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2008年05月20日 週刊ダイヤモンド編集部 プーチン大統領のリーダーシップ、資源バブルの追い風で完全復活を果たしたロシアは、これからいったどこへ向かうのか。大前研一・ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長が、「ロシアが目指す道」を鋭く斬る。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
27歳で初めてロシアを訪れてから38年。ここ2年でロシアの景色は急速に変わった。街にはモノが溢れ、ウオツカを飲んでいた国民がビールを飲み、女性が化粧をするようになった。 資源高でロシア経済が復活したと見る向きは多い。だが、資源高でも経済成長が芳しくない国は少なくない。隣国のウクライナが典型的な例だ。鉄鉱石、石炭といった資源に加え、農業に適した世界有数の肥沃な黒土を持ちながら、経済復活のメドは立っていないのだ。 ロシア経済が復活した最大の理由は、プーチンの改革にある。なかでも最大の成果を上げたのは2002年から始まった税制改革だ。 以前は、年収がわずか5000ドル(約50万円)を超えると、所得税が最高税率の30%に達していた。給与所得があるほとんどの人が最高税率を適用されるため、脱税が横行して、地下経済が膨大にふくれ上がっていた。 そこに、プーチンは逆転の発想を取り入れた。一律13%のフラットタックスを実施して、減税というアメを与えたのだ。一方、マフィアに対しては「不正は許さない」という姿勢を意識的に取り、納税を逃れる者は徹底的に罰し、死刑も厭わない鬼気迫る姿勢で臨んだ。 そこで、国民はリスクを冒すよりも税金を払ったほうがマシとなった。プーチンの怖さが、政策の徹底において効果的に表れている事例だ。その結果、税率が下がったにもかかわらず、税収は逆に25%も増加した。地下経済も大幅に縮小して、資源高の恩恵が広く庶民にも行き渡るようになったのだ。
経済復活の本質は、「強いロシア」を標榜し、それに徹した改革にある。資源高は追い風にすぎない。 西側メディアには、プーチンを「現代の皇帝」に仕立てる向きもあるが、それはまったく間違った考え方だ。ロシアという国は、悪人を跋扈させないようにしなければ、なにが起こるかわからない。ある程度の強権発動は、いまだ必要悪と私は見る。 首相に就任するプーチンには、最大の課題である官僚機構改革を期待したい。プーチンは、官僚とうまく付き合いながら改革を進めてきたために、あえて古い官僚機構に手をつけてこなかった。 書類だらけの手続き、スローな仕事、役人根性、腐敗と、昔ながらのやり方だけは、なにも変わっていない。日本がずいぶん効率的な国に思えるほどだ。官僚機構が今後の貿易発展に当たって、障壁になる可能性はきわめて高い。 プーチンはメドベージェフ政権の一期を待って、再び大統領選に出てくるだろう。そこから2期、つまりここから12年、合計では彼の就任(2000年)から20年間、プーチン政権は続くと見なければならない。 プーチンがどういうかたちでこの20年を締めくくるか――。 私は「ロシアのEU加盟」を予測する。今後、欧州との関係が深くなることは間違いない。ロシアはエネルギー供給を通じて欧州の生殺与奪の力を持っているが、欧州から見れば今のロシアはコミュニケーションが取れる国だ(来年EUの初代大統領になる可能性の高いドイツのメルケル首相はロシア語が専門。プーチンはKGBでドイツ語の特殊訓練を受けている)。 ロシアがEUに入れば、域内にエネルギー資源を持つことになる。ロシアがEUに入る計画を打ち出していないにもかかわらず、EUが実施したアンケートでは、「ロシアをEUに入れるべきか」との質問に賛成した人が65%もいた。 ロシアにとっても、EU加盟のメリットは少なくない。ロシアを加えたEUの規模は、人口で米国の3倍、GDPで2倍になる。この経済力は、米国や中国への最大の抑止力になるからだ。 地政学的な発想をすれば、「ロシアのEU加盟」は当然の結論といえるだろう。 PR |
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