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闇にうごめく投資家たち 7月4日付の本欄は『消え逝くグッドウィルの消えない傷』というリポートを伝えていた。 消え逝くグッドウィルの消えない傷 2006(平成18)年にグッドウィル・グループが人材派遣大手「クリスタル」を買収する際に舞台となったのが「コリンシアンパートナーズ」という投資ファンド。この投資ファンドに群がった怪しげな投資家たち、そして400億円もの資金がこれらの投資家たちを通じて闇社会に流れた。 「コリンシアンパートナーズ」の代表を務めていたのが公認会計士、中澤秀夫である。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
そのうちの1人は7月4日のリポートでも登場する有名格闘家である。この格闘家は「コリンシアンパートナーズ」に出資した山口組最有力団体との接点となった人物である。かつて戦後最大の疑獄事件と呼ばれた「イトマン事件」で暗躍したフィクサー「許永中」のボディーガードを務めてもいた。 そしてもう1人は今も六本木ヒルズに住むコンサルタント業を営む人物である。 日経新聞が中澤への査察を報じた数週間前、中澤は税務署から「コリンシアンパートナーズ」の運営などで得た100億円以上の利益に対する税の支払いを求められていた。 手元キャッシュが不足していた中澤は資金調達を含め一時身を隠すように香港に逃れる。中澤には1人の同行者がいた。鬼頭和孝という30代半ばの投資家である。 北海道出身の鬼頭は慶応大学卒業後、大手監査法人に就職。鬼頭が中澤と出会うのは鬼頭が大手監査法人を辞め、中澤が籍を置いている監査法人に転職した時だ。 中澤とともに「コリンシアンパートナーズ」の代表を務めた鬼頭には別の顔がある。 自らが運営する「TD投資事業組合」の運営者としての顔である。この投資事業組合が資金およそ20億円を投入し、傘下に収めたのが9月1日に民事再生法の適用を申請し、倒産したジャスダック上場のシステム開発会社「トランスデジタル」である。 鬼頭をはじめ怪しげな投資家たちが跋扈し、次々と企業を食い物にしては、次の企業に狙いを定め、同じことを繰り返す。さながら焼き畑農業のような構図だ。 「トランスデジタル」に変調が起きたのは今年7月。 新株予約権により約50億円の資金調達を発表。この発表を聞いた株式市場関係者は一様に首を捻った。なぜなら、同社の手元資金は潤沢であったからだ。 結局、新株予約権による資金調達は28億円あまりしか調達できず、加えて8月には1億円余りの小切手が2度も不渡りとなる。 そして、新株予約権の権利行使を行い大株主となった面々の素性が明らかとなる。 一般に知られてはいないものの、いわゆる知る人ぞ知る大物たちが登場するのである。 たとえば、野呂周介。三重県出身の野呂は外車ディーラーとして成功し、その後、投資の世界にも身を投じ、この分野でも成功を収めている。闇社会にも通じている野呂は、一時期、国税当局が内偵していた日雇い人材派遣大手「フルキャスト」のインサイダー疑惑でもその名前が取り沙汰されていた。 この野呂は強面の顔とは別にワインコレクターという一面を持っている。この野呂とワインコレクター同士ということで結びついたのが先に触れた中澤なのである。 ワインセラーを所有し、一部では最高級ワイン「ロマネコンティ」を日本一所有しているコレクターとも言われていたのが中澤なのである。その中澤がワインセラーごと自身のコレクションを売り渡した先が野呂なのである。およそ5000万円だったとも言われている。 怪しげな投資家の世界の糸は複雑怪奇に絡み合う。 鬼頭が「トランスデジタル」に投資した20億円はなぜか担保を取ることもなく、東京都港区内にある「サリアジャパン」という不動産会社に流れている。さらに驚くべきことに、その20億円が「サリアジャパン」を通り抜け闇社会に流れ込んでいるようなのだ。それゆえ、大阪府警が上京し、関係者の事情聴取を始めているのである。 野呂以外にも闇社会の人脈をバックに短期金融の世界では知らぬ者がない永本壹柱、かつて「リキッドオーディオ・ジャパン」で一世を風靡した黒木正博なども登場する。 はからずも闇に蠢く投資家の存在をくっきりと浮かび上がらせた「トランスデジタル」の倒産劇。思わぬ広がりを見せるかもしれない。 ─…─…─…──…─…─…──…─…─…──…─…─…─ 暴かれる金融無法地帯「トランスデジタル」の闇 老舗の「ハコ」企業が倒産。故高橋治則、黒木正博らグレー人種の勢ぞろいに、捜査当局は「しめた」とばかり…。 日本の証券市場が、事業実体のない「ハコ」と呼ばれる上場企業を道具に、無法な資金操作を繰り返すアウトローたちのクモの巣=ウェブ(Web)と化していることを、本誌は06年10月号(「『資本のハイエナ』相関図」)で報じた。 その後、このクモの巣に潜む鬼グモや毒グモたちは、検察・警察と証券取引等監視委員会が一体となった「掃討作戦」で排除されていった。今生きながらえているところも、手口はすっかり暴かれ、捜査当局とマスコミが常時監視しているから、もう割に合う商売ではない。
9月1日、そんな「ハコ」のひとつ――ジャスダック上場のシステム開発会社「トランスデジタル」が民事再生法の適用を申請して倒産した。直近の4年間で120億円以上も市場から直接調達しながら赤字を垂れ流し続けた会社だ。論評するに値しない企業なのだが、間際のドタバタは捜査当局の目を引いた。 倒産直前の8月7日、トランスデジタルは防衛省近くのホテルグランドヒル市ヶ谷で、同社が制作するスカイパーフェクTV!241chの新番組「ガンバレ自衛隊! 安全保障アワー」の制作発表会および披露パーティーを開催した。来賓は林芳正・防衛相(当時)、小池百合子・元防衛相、高市早苗・経済産業副大臣(同)ら防衛族が中心で、会場には400人が集まった。いったい、この政界人脈は誰が築いたのか。増資に政治家の思惑は働いたのか。 謎は尽きない。同社は7月11日、新株予約権(MSワラント)による50億円の資金調達を発表した。結局、調達できたのは28億3千万円だったが、それにしても手元資金が潤沢にありながら、8月末に1億円前後の小切手を2度も不渡りにしてしまったのはなぜなのか。 さらにMSワラントの譲渡を受けて権利行使、大株主となった連中のなかには「表裏」の世界に通じた、知る人ぞ知る大物が少なくなかった。公になった出資者名簿は壮観である。 歌舞伎町ビル火災事件のオーナーとして責任を追及されている瀬川重雄、短期の証券担保金融では右に出る者がない大物の永本壹桂、外車ディーラーから身を起こして金融の世界で成功した野呂周介(その後、株式に転換していないと名簿を訂正)……正体を見せることを嫌う彼らが、なぜ“カミングアウト”したのか。 こうした疑問を解消するには、トランスデジタルの歴史をさかのぼらなくてはならない。そこに「ハイエナ相関図」のルーツと言っていい人間模様が浮かびあがる。 トランスデジタルはコンピューター社会が到来する前の1969年、静岡県三島市で創業したベンチャー企業。システム開発や電算処理業務を請け負って躍進を遂げ、89年に株式公開した。 この先端技術企業がパソコン普及の波に乗り遅れて失速。その後、経営に深く関与したのがイ・アイ・イ・インターナショナルの総帥、高橋治則(82~83ページ参照)だった。2信組不正融資事件で東京地検特捜部に逮捕され、汚名をそそぐべく裁判闘争を続けていた高橋は、その豊富な人脈と茫洋とした人柄が「ハコ」を利用するマネーゲームの仕掛け人として最適と言えた。 05年7月、59歳の若さで高橋は急逝する。その時点で上場企業3社、国内外のゴルフ場、ホテル運営会社などを傘下に収め「復活」の足がかりをつかんでいた。だが、原資は怪しげな資本調達で得たもので、初期に資金を提供したのは間違いなく「日本エムアイシー」という社名だったころのトランスデジタルだ。 その仲介役はIBM元部長で「霞が関の人脈紹介所」と言われた窪田邦夫。静岡出身の窪田が、高校同窓の日本エムアイシー社長を高橋に紹介したのがきっかけだ。 高橋が赤坂の草月会館を拠点にしていたことから、マネーゲームを生業(なりわい)とする「高橋軍団」は「草月グループ」と呼ばれた。その一派が仕掛けたのが日本橋倉庫である。彼らは04年3月、株式時価総額が10億円でつぶれかかっていた日本橋倉庫を買収、社名を「ジェイ・ブリッジ」と変更、「企業再生ファンドに衣替えする」とPRして株価を沸騰させた。 時価総額は一時1千億円を突破、ジェイ・ブリッジは「ファンド資本主義」の代表銘柄としてもてはやされ、「ファイ」(日本エムアイシーが社名変更)はその下にぶら下がる形となって、野村証券出身の林弘明を社長に迎えた。 やがてファイはトランスデジタルに社名変更、ジェイ・ブリッジと同じようにM&A(企業の合併・買収)を軸に、柱となる事業を育てる戦略をとる。だが06年1月のライブドアショック(強制捜査)で、この種のビジネスモデルは総崩れとなる。ジェイ・ブリッジとトランスデジタルの株価も急落、市場の片隅に沈んだ。
そのトランスデジタルに資金を投入、傘下に収めたのが「TD投資事業組合」だった。差配するのは投資ファンド「コリンシアン・パートナーズ」を運営する亀頭和孝。コリンシアンの名には聞き覚えがあろう。折口雅博・グッドウィルグループ前会長が人材派遣大手クリスタルを買収した際、間に入って闇社会に連なる投資家グループに400億円近い利益をもたらしたことで名を知られた。 07年3月、MSワラントの引き受けでトランスデジタルを運営するようになった亀頭は、東証マザーズ上場第1号「リキッドオーディオ・ジャパン」(現ニューディール)の実質オーナーだった黒木正博や峰島一らの仲間とともに、トランスデジタルを「ハコ」にしたマネーゲームに着手したのである。 それが応援番組を起点とする自衛隊への食い込みだった。そのために07年11月、海上自衛隊出身の後藤幸英を社長に就任させ、今年6月の株主総会では陸自と空自の出身者まで招請、取締役に据えているのだから、実態はともかく意欲はあったのだ。 しかしバックが黒木では実現は難しい。「ベンチャービジネスの成功者」という往年の面影はなく、ゼクー、オックスホールディングス、ビービーネット、千年の杜といった「ハコ」の資金調達係をつとめていた。 新興市場の「ハコ」を舞台にしたマネーゲームは、短期で資金が移動、偽計、株価操縦、インサイダー取引も辞さない危険な代物だけに、参加者は塀のうえを突っ走る度胸のある人間に限られ、勢い企業舎弟や暴力団の共生者といった類が多くなる。トランスデジタルも例外ではない。 黒木や亀頭の手口は会社経営に直接関与することなく背後に隠れているスタイルなので、これまで摘発されることはなかったが、捜査当局が「グレー人種」と認定していることは間違いない。瀬川、永本、野呂もまた、捜査当局が暴力団との関係を疑い、その役割を本格的に調べてみたいという面々なのである。 それだけに検察、警察、証券監視委はトランスデジタル倒産とその錚々たる顔ぶれの登場に沸き立ち、倒産の2週間後には、早くも大阪府警と警視庁が同社を“挨拶”に訪れるなど「先陣合戦」が始まった。小さな倒産とはいえ、「ハコ」として長い歴史をもつトランスデジタルは、ハイエナの闇を暴く「パンドラの箱」になりそうだ。(敬称略) PR |
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