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「日銀サーベイ」金利予想、経済・物価情勢、金融政策の展望コメント ブルームバーグNEWS 2008/04/28 06:00 JST ブルームバーグ・ニュースは30日開かれる日銀の金融政策決定会合を前に、 1)今回の会合で予想される政策、 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
景気が踊り場に入っている以上、早めの利上げの必要性は薄れている。利下げを急ぐ状況でもない。消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比上昇率は上昇ピッチを速め、狂乱物価以来と言われるような広範な値上げラッシュを受けて、消費者のインフレ予想も上昇している。日銀は一方で、金利正常化に拘泥せず、柔軟な金融政策運営を心がけてゆくことを市場に示していこう。世界の金融・経済情勢が大恐慌と比較されるくらい不確実性が高いからだ。 中立姿勢から金融緩和バイアスに転じるとしたら、物価上昇リスクよりも景気後退リスクの方が大きいとフォワード・ルッキング(先見的)に総合判断されるときだろう。言い換えると、生産・所得・支出の好循環メカニズムが変調をきたし、ひいてはマクロ的な需給ギャップが供給超過に転じ、企業や家計の物価予想が下向きに転じるときと考えられる。一方、中長期的には金利水準の適正レベルへの調整を進める。政策委員会の顔ぶれをみても重心はタカ派寄りだ。
国内は生産統計の基準改定により景気後退認定が先送りされ、当面は景気足踏みとの見方がされよう。1-3月のデータは中国の旧正月とうるう年要因でかさ上げされる部分もあり、方向性を確認する上で4-6月に焦点が移る。重要なのは6月までに米国発の信用不安が収まっているか、米国景気が累積的な金融緩和や減税効果等により最悪期を脱するとの見方が増えているかどうかだ。 3月短観は企業の慎重姿勢が色濃く反映され、期初要因をどれだけ割り引いて良いかよく読み切れない。6月短観のアンケート記入がされる6月までに先行き不安が薄れるなら、3月短観からの業況判断DIの大幅悪化は食い止められ、設備投資計画のマイナスからの改善も期待できよう。次なる国内の重要指標は7月1日発表の日銀短観6月調査だ。 一方、米国経済の停滞の影響が日本を含むアジアに及ぶと考えるなら、輸出、生産の落ち込みはタイムラグを伴い、7月以降に色濃く出てくる可能性がある。年前半をならしてみると横ばい、足踏み状態となっていれば、国内経済の正念場は7-9月に持ち越す形も想定できよう。結局の米国経済次第だ。 日銀は展望リポートで、下振れリスクを強く意識しつつも、緩やかな成長経路をたどる標準シナリオの蓋然(がいぜん)性が高いかどうか、上下両方向のリスクを丹念に点検した上で適切な金融政策運営を行っていく方針が示されよう。日銀は当面は見極め姿勢ながらも、何かあれば機動的に対応する、柔軟性も同時に示すと思われる。米国経済が想定外の悪化とならなければ、日銀は利下げも利上げもしない状態で今年を乗り切る。
0.5%しか利下げの余地がないだけに、仮に利下げをするにしてもタイミングはじっくり選びたいというのが「白川日銀」の本音だろう。「展望リポートで景気シナリオが大幅に下方修正されて、そのまま利下げに向けて一直線で走る」とは期待できないというのが筆者の考え。日銀が利下げに追い込まれるには、現状では材料不十分であり、一段の円高ドル安進行がいわば「合わせ技」として必要になってくる。
「白川総裁はタカ派だから利下げはあり得ない」というパターン化された決め付けは危険だろう。量的緩和策の当時、福井前総裁が日銀当座預金目標を引き上げようとした時に当時の白川理事は強く反対していたと報じられている。それは「タカ派」だからではなく、合理的な説明をつけにくい政策変更に対する反対だったと思われる。米経済の失速が年後半以降に深刻化し、日本企業が抱く回復シナリオが崩れると、日銀が利下げに傾く可能性は否定できない。
過去1カ月間、エネルギー・食料品の価格上昇により企業部門の収益圧迫が顕著になり、企業部門で吸収し得る限度を超えてきたため、消費者物価への転嫁が本格化してきたことが特徴だ。第一義的には、一種のサプライショックが発生し、交易条件の悪化からまず企業部門、ついで消費者部門の実質所得が目減りしたことを意味する。 しかし、過去の石油ショックのような単純なサプライショックと異なり、新興諸国の強い需要が商品市況上昇をもたらしたため、内需へのシフトが鮮明になりつつある新興諸国への輸出増大により、日本経済は交易条件の悪化が一部緩和されており、急速な景気の悪化は回避されている。価格面の変化が大きい割に数量面への影響は比較的軽微であり、鉱工業生産、実質GDPなどは底堅く推移している。しかし、需要構成は内需が減退し輸出への依存度を高めざるを得ない。 白川総裁の発言などからは、中長期的には金利の正常化路線をあくまで推進するという強い意志が感じられる。90年代の資産バブルの発生とその後の崩壊を身をもって経験したことに裏付けられた中央銀行員としての強い使命感がうかがえる。今回の米国発の信用バブル崩壊もそれまでの行き過ぎた金融緩和が背景であり、白川総裁は自らの信念にさらに確信を抱いているだろう。もっとも、だからといって短期的にも硬直的な金融政策を日銀が行うと考えるのは誤りだ。 バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長も就任後は持論のインフレ目標論を封印しているように、優れた中央銀行総裁は実務的判断を優先する。仮に世界の金融経済が予想外に悪化する場合、白川総裁もちゅうちょなく利下げに踏み切ろう。90年代に利下げの効果が限定的だったのは、資産価格急落と金融システム崩壊があったためで、今回こうした悪条件が発生しなければ現状の低金利を維持、あるいは利下げする効果は大きいと同総裁は考えているようだ。
日銀は「景気シナリオは下振れ」で、景気減速という評価を維持する。「需給がおおむねバランスした状態」では潜在的な物価上昇圧力は乏しく、金融政策は利下げの自由度を示す形になる。日銀は景気悪化のリスクに備えて利下げカードをキープして、緩やかな成長の範囲内では0.50%の金利を据え置く。
5月に0.25%、7-9月に0.15%の利下げを予想していたが、今回あらためて金融政策の見通しを検討した結果、利下げシナリオを撤回した。0.5%に据え置きを続けた後、09 年10-12月に利上げを再開すると予想する。展望リポートでは①生産・所得・支出の好循環メカニズムの滞り(事実上の停止)②好循環メカニズム再開までの利上げの見送り③負の循環メカニズムの作動により下振れリスクが高まった際の機動的な対応―などが示唆されると考えている。 金融政策は以下の記述を予想する。「中長期的な物価安定の理解」に照らして、好循環メカニズムが滞っている間は現在の緩和的な金融対応を維持する方針である。好循環メカニズムの再開が確認できれば、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えられる。負の循環メカニズムが観測されるなど金融緩和度合いを高める必要があると判断される際には、予断を持たず、その時々の状況に合わせた機動的な政策対応を行う。
日銀が展望リポートで弊社が見込むように経済見通しと政策スタンスをトーンダウンさせると、理論的には利下げカードをいつでも切れる体制が整う。もっとも、総裁指名プロセスが政争により意外な展開をたどった結果、予防的利下げの蓋然性は足元後退し、弊社の利下げ見通しが瀕死の状況にあることは否定しない。利下げは以下の理由から危機対応のため温存される公算が強まっている。 第1に、白川新総裁は足元の経済は外的ショックで大きく落ち込む状況にないとの楽観的な認識を示している。第2に、07年度企業決算は下方修正が相次ぎ、08年度のガイダンスも大幅減益見通しが見込まれる中でも、株式市場はそうしたシナリオを織り込み、また海外当局による信用市場テコ入れのための政策発動期待もあり底堅く推移している。第3に、米財政・通貨当局の矢継ぎ早の流動性対策で、為替市場、信用市場ともに混乱が一服している。 上記に加え、新総裁がその誕生プロセスからして、先行きの政策の方向性について恐らく官邸側に何もコミットしていないだろうと想像されることも、早期利下げの可能性を損なっている。一方で、新総裁は下向きのリスクが強まった場合、必要に応じ機動的に動く点も強調している。4-6月の利下げはナローパスとなったが、市場動向次第で可能性は年後半も残ろう。
米国景気は今年3四半期こそ景気対策から一時的に浮揚するが、持続的回復につながるか極めて不透明。住宅部門はもとより個人消費、設備投資も減速、後退する可能性が高い。今年、来年ともに実質成長率は1.0%程度にとどまる。FRBは政策金利を1.0%まで引き下げる公算がある。今年、来年のユーロ圏の実質成長率は1.0%台前半にとどまる。白川総裁は基本的に福井路線を継承しよう。理事時代の姿勢からタカ派とみる向きもあるようだが、短絡的過ぎるだろう。
白川総裁は非常に明確な経済理論を持ったタカ派だと考えられる。それは3月21日の会見で明らかだ。白川総裁は「中央銀行の観点からすると、短期的な事情、目先の景気だけにフォーカスして金融政策の運営をする(中略)と、経済全体がインフレになっていく。その結果、経済はいったん押し上げられるけれども、最終的には落ち込む。そういう歴史的な経験を踏まえて、短期的な事情から金融政策を分離しようというのが中央銀行の独立性だと思う」と語った。 金融政策論的には、これは極めてハイエキャン(ノーベル経済学賞受賞の経済学者F.A.ハイエクの知的影響下にある人々)に近い考え方だ。どれほど近いかはハイエクの以下の言と比較すれば一目瞭然だ。 「総需要を増大させることによって完全雇用を長続きさせることはできません。そういう需要刺激策はインフレを招きます。そしてその後は、インフレを加速化させなければ雇用を維持することができなくなってしまうのです。(中略)確かに短期的には人々に雇用機会を与えることができる。しかし、長期的にみると実情は逆に悪化しており、後の時点で失業が発生する原因になります」(ハイエク著、西山千明編「新自由主義とは何か」東京新聞出版局、1976年より)。 ハイエクは20年代後半から30年代前半にかけてケインズと鋭く対立したことで知られているが、彼がかつて最も批判したのは、27年8月にFRBのベンジャミン・ストロング総裁の下で実施された公定歩合の引き下げと国債の買いオペだ。ミルトン・フリードマンが「選択の自由」の中でこの政策について、マネタリストの立場から高く評価しているのと対照的だ。 ハイエクは「さもなければ自然消滅していたはずの好況を2年延長することに成功した。(中略)もしそういう事実がなかったならば、われわれの知るすべてのことから判断するかぎり、27年以降に比較的穏やかな不況が導かれたであろうと思われる」(「ハイエク全集第Ⅰ巻 貨幣理論と景気循環・価格と生産」古賀勝次郎他訳、88年より引用)として、その後の大恐慌の遠因とみなしている。 ハト派の金融政策が短期的には成功しても、時間が経過すると反作用を受けることにハイエクは警鐘を鳴らしていたのだ。このことは日本の80年代のバブルが過度の、かつ長引いた日銀の金融緩和政策を原因の1つとして起こり、これが90年代以降の災厄を招いたという日銀マンたちの認識と共通している。いずれにしても、理論的な造詣が深い白川総裁の発言だけに、無意識ながら理論的な香りを帯びて、ハイエク的な表現となったのかも知れない。 このような白川総裁の指揮の下、日銀は基本的なスタンスとしては、「金融政策については、標準的な経済の姿と上下両方向のリスク要因を注意深く丹念に点検しながら運営していく」(4月15日の参院財政金融委員会)ということなろう。ただ、これとともに最近無視できなくなってきたのが、「利下げやめてほしい」(4月20日付け日本経済新聞朝刊)という「国民の声」だ。 白川総裁の総裁就任を受けて同社が全国約7000名の「日経生活モニター」を対象に調査したところ、新総裁に望む金利政策の方向性は「据え置き」が 48%と最も多く、「引き上げ」も44%に達し、「引き下げ」はわずか8%にとどまった。特に「年金生活者」の59%が引き上げを望んでおり、専業主婦なども利上げが比較的多いようだ。自営業は37%と利上げ派が最も少なく、会社員なども消極的という結果になっているが、年金生活者の6割というのは圧倒的だ。 この結果は先の日銀総裁・副総裁の国会同意人事で、民主党から提起された点(「利上げをする人に日銀総裁を」との要望)を裏付けているとも言える。この記事でも、さすがに「もっとも、金融政策は家計部門の利益だけのために運営されるものではない」(清水功哉編集委員)とくぎを刺してはいるが、日銀はその本来の姿ともいえるタカ派的スタンスを取ることが、政治的な人気をも勝ち得るという状況となっている。 こうしたことや、直近における米銀の収益のボトムアウト感やこれに伴う株高・ドル持ち直し、さらに原油高がもたらすインフレへの警戒感、そこそこ底堅さを見せる欧州景気、さらには05年基準改定に伴い上方修正された日本の鉱工業生産指数なども支援材料となり、当面は私自身が以前に想定していた4月30 日での公定歩合引き下げや、5月の無担保コール翌日物金利引き下げは、もはや可能性が非常に低くなったと言ってよいだろう。 ただし、これまでの景気先行指数の長期間にわたる低下を受けて、3月以降の生産の落ち込みの可能性はなお高く、日本の企業や地域の景気実感はどんどん悪くなっていることが日銀の短観3月調査や地域経済報告でも明らかだ。米国経済の景気後退入りという現実の中、FRBは年央までにさらに0.5%程度の利下げを行い、ドルの下落が一段と進行するリスクもかなり高い。5月かどうかはともかく、欧州中央銀行(ECB)も利下げを実施すると考えられる。 したがって、国内の景況感の悪化が本格的に厳しくなると見込まれる08年7月での0.25%利下げはなおメインシナリオとして想定できるのではないか。ただ、この利下げは諸般の事情から1回にとどまり、08年晩秋ごろより景気回復が起きると、09年7月ごろからの利上げ開始は十分に可能となるとみている。
4月、5月公表の貿易統計で新興国向け輸出の明確な鈍化傾向を確認した上で、6月会合で利下げ。利上げは2010年度以降。
白川総裁は政策運営の透明性と説明責任の向上に真剣に取り組む(国民にとってよりわかりやすい金融政策を目指す)とみられ、従来に比べて、より機動的、客観的な経済・物価情勢判断に努めるとともに、政策変更の適否や妥当性を分かりやすく説明することになるだろう。 足元では景気減速を素直に認め、ダウンサイドリスクも指摘する一方、インフレ率の高さ、期待インフレの上振れ傾向も真正面から取り上げ、なぜインフレが困った現象であるかを再確認した上で、政策金利引き下げが容易ではないことを、より分かりやすく、丁寧に説明していくであろう。白川総裁は金融政策の信認が何たるものであるかを適切に理解しているからだ。
米国経済は住宅投資、消費を中心に鈍化しつつある。欧州経済も米国に遅れて鈍化しつある。ただ、新興国経済の成長鈍化は限定的にみえる。したがって日本の輸出の増加は続くのではないか。輸出が増加すれば、内需も緩やかに増加するだろう。もっとも輸出が減少するようなら、内需も後退し、景気後退に陥る可能性がある。 日銀は白川総裁の下、これまでより明確な金利正常化スタンスが基本になるのではないか。もっとも、足元の経済・金融情勢から考えれば、近い将来の問題は利下げの有無だろう。しかし、金利正常化が道半ばであり、金利引き下げの景気刺激効果が、必ずしも短期金融市場の機能を減殺するデメリットを上回るほどに大きくないとみれば、利下げはちゅうちょするのではないか。もっとも、この点は今後の景気次第のところがある。
国内の個人消費は今のところ予想以上に健闘している。アジア諸国や産油国向けの輸出が好調なこともあり、設備投資も底堅い動きを示している。当面、国内景気が大幅に落ち込む可能性は低いとみる。海外は米国の住宅市場の動向が鍵を握る。さらに下落幅が拡大するようだと金融機関の経営にもさらに大きな悪影響が及ぶ。それが現実のものになると米国経済の一段の減速は避けられない。欧州の経済も若干のタイムラグはあるが、同様の展開になろう。 中国経済もインフレ懸念の高まり等で調整が必要になる可能性は高いだろう。産油国や一部の資源国は好調な展開を続けると予想されるが、世界経済全体で見ると次第に減速が鮮明化するはずだ。物価は徐々に上昇傾向が一段と明確になると予想する。潤沢な流動性を背景にエネルギーや一部穀物価格は上昇トレンドを続け、コストプッシュ型のインフレ懸念がさらに顕在化すると考える。 白川総裁を一言で表すなら理論的ということができよう。今後の政策運営にも同氏の持つ経済理論が大きな判断基準となることが予想される。同氏の景気や金融市場の動向の認識の方法論は極めてオーソドックスであり、当面、景気の先行きや金融市場の動向に注意しながら、現状認識の精度を上げることを考えるだろう。いずれにしても短期的にはどちらにも動きにくい環境が続く。
日米とも企業の設備投資意欲が弱い。それでも輸出堅調に支えられ在庫水準が低いこともあり、両国の製造業は底割れを回避している。需要ショックが起きなければ景気後退を回避できる状況にある。米国で財政効果が出る5月までの経済活動の落ち込みが焦点。消費下振れが起こり、雇用悪化ペースが速まるようだと、金融危機が止まっても今度は実体経済で急激な収縮が始まる。少なくとも失業保険請求件数はまだ実体経済での急収縮が始まったことを示唆してはいない。 市場や政治向けのパフォーマンスをする可能性が低い白川総裁が利下げに傾くには、成長見通しが著しく下がり、デフレ懸念が高まってくることが必要だ。4月15日には、それが原因となって「景気が大きく落ち込んでいく局面ではない」と発言しており、デフレ懸念を強めるような成長見通しではなさそうだ。 利上げ路線に戻るタイミングでもないが、「時間軸」効果を意識した政策運営をするとも考えていない。特に、長期金利を低めに抑えておかなければならないほどデフレ懸念が強まっているわけでもないからだ。むしろ両方向に極端に見通しが不透明な時期において、債券市場が持っている将来のインフレに対するアラーム機能を失わせるのは得策ではない。
短観で景況感の悪化は確認されたものの、3月の株安、円高によるバイアスを考慮すれば、景気減速ペースが速まっているということでもないだろう。鉱工業生産の基準年改定で10-12月から1-3月にかけての減速のイメージが変わっており、あくまでも緩やかな成長ペースダウンという範囲は超えていない。 基本的には米国を中心とする世界経済および金融市場のリスクを見極めるという過去数カ月間のスタンスから変わりようもなく、新体制が特にタカ派的とも思えない。しかし、日本のファンダメンタルズを客観的に眺めれば、実質金利ゼロないしマイナスの現状、金融政策をさらに緩和するだけの必然性がある状況にはなく、新体制が中立的なスタンス、すなわち現状維持を続けることになる。
原油・原材料高を背景に交易条件は一段と悪化しており、収益悪化、景気への悪影響が懸念される状況にあるが、一方で堅調な外需、消費総合指数、住宅着工の回復など、景気が底堅く推移していることを示唆する指標も少なからずある。景気は「踊り場」にあるが、景気後退局面に入るとの強い示唆はない。 鉱工業生産統計の基準年改定に伴う1月、2月の鉱工業生産の上方修正によって1-3月の生産が前期比プラスになる可能性が高まったことは、市場全体の景況感を押し上げる効果があろう(むしろ旧基準の1-3月の鉱工業生産が最終需要動向に比べ、弱すぎたとの評価の方が正しいようにも思われる)。物価はコストプッシュによる上昇が続き、08年度上期を通じて1%前後の水準で推移すると予想している。 白川総裁は効果を含めて論理的に説明が可能な状況にならなければ利下げに踏み切らないと考えている。基準改定によって1-3月生産が前期比プラスとなる可能性が高まったことも、利下げの可能性を一段と低下させたと考えている。白川総裁は上下両方向のリスクを見極めながら予断を持たずに金融政策を運営する方針としているが、これはしばらく様子を見るという意味だろう。 最近の金融情勢はこう着状態にあり、内外の景気も含めて予想の範囲を超えて状況が悪化しているというわけではない。日銀には状況の推移を見守る余裕がある。先行きの経済・物価展望を前提に、08年度を通じて日銀は利下げも利上げもしないと予想している。 白川総裁は最近の著書(現代の金融政策)で、金融政策運営の原則の一つとして、政策金利の水準については幅を持った上で何らかの「均衡値」、ベンチマークを意識して評価することが必要としている。現在の金利水準がその均衡値よりも低いことは明らかなので、景気が持続的な回復トレンドに戻ったという自信を持てれば利上げに踏み切り、金利水準の正常化への動きを再開するだろう。 PR |
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