2024 11,27 05:34 |
|
2008 04,06 16:00 |
|
訳者が語る『まぐれ』―ウォール街を震撼させた問題作待望の邦訳! DIAMOND online 2008年04月04日 ナシーム・ニコラス・タレブは長年オプション市場でトレーダーをしてきた人間だ。キャリアの初期には為替市場を相手にし、その後、金融機関の自己ポジション・トレーダーをしたり「場立ち」を自営でやったりした後、自分のヘッジファンドを立ち上げている。1996年には『ダイナミック・ヘッジング』というタイトルで、トレーダーの立場から書いたデリバティブの価格評価やリスクヘッジに関する本を出している。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
原書のFooled by Randomnessは、かれこれ5年以上も前に出た本だ。アメリカでは数十万部のベストセラーとなった。それが今日まで翻訳されず、僕が翻訳できることになったのは次のような事情による。 タレブのウェブサイトには以前、この本がどの言語に翻訳されている(またはされる予定である)かが書かれていた。それによれば、「日本語版の翻訳者はあの『フィネガンズ・ウェイク』を訳した人だ」とのことであった。つまり偉大なる柳瀬尚紀さんが翻訳する予定だったのだ。僕がこの本に気づいたのは出版後しばらく経ってからで、これは面白い、やらずにおくものかと思ったのだが、もはや版権は取られていた。 その後、待てども待てども日本語版は出ず、タレブにメールを送ってどうなっておるんだと聞いてみたり、ときどき(ダイヤモンド社をはじめとする)出版社にチェックしてもらったりしていた。2007年の年初にダイヤモンド社がタレブの次の本である、『ブラック・スワン(黒い白鳥)』の版権を取ったとき、一緒に本書の版権も押さえてくれて、ともに僕に仕事をくださった。ありがたいことである。 『まぐれ』は僕たちのリスク認識の誤りについての本である。話は金融市場にとどまらない。それどころか、金融市場のことが取り上げられている場面はそう多くない。現実のリスクとはどういうものであるか、それに対して僕たちの間違ったリスク認識はどういうものであるか、そして両者のギャップがどんな結果をもたらすかが、たくさんの例とともに描かれていく。そんな例は結構高い頻度で古代ギリシャにまでさかのぼったりもする。 タレブは、普段から新聞よりも古典を読み、テレビは見ず(正確には見るけれど聴かず)、古典ギリシャ語を含む多数の言語を理解し(最近では、彼にメールを送ると、たぶん半ば嫌がらせで、よくアラビア語でお応えが返ってくるそうだ)、詩を愛する人である。さらに彼は数学や確率論を深く理解し、日常で駆使し、確率論で博士号まで取っている。そのうえ、彼自身はお金持ちが積極的に嫌いで、お金はないよりあるほうがいい、ぐらいに思っていて、さらに、あろうことかトレーディングの仕事はさほど好きではないようだ。そういう人が、自分のトレーディングとヘッジファンド運用の経験にもとづいて、それらにとどまらない「まぐれと実力」の話を書いたのが本書なのである。
タレブは原書が本としてどのカテゴリーにも分類されないのを誇りに思っているそうだ。いろいろな言語での翻訳版も、言語によって、文学に分類されたり、哲学に分類されたり、金融に分類されたりしているようだ。僕も本を分類で区別したりすることはあまりないので、なんとなく彼の感じていることはわかるし、自分の訳した本がやれ「これは経済学ではない、社会学だ」だの、やれ「読者として誰を想定しているのかわからない」だのと言われると、こいつ頭が悪いんだろうなと思う。誰にあてたとも知れない原書が出版以来数十万部売れていることで、タレブは本に分類などいらないという自分の考えに自信を持ったようだ。実際、『まぐれ』は金融市場のことも古典ギリシャ文学のことも確率論のことも知らない人が読んで面白がれる内容になっている。 僕はそう遠くない将来、最新作の『ブラック・スワン』も翻訳する予定である。内容はやっぱりビジネス本でも金融本でもない。『まぐれ』が金融関係者やビジネス・ピープルにとどまらず、いろいろな人に読んでもらえて、『ブラック・スワン』のときにはいったいどの棚に置いたものかと書店の皆様が困るぐらいになってくれたらと思う。
PR |
|
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |