」と口を揃えて説明。対する産油国側は、「原油高騰は投機的売買による」として“越境する投資主体”たちを激しく批判していたのである。ところが、原油価格が落ち着きを見せてからというもの、これらの議論はぱったりと姿を消してしまった。それどころか、産油国が必死に「減産」を喧伝しても、マーケットは無反応なままなのである。 それでは、今、最も原油価格を動かす要因として注目すべきなのは何か?私は地政学リスクと考えている。現状を見る限り、米国とロシアによる覇権争いの舞台となっている南米及び東欧、ミャンマーとバングラデッシュがエネルギー利権を争っているベンガル湾など、今後、マーケットを大いに揺さぶりかねない複数の地政学リスクがあることに気づく。中でも原油マーケットと密接な繋がりを持っているのが、原油の宝庫・中東地域の地政学リスクであることは言うまでもない。そして、そこにテコ入れを行っているのがブッシュ米政権なのである。 これまでのコラムでも書いてきたとおり、米国が「中東和平」を加速させてきたのは、中東地域における原子力ビジネスを展開するためであった。そうした原子力ビジネス展開のためには、まず中東和平を実現させなければならない。2007年11月に米国が急遽メリーランド州アナポリスにおいて中東和平国際会議を開催したことも、その文脈で読み解くべきなのだ。そこでは、ブッシュ大統領の任期が切れる2008年末までに合意を目指すこととされ、マーケットでは「いよいよ中東和平の成立か」と弛緩ムードが流れ、それまで高騰してきた原油価格が一気に下落したことを忘れてはならない。
マーケットとそれを取り巻く国内外の情勢をめぐる「潮目」をウォッチする中、この関連で気になる報道が1つあった。「中東カルテット会合が総括を実施、次回会合はモスクワにて開催」というものだ(11月9日付、スイス・ゾンタークスツァイトゥング参照)。これによれば9日、米国、EU、国連およびロシアが開催した中東カルテット会合において、紛争当事者であるイスラエルとパレスチナは、中東和平への合意にこそ至らなかったものの、今後も対話を継続していくことを約束したという。更には、アナポリス会議に続く第2回中東和平国際会議が、来年の第1四半期にモスクワで開催される予定であるとされている。 前回(第1回)の時にマーケットが示した反応を振り返る限り、この第2回中東和平国際会議には2つの重要なポイントがある。第1に重要なのは、開催時期が来年(2009年)の「第1四半期」と具体的に特定されたことである。これまでの流れを見る限り、「次回はモスクワで」と場所は早々に決まったものの、その日程はなかなか定まらなかったという経緯がある。まだ「予定」にすぎないものの、ようやく次の具体的な「潮目」が見え始めたことを見逃してはならないだろう。 第2に重要なのが、開催場所が“ロシア”だということである。前回のアナポリス会議で当初期待されていたのは、パレスチナ・イスラエルを巡る中東問題と同時に、イラン問題の解決であった。しかし、この米国主催の会議を当事者であるイランは欠席した。その結果、重要な地政学リスクの1つであるイラン問題の解決は先送りとなったのだ。他方、次回の中東和平国際会議をホストするのはイランとかねてより強い繋がりを持つロシアである。イランはロシアから兵器を購入したり、イラン国内のブシェール原子炉プラント計画で協力を得たりしてきた経緯がある。これらを前提とする限り、次回のモスクワ中東和平国際会議にイラン代表団がその姿を現す可能性は高いと言えるだろう。 イランといって忘れてはならないのが、世界で最も重要な石油輸送路であるホルムズ海峡に最近、海軍基地を開設したという事実だ。イランは自国が脅威にさらされるような時には、ホルムズ海峡を閉鎖するという旨の「警告」も行っている。ホルムズ海峡には今もなお緊張感が漂っているのだ。 しかし、そのイランが第2回中東和平国際会議に参加する可能性が高いとの見方が広がれば、「地政学リスクは激減し、原油はもう売りだ」という発想も広がっていくことだろう。その結果、第1回の時と同じ様に原油マーケットは急落する可能性が出てくる。その一方で、忘れてはならないのが、「下げの前の上げ、上げの前の下げ」というマーケットの鉄則である。つまり、第1回会議の時と同じ様に、来るべき急落局面を前に、一度「上げ」の側面もあり得るという訳なのだ。その意味で、7月から下がり続けている原油マーケットは、今後、大きく動き出す可能性を秘めている。
日本では最近になって全国各地で石油小売価格が引き下げられたとの報道が相次いでいる。先物市場での原油価格下落が現物市場にも響いているのだ。しかし、まだ気を緩めるのは早い。日本の大手メディアが喧伝する報道からはなかなか見えてこないが、世界には原油マーケットを動かしうる地政学リスクの火種が眠っている地域が今なお多数あるのである。 その1つがソマリア沖である。ソマリア沖では“海賊撃退”という名目のもと、現在米国やロシアという超大国が海軍を派遣している他、12月にはEUも新たに7隻の艦船を展開する予定である。このように各国の海軍勢が集合しているソマリア沖は、今、地政学リスクが最も高まっている地域と言えよう。一方、そのソマリア沖は、ホルムズ海峡と並んで中東産油国から欧州やアジアへの原油輸送ルートでもある。もしそこで何らかの“軍事衝突”があるとすれば、それもまた原油マーケットの“荒れ”を引き起こすことになるに違いない。 その他にも、南米やベンガル湾など、石油マーケットに変化をもたらすであろう地政学リスクは世界各地に散在している。しかし、それらのことを日本の大手メディアは大々的に取り上げてはいない。もし、このまま私たち日本人の目が別の場所に向いている間に物事が進展するようなことになれば、再びマーケットで織り成される世界の「潮目」から取り残されるという結末を迎えることに違いないからだ。 PR |
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