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2008 04,21 11:00 |
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【竹中平蔵 ポリシー・ウオッチ】成長戦略いまだなし 産経新聞 2008.4.21 02:31 ■政局に勝つ政策を 何とも不思議な光景が出現している。世間では、誰もかれもが経済の悪化を懸念している。現実に日本経済は、昨年の秋以降目に見えて勢いが低下してきた。そしてその背景として、改革のモメンタム(勢い)低下を多くの人々が指摘している。政府の改革姿勢が低下しているからこそ、世界の投資家は日本を見放し、ロンドン・エコノミストなどにも極端な日本批判が出されるようになった。 不思議なのは、こうした状況があるにもかかわらず、政府内で一向にまともな経済論議がなされていないことだ。政策を行おうとしてもねじれ国会でなかなか進まない、政策より政局が優先される、といった嘆き節が聞こえてきそうだが、それらはあくまで言い訳だ。しっかりとした経済政策論議がないからこそ政治が混乱し、これが政局論議をあおっている。 最大の課題は、各種の改革を積極的に展開して経済を成長させること、ないしはそうした「期待」を生み出すことである。まさに、成長戦略の強化にほかならない。サブプライム問題をきっかけとして世界の成長力が低下し、一方でインフレ圧力が高まっている。 こうしたスタグフレーション(物価上昇と不況が同時に起こる)下で求められるのは、供給側を強化し成長力を高める政策なのである。しかし、経済財政諮問会議で議論されてきた成長戦略の前倒しプログラムなどは、話題にすらならない。そもそも昨年とりまとめた成長戦略は、極めて内容が乏しい。これを前倒しして実施しても、しょせん内容は乏しいままである。 【関連記事】 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
1月のダボス会議でのスピーチでは、洞爺湖サミットに向けて温暖化ガス削減の数値目標設定を打ち出した。環境省と経済産業省、産業界の対立が続いていたが、首相指示はこれに決着をつけた。2月には、公務員制度改革に関連して、内閣府に人事庁を設けることを明確にした。霞が関とその影響を受けた永田町の一部は、公務員改革に後ろ向きだ。これを押し切る形で、首相指示が出された。制度設計の段階でまだまだ動きはあるだろうが、首相が人事庁構想を指示した意味は大きい。そして3月には、平成21年度に道路財源を一般財源化することを国民に向けて明言した。 年来の財政構造を大きく変えるものであり、財政健全化の観点からも重要な意味を持つ。改革に向けリーダーシップを発揮しようとする姿勢自体は、前向きに評価されるべきである。 ■“法人税減税”打ち出せ しかし、こうした変化にもかかわらず、内閣支持率の低下が止まらない。最新時点の支持率は23・8%。内閣発足時に比べて約30ポイントの低下だ(産経新聞・FNN合同調査)。首相がいくつかの指示を出しているにもかかわらず、これが結果として評価されない最大の理由は、経済を成長させるという最も重要な政策で前向きのメッセージが見えないからである。 日本経済は、不良債権というリアクティブ(受け身)の改革を終えていま、経済環境の変化に対応したプロアクティブ(攻め)な改革を進める段階にある。最近の首相指示は、本来「攻め」の改革であるはずなのに、その姿勢が「受け身」に映るのである。 こうしたなか、今年の骨太方針の議論が始まった。福田内閣としては初めての骨太方針であり、このなかで、「攻め」の経済政策を示せるかどうかが問われる。そのためには、成長戦略の抜本見直しがどうしても必要になる。経済財政諮問会議などでもそうした議論が始まっているが、不思議なことに成長戦略の1丁目1番地の政策が全く議論されていない。法人税の引き下げである。日本の法人税実効税率は、約40%。これに対し欧米はおおむね30%の水準、アジアは韓国23%、シンガポール15%など著しく低い(S&P社)。法人税を議論しないで、まともな成長戦略などありえない。 税制については今年の秋に党税調で行うということを暗黙の政治日程にしているようだ。しかし、こうした棲(す)み分けを超えて諮問会議などで大胆にあるべき論を議論する必要がある。これに対しては、企業批判と生活者擁護の社会的風潮の中で、法人税減税に大きな批判が生じることも考えられる。しかし、このようなポピュリストの批判を乗り越えなければ成長戦略は絵空事に終わるし、攻めの改革には結び付かない。本来消費税引き上げは、拙速な財政赤字削減のためではなく、法人税減税などのために議論されるべきである。 「攻め」の改革のもう一つのポイントとして、課題となっている暫定税率分の使い道について新しい提案があってしかるべきだ。これがないために、一般財源化を目指すせっかくの首相指示が「受け身」なものと受け取られる。 例えば、地球環境問題を解決できる技術を有しているのは世界で日本だけであるとの認識に立って、税率再引き上げ分で環境技術開発基金をつくってはどうか。これを核に、日本を世界の環境R&D基地にすれば、日本は世界に貢献しながら自らの経済を活性化することが可能になる。 海外からの日本経済批判の最大のポイントは、こうした当たり前の政策論議が政府から聞かれないことにある。 PR |
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