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Tech-On! 2008/03/28 18:20 藤末 健三 現在、国会では「道路特定財源の一般財源化」と「ガソリンなどの暫定税率の廃止」が議論されています。福田首相は「平成21年度に道路にしか使えない財源を医療や教育などにも使えるようにする」「暫定税率の見直しは、税制抜本改革に併せて行う」と説明されていますが、どうなのでしょう。再来年度などという話は、2年前から「やるやる」と言いながらできていない税制抜本改革と一緒になるのではと危惧しているのですが。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
もし租税特別措置法が成立しない場合、何が起こるかを整理してみました。 1.ナフサなどの免税措置がなくなる これは大きな問題です。プラスチックの原料となるナフサなどへの石油石炭税の課税は、諸外国では例がありません。本来は、税法で課税をなくすべきですが、なんと2年に1回、租税特別措置を行わなければならなくなっているのです。歴史的に言えば、1978年以降、2年ごとに今まで14回も特別措置を繰り返してきました。 具体的な金額でいうと、免税・還付措置併せて年間約1100億円の負担増(平成18年度)となります。同時期の石油化学企業の経常利益でみれば、約4割に相当するのです。もしこの税制がなくなれば、石油化学業界は利益が半分近くになる計算です。そこまで単純ではないでしょうが、石油化学業界の株価が大きく 同じ制度で定められている「農林漁業用A重油(漁船燃料、ビニールハウスの加湿用燃料)」の減税措置もやはりなくなります。これに伴い重油価格が上昇すれば、中小零細農林漁業者の経営を圧迫することは間違いありません。減税額は平成18年度で40億円に上ります。 2.金融マーケットにも深刻な影響 これは新聞などでも書かれていますが、「東京オフショア市場」の「外-外」取引への非課税措置がなくなってしまいます。日本の金融機関が「国外から調達した資金を国外で運用する取引に係る預金などの利子への非課税措置」が、租税特別措置法の不成立によって失効してしまうためです。 この課税が復活した場合、先進国で唯一のオフショア課税となり、東京オフショア市場の規模である約23兆円(負債残高:平成19年9月末)がシンガポール市場などの他の市場に移動することが懸念されます。金融関係者の話によれば、当面は金融システムに大きな影響は出ないが、日本の金融政策への不信が生じ、それは傷としてかなり後まで残るのではとのことでした。 「レポ取引」(外国金融機関等との債券現先取引)に係る利子非課税措置がなくなるという問題もあります。債券現先取引(レポ取引)とは、一定期間後に債券を買戻すことを条件とする債券の売買取引をいい、反復継続して大量に行われる、国際的に定型化された利幅の薄い金融取引なのです。この取引規模は約11兆円(非居住者の買残高:平成19年11月末)となっています。租税条約などで手当てがされているため、本制度が必要な取引は少ないとのことですが、金融市場の混乱が起こる可能性は否定できません。 3.土地売買に係る登録免許税の軽減措置が失効 土地の売買による所有権移転登記に対し、特別措置で1.0%となっている税率が本来の2.0%に戻ってしまいます。この減税額は1660億円(平成19年度)もあり、この減税措置がなくなることで土地取引に影響が出る可能性がでてきます。 このほか、中古自動車販売に関しては、特別措置で引き上げられていた自動車取得税の免税額が下がります。これまでは50万円まで特別措置で引き上げていたのですが、租税特別措置法が成立しないと15万円以上の中古車には課税されることとなります。この減税規模は140億円で、 中古車販売業界(1万1000社、雇用12万4000人)に大きな影響がでることが心配されます。
これだけ各界に大きな影響を及ぼしかねない問題が発生する原因として、よく挙げられるのが衆議院と参議院のねじれ、自民党と民主党の意地の張り合い、調整機能の欠如などです。けれど、その根本的な原因は別にあるというのが私の考えです。すなわち、「本来は税法本体(本則)で対応すべき税制を特別措置としている」こと。たとえば前述の「原料ナフサへの非課税措置」は海外ではすべて恒久措置となっています。これを日本では特別措置として2年ごとに継続しているのです。 このような、企業や産業界に向けた租税特別措置は、実に91項目もあります。そのうち30年以上継続しているものが約30項目もあるのですから驚きです。それほど長期間に渡って必要なものなら、税法の本則に入れるべき。そんな理屈は誰にでも分かります。でも実際にはそうなっていない。なぜなのでしょうか。 誰が考えてもそうなるべきものがそうなっていないとすれば、そこには隠れた理由があるはずです。それを解き明かすために、自身の経験をお話ししてみたいと思います。私は15年前、通産省に在籍し「省エネルギーとリサイクルを促進する特別措置税制」の創設を担当していました。その当時の話です。 税制の改正・継続については、毎年「税制改革要望資料集」というのが作られます。これは各省庁から出された「税制の継続、新設」の説明書です。税制の継続・新設の要望の数は相当あり、資料集だけでも厚さが4,5センチにもなります。役人はこれを「電話帳」と呼んでいます。私たちが作った資料も、この電話帳に入りました。たしかB4判の用紙で数枚の簡単な説明で、税制の対象、仕組み、減税額、経済効果などを書いた記憶があります。
それに関して、私が今でも忘れられない衝撃的な出来事がありました。それは、自民党税調に所属する議員への説明に伺った時のことです。議員会館で、局長と一緒にその内容について説明をしたのですが、その議員が持っている「電話帳」を見ると各ページに「関係する団体からの寄付額」が手書きで書き込まれているではないですか。つまり、○○製品に関する優遇税制の項目には、その製品に関与する○○業界の団体からの寄付額が書き込まれているのです。その額が、優先度などを決める一つの評価指標になっているのでしょう。 これを見てやっと理解しました。優遇措置を多く作り、かつそれを恒久的なものとせず時限的なものにするのは、企業や業界団体の寄付に対するインセンティブを高めるためだ、ということを。優遇措置を作ってもらうためには陳情や寄付が必要ですが、一度できてしまっても、更新のたびに税制継続のための陳情や寄付が必要な仕組みを作り上げているのです。 こうした体質こそが、今回の問題の病巣だと私は考えています。これを根治するためには、「隠れ補助金」ともいえる租税特別措置を見直すことが必要です。そして、長期的に必要なものはどんどん恒久的な措置とすべきでしょう。 海外に目を転じれば、アメリカにも約11兆円の租税特別措置があります。けれど、その内容をみると「恒久的措置とすべきものを意味もなく期間限定としている」といったものは見当たりません。スクラップ&ビルドが徹底されており、機動的に産業政策に使っています。 日本もそうなるべきでしょう。多くの人たちが租税特別措置に関心を持ち始めた今こそ、格差で固定化された制度を組み替える好機だと思うのですが。
藤末 健三(ふじすえ けんぞう) 早稲田大学客員教授 中国清華大学客員教授 参議院議員 1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。05年からは早稲田大学客員教授、中国の清華大学客員教授も努める。 PR |
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