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2008 07,08 18:00 |
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マンション市況急落で始まるディベロッパーの体力勝負 週刊ダイヤモンド編集部 2008年07月07日 ここ数年、好況を謳歌していたマンション市況が悪化の一途をたどっている。大手ディベロッパーのマンションの在庫は2008年3月期末に軒並み増加、今期の粗利益率も低下する見通しだ。市況の大調整、大量供給時代の終焉という大波は、大手、専業、中小すべてを巻き込みつつある。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
両方とも藤和不動産が開発したもので、1棟は自社分譲マンション「ドリームタワー」として2005年末に発売、駅前の高層という人気物件だったこともあり、約4ヵ月で完売した。残る1棟は2006年末に竣工後、賃貸目的で不動産ファンド、シンプレクス・インベストメントに1棟丸ごと売却した。ところが取得後、市況の上昇に目をつけたシンプレクスは、急きょ、自らが売り主となり物件を分譲用途に転換し、2007年5月から「ソルクレスト」名で発売した。 問題は価格。平均坪単価は、隣の「ドリームタワー」と比べ約3割高く設定したのだ。物件価値が上がったといっても「正直、あの売価設定はないと思った」と大手ディベロッパー役員は首をひねったほどだ。 そこで昨夏、2割高程度に価格を引き下げたが、分譲開始当初に見込んでいた2008年2月頃の完売、という目標は大きくずれ込み、現在も約4分の1の戸数が売れ残っている模様だ。結局、今年末頃の完売を目標にしているが、ある不動産関係者は「発売から1年以上たっているので中古物件並みに見られている。もう一段値下げしないと完売は難しいのでは」と見る。
分譲マンションを取り巻く環境は、この半年あまりで激変した。大京では、グループ計で2008年3月期末には前期比約2倍の818戸に完成在庫がふくれ上がった。 他社からも「昨年の8月から契約率が急に下がってきた」(木下豊一・コスモスイニシア常務)、「昨年より大型案件が減った影響があるとはいえ、モデルルームの来場者数が昨年の半分程度になってしまった」(原一史・三菱地所住宅企画業務部副長)と切実な声が漏れる。変調は業界全体に広がる。 サブプライム問題の余波で高額品消費に対するマインドが冷え込んでいることもあるが、「供給者側の理屈で付けられた高過ぎる価格が売れ行き不振の原因。その結果、一般のサラリーマンが月々“家賃並み”のローン支払いで買える現実的なレベルではなくなった」と福田秋生・不動産経済研究所主任研究員は指摘する。 2004年、2005年、2006年と前年比2%前後の上昇率で推移してきた首都圏マンションの平均分譲価格は、2007年に10.6%増。特に東京23区内は前年比19.7%増の6120万円に達した。 この間サラリーマンの平均給与が上がったわけではない。地価と建設コストという原価の上昇をカバーし、予定の利益率を確保することを目的に各社が分譲価格を上げた結果である。 特に、2007年6月から10月にかけて、建築基準法改正の影響で、新規供給がストップしたため、見積もりに入っていなかった資材高騰の波をもろにかぶった案件などは、「当初価格に2割程度の上乗せをしなければ利益が出ないほどになった」(業界関係者)という。 だが、これらはすべて供給者側の事情にすぎない。明らかに需要と乖離した値動きに消費者が追従するはずもない。不動産経済研究所の調査によると価格上昇とは反比例して2007年の契約率は低迷した。特に2007年8月以降は、好不調の目安である契約率70%を下回り続けた。 発売戸数についても同様だ。首都圏の供給戸数は1994年から年間8万戸台で推移を続けていたが、2006年で7万4463戸、2007年には6万1021戸に急減。2008年は5万戸ぎりぎりになるとの見方もあるほど。この十数年間続いてきた“大量供給・大量販売”の時代は終焉を迎えた。 市況の変化に対し、調整はすでに始まっている。今年1月、新日鉄都市開発と東京建物は、2007年7月に発売した東村山市内の「ココロコス東京久米川」の分譲価格を、すでに分譲ずみのものも含めて約20%値下げした。その結果「ゴールデンウイークに首都圏で最も売れた物件」(業界関係者)と見られるほどの売れ行きを示した。 収益の柱がほかにもあるという某ディベロッパーは「抱えている在庫は2割程度値引きして売り切る予定。損切りできる体力があったので助かった」と話す。 他社でも同様の動きは相次いでいる。「当初社内で予定していた販売価格を引き下げて発売するものが今期は相当数ある」と前出の木下常務は言う。コスモスイニシアの今期の粗利益率は前期比減となるものの、販売スピードを優先する方針に転換した。 「大手ゼネコンが土地取得込みで開発し、ディベロッパーに売却しようとしている物件になかなか買い手がつかず、当初予定価格の約半額で市場に出回るものが出始めた」(業界関係者)などの類いの話は枚挙にいとまがない。
もちろん、なるべく高値で売り抜きたいのがディベロッパーの偽らざる本音。しかし、価格に固執していれば売り時を逸してしまう可能性がある。そのタイミングや値下げ幅を見極めようと、競合他社の動きに神経を尖らせているのが現状だ。 「大京、ダイア建設、三菱地所などがマンション完成在庫の一斉値下げ」との一部報道に対し(各社とも否定)、表向きは「冗談じゃない。大迷惑だ」(大手マンションディベロッパー幹部)と反発する反面、「船に乗り遅れてしまったら、在庫の処分ができなくなってしまう」(関係者)という本音ものぞく。 今回のマンション不況は、単なる“ミニバブル”の崩壊のみならず、少子高齢化の進展で“首都圏8万戸供給”という大量供給時代の終わりに向かう可能性がある。この5月、一部物件の値下げの影響もあり平均分譲価格は今年初めて低下に転じ、さらに契約率も70%を今年初めて上回った。顧客は消えうせたわけではない。適正価格であれば一定の需要はある。ただし、その恩恵は値下げを行なう余力のある企業など一部しか享受することができない。 市場縮小で訪れるのは、体力のない企業の淘汰である。地域一体の再開発案件付きでマンション開発を手がけられる財閥系大手や、特定の地域で高いシェアを持ち、継続して付き合いのある地主から安価で土地の仕入れができる老舗ディベロッパーなどはまだましだ。「販売や管理なども含み一貫してしっかりしたサービスを提供できるディベロッパーが選別される傾向は強まっている」と瀬川修・藤和不動産常務は言う。 ところが、立地やスペックで見劣りする案件しか持たない中小ディベロッパーは真っ先に苦しくなる。すでに新興マンションディベロッパーでは、新規建設案件に融資が付かずに手持ち案件を急ぎ運転資金に換えるためのたたき売りも始まっている。 市況が急転し、大量供給時代が終わりを告げるなか、まさに“体力勝負”の真っただ中に各社は投げ込まれている。 PR |
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