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2008 10,25 12:00 |
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露呈したユーロ崩壊に向けた壮大な仕掛け 元外交官・原田武夫の『国際政治経済塾』 ■まだ「底」ではないという認識が重要 10月10・11日にワシントンで行われたG7蔵相・中央銀行総裁会議、そしてIMF(国際通貨基金)総会。そこで各国が協調して一連の措置をとることが決定され、とりわけ米国をはじめとする米欧各国が公的資金をマーケットに注入することを表明したため、週明け14日の東京マーケットでは、日経平均が、戦後最大の上げ幅を記録するにいたった。 「ようやく『底』が見えた」 このコラムの読者の方々はそう思われていることであろう。マーケットは生き物である。今後、どちらに転んでいくか、100パーセント確実なことを言える者はいない。しかし、そうではあっても、マネーを織りなす「世界の潮目」をウォッチすることを生業とする私からすると、今回の展開を見るに、この10月半ばに行われた一連の会合を通じて、実は壮大な仕込みがなされたと言わざるをえないのだ。 どのような「仕込み」だったのかといえば、日本の一部大手メディアが絶賛している公的資金収入などの措置が、実は「選択肢が他に無いためにとられた措置」であったということなのである。つまり、ストーリーの先は、むしろ暗転する方向であるということなのだ。 将来を予測分析するにも、まずすべきことは、9月半ばの米系“越境する投資主体”の雄リーマン・ブラザーズの経営破たん以降、この10月の半ばに至るまで一体何が起きたのかを仔細に洗いなおしておくことであろう。表向き、美しく収まったかのように見えるそれらのストーリーも、よくよく見直してみると、これから起きる、とてつもなく大きな出来事の序章かもしれないのだ。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
この観点で気になる報道は世界中でいくつもあったが、特に私が注目しているのが「3,000億ユーロの救済策をめぐる混乱劇」というドイツからの報道だ(10月12日付南ドイツ新聞参照)。10月4日、サルコジ・フランス大統領の招請により、フランス、ドイツ、英国、イタリアの首脳がパリに参集した。そのこと自体は日本の大手メディアを通じてご存じの方も多いだろう。問題は、この首脳会談が行われる直前に、実は相当なさや当てがドイツ・オランダとフランスの間であったということなのである。 日本ではまったくといっていいほどキャリーされていないが、この報道によれば、どういうわけかサルコジ大統領がこの首脳会談において提案するEU域内全体をカバーする救済政策提案が某国によりリークされたのだという。 外交交渉というのは非常に繊細なものである。リーク報道が出ると、提案国がそれによって国際世論を固めて他の交渉国の言うことをきかせようとしているのではと、他の国々が態度を硬化させることはよくあることだ。したがって、提案国の側がリークすることはよほどの自信がない限り考えられない。 今回のリーク報道の直後、フランスは即座にそうして提案が行われる可能性自体を否定。それと相前後して、ドイツの財務省報道官は露骨に不快感を示した。そればかりではない。ドイツはさらにレベルをあげて火消しにつとめ、ついにはメルケル首相までもが、「EU域内全体をカバーする救済策はありえない。各国はそれぞれ自国の金融機関を救済すべき」との旨の発言を繰り返すにいたったのである。 フランスはこうした提案の「存在」そのものを否定したが、逆にオランダがその「存在」を確認した。その結果、ドイツ・オランダの“同盟”がサルコジ大統領の提案を見事に打ち崩したということになるだろう。 繰り返しになるが、日本では米英マーケット、あるいは米ドルの動向ばかりに気をとられるのが一般的で、こうした激動する欧州情勢に特に注目し、とりわけ大陸欧州のメディアを手掛かりにマーケットとそれをとりまく国内外情勢を分析するとの観点を持つ大手メディアは皆無であるといってよい。しかし、かつて戦前日本の政府高官が語ったとおり、正に「欧州情勢は複雑怪奇」なのである。金融資本主義は本来、米国ではなく欧州、しかも大陸欧州各国で始まったシステムであるということをあらためて思い起こしつつ、今起きていることが、近未来にとって持っている意味合いを考えなければならないのだ。
このコラムでは盛夏に入る直前、ユーロについて「崩壊する仕掛け」がある可能性に言及した。事実、8月に入るとグルジア紛争と相前後してユーロが対ドル・円レートで大幅に下落し始めたことは記憶に新しい。 その後、10月の頭に起きたフランスとドイツのさや当てを、そうしたユーロ下落の延長線上に置いて考え直してみると、やはり以前のコラムで「ユーロ崩壊の仕掛け人」の可能性があると指摘したフランス(サルコジ大統領)がまたしても一連の出来事に際して主役であることに気づく。その後の展開からしても、フランスがユーロの崩壊を望んでいるかのような動きを続けていることが目について仕方がないのである。 ユーロを支えている基盤は2つある。1つは、旧西ドイツ・マルクの幻影。そしてもう1つはこれまで続いてきたドイツの好景気、とりわけ不動産バブル経済である。 前者は1990年にドイツが統一し、その際にマルク建てのドイツ国債を旧東ドイツ地域の復興のためと銘打って世界中で売りさばいたことによる。これで世界中がいわばマルクの“共犯”となり、そのためにマルクが高騰し、その延長線上にユーロが成立したのである。だからこそ、ユーロに責任を持つ欧州中央銀行(ECB)はドイツのフランクフルトにあるのだ。したがって、ユーロは一見したところEU全体のプログラムのように見えて、もっとも得をしているのはドイツではないかという疑念が常に付きまとっている。これをフランスが面白く思うはずもないであろう。 だからこそ、ドイツ経済の「不況」入りが間もなく公的に宣言されるかもしれないというタイミングで、あえてフランスが仕掛けてきた可能性があるのだ。今のドイツにEU域内全域の金融機関を救うほどの余力はない。そもそも米国由来のリスク資産に基づく損失額は1,000兆円規模であることが徐々に明らかになる中、それをまかなえるだけのカネなどドイツが出せるわけもないのである。 しかし、EU全体でこうした域内救済プログラムを決めたとなれば、当然、大国として自認し、実際そのように行動してきたドイツとしては応分の負担を免れないだろう。まさに無間地獄である。したがって、ドイツとしては体を張ってでもこうした救済プログラムは阻止しなければならないのである。 だが、ここで聡いのがフランスである。フランスがEU議長国となってあれやこれやと名目上は「救済」のために汗をかいているポーズをとっているのに、ドイツが応じないということになると、ますますドイツ・フランスは離反していく。 歴史的に見ると、ドイツ・フランスの和解こそが、ユーロの前提であるEUの、そのまた大前提なのだ。ドイツ・フランスの離反という、歴史に逆行する事態を目の当たりにするにつれ、ユーロは徐々に人々から見放されていくことであろう。当然、フランスとしては第2のユーロのためのシステムを提案するという流れになるはずだ。 まさに「欧州情勢は複雑怪奇」なのである。これから始まる本当のストーリーをしっかりと中長期的にも見極め、「潮目」を見据えていかなければ、私たち日本の個人投資家はこの歴史的なシステム大転換の中でチャンスをものにすることはできないのである。 PR |
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