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MONEYzine 2008年08月30日 15:00 浜田 和幸[著] 水関連企業の株価は急騰を続けている。2001年以来、世界の大手水関連企業、通称「ウォーター・バロンズ」の株価は平均して150%を超える値上がりを記録している。そしてそのような中、水資源の枯渇に着目したウォーター・ヘッジファンドが続々と誕生している。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
水は大きな富を生む希少資源になりつつある。 20世紀には世界の人口は3倍に増えたが、水の需要は6倍に脹らんだ。水と石油はともに経済活動には欠かせない。 現在、原油価格の高騰が大きな問題となっているが、今後は水の値段も確実に上がるだろう。当然、水をめぐる争奪戦も激化するに違いない。国際商品投資に特化した約350社のヘッジファンドにとっても、まさに「見逃せないチャンス到来」というわけだ。 とはいえ世界で最も早くウォーター・ファンドを立ち上げたのは、スイスのピクテ銀行であった。すでに30年以上も前の話である。 石油や天然ガスなど化石燃料に代わる新しい資源として水に着目したのはヨーロッパやアメリカの金融機関が遥かに早い。過去30年以上に渡り、欧米の投資ファンドは顧客からの預かり資金を効果的に運用するターゲットとして、「水」および「水に関する技術」を積極的に組み込んできたのである。
世界で急成長を遂げているウォーター・ファンドだが、2007年12月の時点で、本数にして27本、総額では2000億ドルを超える規模に膨らんでいる。ウォーター・ファンドの本数も相次いで増えており、当然のことながら投資残高も拡大を続けている。対前年比で53%増という急ピッチである。しかも毎年のように記録を更新している。2007年に世界を金融パニックに陥らせたアメリカ発のサブプライムローン危機や原油高の影響で、より高いリターンを追求する世界のマネーは天然資源や穀物などコモディティー(商品相場)にシフトするようになった。 そのような流れを受け、水という生命の維持に欠かせない資源にあらためて注目が集まっている。世界的に水資源の枯渇が問題となる中で、いかに安定的な供給を確保するのか。汚染された水の浄化技術やリサイクル、リユースを可能にする技術を有する企業や研究機関に対して、世界の投資マネーが一斉に群がるようになってきた。世界のウォーター・バロンズや水関連企業は、行き場を失った世界の投資マネーの受け皿として過去類を見ないほどの活況ぶりを呈している。 当然の結果であろうが、水関連企業の株価は急騰を続けている。2001年以来、世界の大手水関連企業、通称「ウォーター・バロンズ」の株価は平均して150%を超える値上がりを記録している。これは同じ期間の一般銘柄と比べると、3倍以上の株価高騰ということになる。代表的なウォーター・バロンズといえばイギリスのテームズ・ウォーター、フランスのスエズやベオリアといったところで、この3社が「ウォーター・バロンズ御三家」と呼ばれている。
こういった水関連の企業を過去20年間の株価の推移で見てみると、おおよそ30倍にまで株価が膨張していることが明らかになる。 「何故、水でそれほど儲かるのか」と不思議に思われるかも知れない。まさか“水商売”というわけではあるまいが、実際には株価が急上昇を遂げている企業の場合、水を我々の日常生活にとどまらず農業、工業、健康、医療産業等に欠かせない技術の対象として研究開発を重ねており、その成果が世界の投資家から注目と期待を集めているわけである。 さらに近年は貴重な水資源を確保する必要性が世界的に高まっており、水源地の利権をめぐる争奪戦の様相すら見られるようになってきた。このような動きに敏感な世界の投資家や投資ファンドが水危機をビジネスチャンスと受け止め、この市場に殺到するのも頷けよう。
テキサスの石油投資家ブーン・ピケンズ氏もその先駆けだ。1999年にメサ・ウォーター社を立ち上げ、アメリカ各地の水源の開発、利用権を買占め、水不足に直面する自治体に売ろうとしている。アメリカ西部では水は石油と同じで、「見つけた者勝ち」の原則が当たり前。環境に優しいエネルギー源としてエタノールへの関心が高まっているが、トウモロコシからバイオ燃料のエタノールを生産するにも大量の水が必要とされる。 実は、トウモロコシや大豆を生産する時には小麦の時より2倍もの水が欠かせない。そのため、投機筋の間では水に関する注目度が前例のないピッチで高まっている。思い起こせば、アメリカ史上最大のスキャンダル倒産を引き起こしたエンロンも水トレードビジネスを立ち上げようと動いていた。今、再び、水が投機の世界の主役としてスポットライトを浴び始めたのである。そしてウォーター・ヘッジファンドが続々と生まれるようになった。 一方、多くの日本人にとって水は天から降って当たり前のもので、自然にいくらでも手に入ると受け止められてきたようだ。それどころか台風や長雨が続けば災害の原因にもなりかねないため、水に対しては貴重な資源としての認識が低いようである。けれども、世界全体を見渡せば砂漠化や水不足、そして水の汚染の深刻化がみられるようになり、安全で安心して飲める水が手に入らない地域の方が圧倒的に多いのである。 そのため、世界銀行や国際通貨基金(IMF)など国際金融機関をはじめ様々な援助機関が発展途上国に対して、水を安定供給できるシステムを援助しようと取り組みを強化し始めた。なかでも水道施設を普及させるためのインフラ整備が大きな課題となっている。資金的にまた技術的に余裕のない貧しい国々にとっては、国際的な援助や支援なくしては国民の生命維持に欠かせない水の供給すら心もとない現状が横たわっている。
このような、水の限られた地域に対して、国際金融機関の多額の資金が投入されるという現状からすれば、その資金の受け皿として期待される企業に投資家が先回りをして大きなリターンを得ようとするのも当然のことかもしれない。世界の投資家やファンドにとって、危機的状況を逆手に取りビジネスチャンスに転換させようとするのはお手の物ということである。 しかし、日本ではそのような発想はこれまでなかった。水関連の企業で大儲けをしたというサクセス・ストーリーは聞いたことがない。冒頭で紹介したが、ようやくこの数年、日本の証券会社や投資信託が水関連や環境重視型のファンドを立ち上げるようになった。この状況を見るにつけても、我々があまり知らないところで日本の水に関する技術といったものが海外からは高く評価されていることが窺える。 なぜなら、欧米の水関連ファンドが組み込んでいる技術系企業は、その大半が日本の企業で占められているからである。 スイスのピクテ銀行を筆頭にさまざまなウォーター・ファンドが日本の水技術企業を組み込んだ商品を発売し、大きなリターンを生み出している。たとえば、ピクテの場合はダイセキ、TOTO、水島機械、オルガノの株式を組み込んでいる。ASNミリュー・アンド・ウォーターの場合は堀場を、KBCエコ・ウォーター・ファンドの場合は荏原とオルガノを、そしてクレモア・セキュリティーズは栗田工業をといった具合である。
この機会に我々は日本の水関連企業の実力や将来に向けての技術開発の現状をじっくりと見ていく必要があるだろう。海外の投資家は東レや日東電工の株を買い進めている。その将来性に注目しているからだ。 他にもこれから大化けするような水関連技術やアイデアを温めている日本の企業がまだまだたくさんある。いずれにせよ、世界的視野でウォーター・ファンドの急成長ぶりを見てみると、やはり基本的には需要と供給の原則が働いていることがよくわかる。水そのものが簡単に手に入らない地域が多くなり、必然的に水が希少資源となっているからである。 世界の人口は現在の66億人から21世紀末には100億人に増加することが確実視されている。エネルギー資源や食糧と同じく、水そのものがきわめて貴重な資源となることは論を待たない。言い換えれば、最近の原油高を上回る勢いで、水が石油に代わる大きな富をもたらす可能性があるといえよう。 中国やインドでは、人口の増加が止まらず、経済成長も著しい。そういった国々においては、国家予算に占める水関連の投資額が毎年倍々のペースで増え続けている。たとえば、中国では今後25年間で水の需要が120%は拡大するといわれているほどだ。インドでも今後20年間に都市部を中心にして100%近い増加が見込まれている。 要は世界全体でみれば、ほぼ10年ごとに水の需要が倍増することになるわけである。中でも中国、インドにロシア、ブラジルを加えた、いわゆるBRICsと呼ばれる新興経済地域での水関連予算の伸びは急激である。日本の国内だけに目を奪われていれば、水道事業の前途は厳しいとか、課題山積といった話が多いようだが、見方を少し世界に広げれば、日本の水道事業が大きな役割を果たす可能性が極めて高いことが明らかになるだろう。
先進諸国では、この水道事業の民営化によって一挙にインフラの整備が進み、集金サービスのあり方が変わることになったケースも多い。そのような経験から、水道事業運営のノウハウを蓄積した欧米の民間水道事業会社は、「発展途上国の経済発展を後押しする」という大義名分の下で、アジア、アフリカ、中南米諸国に相次いで進出するようになったのである。その際、世界銀行の融資をバックに、受入国の政府から有利な条件で事業を展開する契約を結ぶのが常であった。 このような民間の水道事業会社は、先に述べたように「ウォーター・バロンズ(水男爵)」と呼ばれ、世界各地で水道事業の民営化を請け負い、高収益を上げている。その背景には、途上国における人口膨張による飲料水の慢性的な供給不足という問題があったことは否めない。言い換えれば、「危機をチャンスと捉える嗅覚が強い」といえよう。 テームズ・ウォーター社のピーター・スピレッド取締役によれば「水は21世紀の石油である。水産業は今後とも大きく成長するポテンシャルを秘めている。場合によっては近い将来、水をめぐる世界戦争すら起こりかねない。それだけ水は貴重な資源である」。 同様の観点から、スエズ社のジェラルド・ペイエン海外市場担当取締役は言う。「ウォータービジネスは、世界の需要状況を見れば見るほど、今後の成長が楽しみな分野である。わが社は水を浄化し、各家庭に供給する。この種のサービスにはコストがかかるのは当然であろう。安心して飲める水のために、料金を支払うのは当たり前のこと」。
スイスに本拠を置く16億ドルの水ファンド、サステイナブル・アセット・マネジメントによれば「水企業への投資リターンは、今後5年間で平均14%が期待される。アジアに限定すれば、50%から100%もの高いリターンが得られるだろう」。 電力、ガスや電話などが中断しても、人は生きていける。しかし水を止められては、人は生きていけない。であるならば、途上国の政府も国民も、どんな対価を払ってでも自らの生命を維持するために、水道にはお金を惜しまないはずだ。そのような観点から、欧米のウォーター・バロンズ企業は、発展途上国の上下水道事業に狙いを定めているのである。 日本ではあまり話題になっていないが、水道事業の民営化、また特定民間企業による水の支配体制はこうして秘かに進んでいる。ある意味では、ウォーター・バロンズの暗躍は石油危機以前の石油メジャーのような影響力を感じさせるほどである。われわれも世界の水環境の変化に目を向け、水資源の有効活用に大きく貢献できる日本の水テクパワーを支援すべき時であろう。 PR |
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