葛飾北斎の浮世絵動画

　1978年にイギリスのアニメーター｢Tony White｣が、
葛飾北斎の名作たちを動かしてみた動画です。

　はっきり言ってクオリティー高いです。
この作品が1978年･････っていうのもビックリしました。
正直、ナレーションが英語ではなく、誰の作品かを言わなければ、
最近の日本の作品と言っても判らなかったと思います。

　実はワタシ、葛飾北斎や歌川広重などの浮世絵古版画･･･
作品のコレクターでもありますので、とてもこういったモノには
興味が非常に沸きます。

　皆さんは葛飾北斎や歌川広重などの浮世絵古版画は非常に高価だと思う
でしょうが、実は、版画の刊行年代や、どの版元で作成されたか、
何枚目程度の作品か･･･等々･･･色々な内容で値段が全然違います。
なので、飾って楽しむ程度のものであれば、２０００円程度で購入できます。

当り前ではありますが、浮世絵古版画は日本の絵の具･･･
露草、紅花、本藍、雌黄などの植物性ですので粒子が細かく、
透明感の強い発色を示します。これが浮世絵古版画特有の色調に
なっているので、とても素晴らしいですよ。

まずは、その辺りから楽しんで戴ければ、人生に彩りが増えるのでは･･･！
購入して楽しめば、一つ一つ、作品について自然と勉強して行く事となり、
とても豊かな気持ちになれますよ！

もし宜しければ、素晴らしい作品をどうぞ｡｡｡

Hokusai An Animated Sketchbook
http://www.youtube.com/watch?v=iOIIfXwiwzs&eurl

葛飾北斎の作品紹介
http://www.youtube.com/watch?v=g3FhFewRCY0

浮世絵ひとくちメモに
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[0回]

『浮世絵ひとくちメモ』

■ 落 款 ■

　浮世絵版画のほとんどには絵師のサイン（＝落款）が入っています。
そしてこの落款は、多くの絵師の場合、年令と共に変化してゆき、そのため、
作品の刊行年代を考える上で、大変役に立つものです。
　では、なぜ浮世絵師の落款が年令と共に変化してゆくのかといえば、
絵師にとっては、仕事が生活そのものだからといっていいでしょう。
今日のアーチストと異なり、浮世絵師の仕事は毎日の労働作業と同じもので、
大工・左官が家を建て、八百屋が野菜を仕入れて売るのと同じこと。
日常生活＝仕事であったからです。今日の画家が美術展の為に、
ある日、ある時間を絵画制作に費やすというのと違うのです。
　ですから、描いた作品に入れる落款は、特に意識した手跡でなく、
無意識的に自然に書いたものとなるわけです。そこに絵師の日常そのものが
表われ、例えば数十年間の制作期間があれば（初代豊国、歌麿、国芳、国貞etc.）、それに応じて落款は自然な変化を作品の中に残すというわけです。
その自然さ故に浮世絵師の落款は、絵師の画風の変遷とともに、
研究調査の重要な手がかりとなるというわけです。
 

■ 絵の具 ■

　浮世絵版画の色調は鮮やかでいて落ち着いた感じのするものですが、
これは使用された絵の具に依る所が大きいのです。
露草、紅花、本藍、雌黄など、主要な絵の具は植物性のものです。
これらは粒子が細かく、ばれんで摺り込むと和紙の裏側にまで浸み込んで、
透明感の強い発色を示します。
これが浮世絵古版画特有の色調になっているのです。そしてもうひとつ、
これはほとんど知られていませんが、この、粒子が細かい植物性の絵の具は、
ばれんで摺っても版木の磨耗が少なく、大量販売を目的とした浮世絵版画の
性格にとても適したものだったことがあります。
　つまり、実用とか機能性を考えて採用された絵の具が、独特の美的効果を
生んだという所に、民衆芸術としての浮世絵版画ならではの良さがあるのです。
　お手持ちの浮世絵版画を改めてそのつもりで見直してください。きっと違った
感興が湧いてくるでしょう。

■ 画 帖 ■

　江戸時代、浮世絵版画の多くは、「画帖」と呼ばれるアルバム形式の冊子に
貼り込まれて保存されていました。
この中には通常数十枚から100枚の浮世絵版画が貼り込まれ、
中には裏表貼り込まれて200枚にも及ぶ画帖もあります。
こうして貼り込まれた作品はほとんど陽にあたりませんから、
色があせない状態で100年200年と伝えられてゆきます。
　しかし残念なことに、この画帖のサイズは浮世絵版画の用紙サイズより
周囲が小さく、ここにいったん貼り込まれたものは、全て周囲がひと回りずつ
切り取られてしまうのです。不思議なことに江戸時代には、画帖の大きさに
合わせて浮世絵版画を切り落としたのです。
浮世絵版画の大きさに合わせて画帖を作るということをしなかったのです。
　※　この貼り込み式の画帖とは別に、糸でとじたとじ込み式の画帖もあります。
この場合は総じて浮世絵版画は周囲を切り取られず、サイズが大きいままのものが多いのです。

■ 裏ゆき ■

　「裏ゆき」という言葉を聞かれて、聞きなれない言葉だと思われた方も
多いことと思います。これは、版画を裏側から見た場合の効果を指すものです。
摺りの良い作品は裏から見てもバランスが良く、摺師の気迫が伝わってくる
ものです。例えば保永堂版東海道の「四日市」は、裏から見た時、
木枯らしの吹きおろす様が、表から見た時よりも3倍くらいよくわかります。
つまり摺師のバレン痕が残っていて、これらが全てある一定方向に向かって
働いているのです。この作品につけてあるグラデーション（ボカシ）は、
全て方向性（木枯らしのふきおろす方向）を持たせて摺ってあることが、
裏から見たとき、ひと目でわかるのです。
このような効果の出し方は全く珍しいもので、私は他に同様の例を知りません。
このような摺り方は初摺りの作品にしか行われておらず、後摺り品においては、
ただボカシを入れただけの摺り方になっています。そうした初摺品特有の
摺り方が、版画を表から見た時、木枯らしを実感させることになるわけです。

■ 現 品 ■

 　昨今はインターネットの流行で、画面上の図を見て、あたかも「その作品」を
知ったかのような気持ちで調査・研究を進める傾向がある由、伝聞していますが、これは重大な事実誤認に基づく見当はずれの結論を導き出す可能性を
持っていますので、内心ハラハラしています。
パソコン画面上の「図柄」からは、作品の質感はいうまでもなく、
和紙の手ざわりや漉き目の有無、補修の有無、落款のあと入れ、書き入れ、
色サシ、似顔の彫り替えなどなど、現品を直接手に取ることで初めてわかる
重要な事柄が、全くわからないのです。
この、現品とそれ以外のもの（コピー、図版、フィルム、映像……）との差が
どれくらい大きいかということは、現品を手に持った人にしかわかりません。
　現品を見る（ガラス越しではなく）、現品を手に取って見る、作品の質感を
体験する、裏返して裏面のバレンで摺った痕跡を確認する、といった
手順無しでは、調査も研究もやりようがないのが浮世絵版画の世界なのです。