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2008 05,14 11:49 |
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サブプライム惨禍は続く!株価底打ち説は時期尚早 2008年05月14日 山崎 元(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員) 上場企業の決算発表がピークを迎えている。株式市場の現在地点を確認し、行方を占うには絶好のタイミングだ。 しかし、悪い時期は本当に過ぎ去ったと考えていいのだろうか。結論から言うと、私はノーだと思っている。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
株式市場の先行きを占う上では、先ず株価のレベルを確認しておくことが重要だ。すなわち現在の経済状況に対して、高いのか安いのかを考える。 たとえば、5月9日時点の日経平均株価1万3655円でいうと、今期予想利益ベースのPER(株価収益率)は16.27倍。前期の実績ベースでは15.45倍だ。PERが上がったということは、それだけ予想が悪化していることを意味する。実際、上場企業はこれまで6期連続増益だったが、2008年度は減益の見通しだ。 この16.27倍という倍率では分かりにくいので、益利回りに直して考えたい。16.27倍とは益利回りで6.146%である。私は、この益利回りに、利益成長率の代理変数である名目GDP成長率を合算した数値を株式の期待リターンの目処だと考えることにしている。名目GDP成長率を長期の利益成長率とした場合に、株式が投資家に無理なく与えられるリターンを計算したものだ。そこから長期金利を差し引くと、リスク・プレミアムが見えてくる。 筆者は、現在、リスク・プレミアム5~7%を普通の株価水準の範囲と捉えている。リスク・プレミアムが6%なら「株価は普通」、5%なら「株価は高め」、7%なら「株価は安め」と考えてもらいたい。 そこで5月9日の益利回りに対して経済成長率見通しを1.5%とすれば、期待リターンは7.646%。週末の長期金利が1.55%だから、リスク・プレミアムは約6%。つまり1万3655円という水準は、1.5%の経済成長率で考えると、確かに妥当なレベルということになる。 しかし、この分析はあくまで現在の利益が減らないことが大前提だ。今、この前提が揺らいでいる。 そのことを示す象徴的な出来事がトヨタ自動車の減益予想だ。同社は5月8日に2007年度決算を発表し、併せて2008年度の業績見通しを明らかにしたが、それによれば、営業利益は約30%の減益予想だ。同社の2007年度決算は過去最高益となったが、株式投資の場合は、結果ではなく、予測が重要。その意味で、この業績見通しの示唆するところは大きい。
そういえば、投資家のウォーレン・バフェットも、米国の金融機関はサプブライム関連のロスを出し切っていないと警鐘を鳴らしている。アラン・グリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長も、金融システムの不安はピークを超えたが、不動産価格の下落は続き、景気に対するマイナスの影響はまだ続くといっている。私も同感である。 では、日本固有の要因はどうかといえば、ここでもネガティブな材料が多いのが実情だ。まず金融政策で言えば、利上げ派と見られていた白川方明・日銀総裁は昨今、中立的な姿勢を示しているが、利下げは望み薄だろう。 物価はGDPデフレーターベースではマイナスだが、輸入物価指数も企業物価指数も上がっている。つまり、生産するものの価格は上がらないのに、原材料の価格は引き続き上がっており、投資の意思決定の前提条件としてはまだデフレ的な状況が続いている。 個人消費も厳しそうだ。5月3日付の日本経済新聞によれば、主要企業の夏のボーナスはほぼ横ばい、03年以降で最低の伸び率にとどまる見通しという。賃金について言えば、アクセルを踏む混む前にブレーキが掛かってしまったという感じだ。
そして、追い討ちをかけるような、この政治の混迷だ。福田内閣の支持率が急激に下がっているが、これだけ下がると、かえって解散できないだろう。ここで、衆議院の3分の2以上の議席を持つ今のうちに、議決できることをやってしまおうという意識が働けば、この秋に、消費税アップの話が出てこないとも限らない。 生活物価が上がる中で、賃金は上がらず、社会保障関連負担は増えて、消費税の話まで飛び出すとすれば、景気が上向く要素がない。実際、景気動向指数を見ても、先行、一致、遅行のいずれをみても、50%割れだ。リセッションという雰囲気は日本経済をも覆い始めているのである。 こう考えると、現在の、1.5%の経済成長率に見合った株価はそこそこ居心地のいいものだとしても、先行きのリスクは考えておいたほうがいい。夏のボーナス横ばいを受けて、運用で増やしたいという気持ちを持っている人は、株式市場のスランプがもう少し長期化する可能性も肝に銘じておくべきだ。もっとも、投資のセオリーとしては、状況が最悪に見える時こそが、むしろ最高の「買い」のタイミングではある。 PR |
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