京の庭園様式に秘められた趣(おもむき)（京都の休日５０）

　京都の夏は非常に蒸し暑く、冬は芯から冷える。

それは京都の地形が盆地に由来しているのですが、
それ故(ゆえ)、昔から京都は創意工夫をして春夏秋冬を過ごしてきました。
その営(いとな)みは「京の庭園様式」にも息衝いています。

　日本の庭園様式には、立体的に山水を表わした「築山」、
平面的な「平庭」、茶の湯の装置「露地」
･･･の、三つに大別されます。

観る、廻る、使う･･･といった、さまざまな愉(たの)しみ、
そして自然への深い思いから多くの意匠が生み出されました。

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『砂紋（さもん）』

　清浄を表わす「白」は、古来神社仏閣などの聖域で好まれた色。
白砂を敷いた上に何本もの筋をひいて、形・幅・線の深さと、
光による陰影で様々な海の表情を表わすことができます。
枯山水に不可欠な意匠の一つであり、盛り塩のように砂を一対の円錐形に盛り
場を清める準備ができたことを象徴する場合もあります。

「砂紋」にも様々な紋があり、「井桁紋」「網代紋」「青海波紋」
「渦巻紋」「曲線紋」等があり、砂紋は箒目（ほうきめ）とも呼ばれています。

『水琴窟（すいきんくつ）』

　蹲踞（つくばい）や手水鉢の鉢前（海）の地下に、小さな穴を開けた
甕（かめ）を埋めて細工されます。
　使いこぼされた手水が、滴（しずく）となって甕（かめ）の底に
溜まった水に落ちることで、甕（かめ）の中で起こる共鳴音を
琴の音に似通わせて楽（愉）しむもの。
「洞水門」とも呼ばれ、小堀遠州が得意としたともされる。

『借景（しゃっけい）』

　庭園外の山や樹木、竹林などの自然物等を庭園内の風景と一体で
あるかのように背景として取り込むことで、前景の庭園と背景となる
借景とを一体化させてダイナミックな景観を形成する手法です。
庭園外の自然物等についても庭園景観の重要な構成要素とするため、
昨今、頻出する京都の景観問題は「借景」をなくしては語れないからです。
品性や文化の理解なくして金儲けに奔る姿は滑稽としか言いようがなく、
末代まで恥(記録)は残ります。

『蓬莱山（ほうらいさん）』

　不老不死の仙人が棲むという理想郷「蓬莱山」。
この想像上の霊山を、石を組み、山を起こし、島を作るなどして表わしたもの。
庭自体を祝福するために古くから作られてきた庭園意匠です。
「神仙島」ともいい、かつては四つの島で表現されていたが、
一つにまとめられ、ときには石一つで表現されることも･･･

『手水鉢（ちょうずばち）』

　神前、仏前で口をすすぎ、身を清めるための水を確保するための鉢です。
茶事に用いる庭、露地に設けられた場合は、つくばって水を使うところから
蹲踞（つくばい）と呼ばれました。
灯篭と並んで、由緒伝来を尊ぶ庭園景物の代表格であり、
観賞の楽（愉）しみも様々です。

　龍安寺（りょうあんじ）の茶室「蔵六庵」の露地にある蹲踞には
「吾唯足知」（われ、ただ足るを知る）の四字が刻まれているので有名ですね。
あの「水戸黄門」で有名な徳川光圀公の寄進なのですが、
残念ながら、一般拝観者が見ることができるのは複製なんですよぉ～･･･

「吾唯足知」は茶道の基本である禅語です。
この言葉は全てに通ずるものですが、株式相場にも通ずる言葉です。
今の茶道は動作に重きをおき、この禅語の意味等の教えを蔑ろにしている
帰来があります。それは非常に嘆かわしいことです。

『築山（つきやま）』

　庭園の中に土砂を盛り、石を築いて作られた人工の山や丘です。
大小様々な石や樹木で彩られ仮山とも称されます。
「山水」とも称された日本の庭作りが、池水を取り込み、山を築いて
自然の風景を象徴的に再構成することからこの意匠は生まれました。
「築山」自体が庭を指し示す語として用いられることもあります。

『枯山水（かれさんすい）』

　枯山水は水のない庭のことで、池や遣水などの水を用いずに
石や砂などにより山水の風景を表現する庭園様式です。
世界的に見ても日本独自の特異な庭です。
景石を組み、苔や樹木を配して滝や島を現し、白砂、ときに黒砂を敷いて
水を表現する。
　禅宗の強い影響のもと、まさしく水を「枯らす」ことで徹底した抽象化と
深い精神性を表現しています。

『石橋（いしばし）』

　池泉庭、枯山水庭、露地庭などで池や水の流れに架けられた石造りの橋です。
初めは自然石を用いましたが、桃山時代以降は人口の切石も使われるように
なりました。
枯山水の場合は、橋を架けることで水の流れを想起させます。
「伊勢物語」に題をとった「八つ橋」などの意匠では八枚の板を組み合わせて
作られることもあります。

『三尊石（さんそんせき）』

　大小三個の石を組み合わせて作られる石組みの基本です。
釈迦仏・阿弥陀仏・薬師仏の三尊仏を表わし、庭を守護する祈りを込められて
作られます。日本人は神代から巨石を磐座、つまり、神しろしめす処と
崇め奉る習慣があり、等しく、自然の石には神仏宿るものと考えられてきました。

『州浜（すはま）』

　州浜とは、海岸や河口にある「州」、つまり小さな中州＝島が大きくなって
曲線を形作った岸辺です。大自然をミニチュア化することで生まれた
庭園意匠としては、模倣の海である池水とならんで古いもので、
遠く飛鳥・奈良時代にまで遡（さかのぼ）ります。
池の汀（なぎさ）を穏やかな勾配に玉石や砂利を敷くなどして作られます。

『灯篭（とうろう）』

　元来は、神仏に灯明をささげるために作られた照明器具を指しました。
石・木・竹・金属・陶器など様々な材質のものが古くからありますが、
庭に据えられるものは石造が一般的です。
灯りを必要とする場合に配置されるが、むしろ景色として重要な役割を
果たしています。笠・火袋・竿など観賞のポイントも多く、
型なども様々に豊富です。