夜空に浮かぶ古都への誘い　１３００年を迎える平城京散歩

産経新聞　7月6日17時32分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080706-00000927-san-soci

　今年も１日から始まった「ライトアッププロムナードなら」。再来年に遷都１３００年を迎える現代にあってもなお美しい古都を、幻想的に照らす恒例のイベントに国内外からの数多くの観光客が魅了されている（１０月３１日まで、７月７日は除く）。寺社仏閣、明治から平成の名建築、池…夜の闇に照らし出された、奈良時代から平成の世に至る古都の１３００年の歴史をそぞろ歩くと－。

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　観光客で賑わう三条通りを奈良公園に向けて東へ歩くと、坂道にさしかかる辺り、右手に猿沢池が見える。
　ライトアップされた池の畔を歩けば、遠くスポットライトに照らされた興福寺五重塔が水面に映える。
　猿沢池の東側から長い階段をのぼり切れば、その五重塔は目の前だ。
　世界遺産に登録された国内第２の高さを誇る壮麗な塔は、７３０年に光明皇后の発願で創建され、１４２６年に再建された国宝だ。

　いったん三条通へ戻ってさらに歩みを進めると、正面に見えてくるのが一ノ鳥居。
　春日大社の玄関口で日本三大鳥居の一つに数えられる名鳥居は、平成の大修理を終えたばかりの鮮やかな朱塗りの姿で、三条通りの終点と神の領域の始まりを厳かに告げている。
　鳥居の前で国道１６９号線（天理街道）を渡って奈良公園内に入り、左に進むと奈良国立博物館本館が姿を現す。
　国内随一の仏教美術の博物館で、建物は明治中期の代表的な洋風建築として国の重要文化財に指定されている。

　ここから公園内を東西に貫く大宮通りへ出てしばらく進む。やがて左手に見えてくるのが光に浮かぶ東大寺南大門。
　境内に入ると、朱塗りの中門や朱と緑のコントラストが美しい伽藍の築地塀の向こう、巨大な大仏殿が夜の闇に浮かび上がる。屋根の両端を飾る黄金色の鴟尾（しび）がひときわ強く輝く。
　中門手前右手の鏡池に映る、大伽藍の姿は格別の美しさだ。
　東大寺を出て大宮通りに戻り、東へ歩いて突き当たると再び公園内に。
　左の小径を進むと、能楽ホールを兼ね備えたイベントホールの新公会堂がある。
　日本一広いという瓦屋根を持つことから「ビッグルーフ」の異名を持つ、昭和６２年築の名建築。使われた瓦は１３万枚以上という。

　もと来た小径を戻ろう。
　大宮通りの三叉路に出て公園内を南に歩くと、見えてくるのは仏教美術資料研究センター。
　純和風の造りだが、左右対称の様式はイスラム風という異色の明治建築。シルクロードの終着点を、強く意識したのかもしれない。
　その先に待っているのは、今度は日本の美を結集したような浮見堂。
　鏡のように静かな鷺池に浮かぶその姿は宝石箱にもたとえられ、北側の梅林内にある高床式の円窓亭の静かなたたずまいと好対照だ。

　さてこれで奈良公園周辺のスポットは見終わった。近鉄奈良駅から電車で大阪難波方面へ向かおう。
　新大宮駅と近鉄西大寺駅の間に広がる広大な平城宮跡。ここももちろん世界遺産だ。
　その南端には平成１０年に復原された朱雀門がそそり立ち、１３００年前の首都の偉容を伝えている。
　じっくり見学するなら新大宮駅で下車し、国道３６９号線（大宮通り）を２キロ西へ歩こう。

　車窓から朱雀門を見るだけで満足ならば、そのまま近鉄西大寺駅へ。
　奈良線から橿原線に乗り換えて西の京駅で下車すると、ここがライトアッププロムナードの終着点、薬師寺。
　そびえ立つ２つの五重塔と重厚な金堂が醸し出す風格は、他のどんな寺に勝るとも劣らない。近くからではよく分からないが、境内から南西約４００メートルの大池畔からの眺めは、遠く１３００年前の都の荘厳な姿を今に伝えている。

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　毎日午後７時（９月からは６時）から１０時まで。