日本株に年金筋の買い、海外勢の売り姿勢は変わらず

ロイターNEWS　2008年 02月 7日 16:35 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-30215420080207

　７日の東京市場は、日経平均が１万３０００円割れから前日比プラスに転じ、円債や外為市場でもこう着感が広がった。値ごろ感の強まっている株式市場では年金筋の買いが出たとみられ、下値を支えたことも安心感を与えた。

　ただ、海外勢の日本株売り姿勢は依然として根強く、欧米市場の展開次第では、波乱を予想する声もある。

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　＜下方修正銘柄、海外勢の標的に＞

　株式市場では、取引水準がジグザグした。日経平均は午前の取引でいったん、２週間ぶりに一時１万３０００円台を割り込んだ。「戻りが鈍いとの見方から先物に数百枚単位のまとまった売りが断続的に出て、下げに転じた。８日のオプションＳＱ（特別清算指数）算出を控えて、権利行使価格の１万３０００円が攻防の分岐点になっている」（大手証券エクイティ部）という。

　先行きの米国景気や国内企業業績に対する警戒感が強まる中で、業績予想の下方修正を発表した銘柄が売りのターゲットにされている。この日は５日に下方修正を発表したオリックスが連日ストップ安。前日昼に下方修正を発表したバンダイナムコホールディングスも連日のストップ安まで売り込まれた。「下方修正に対する反応が異常なほど大きい。下げのインパクトが強いため、決算発表前の銘柄に買いが入らず、一方でヘッジファンド等からは下方修正の候補銘柄をリストアップしろという注文まで入っている」（外資系証券セールストレーダー）。

　実際、海外勢の日本株売りは継続している。財務省が７日に発表した１月２７日─２月２日の対外対内証券投資によると、海外勢は前週に４４８７億円の日本株を売り越した。

　＜国内の機関投資家、３月期末にらみ鈍い動き＞

　ただ、午後の取引では、買い優勢になった。「値ごろ感からの買いが出ていた」(国内証券）ほか、複数の市場筋によると、年金筋の買いも出て、底堅い展開になったという。

　きょうの相場展開について、ある国内市場の関係者は「確かに下値は堅くなった印象だが、国内の機関投資家の動きは鈍い。このまま２月下旬から３月に入れば、さらに国内勢の売買が薄くなり、海外勢の動向に振らされやすくなるのではないか」と懸念を示していた。

　また、大和住銀投信投資顧問・上席参事の小川耕一氏は「決算を材料にしてカラ売りなどを仕掛ける短期筋のマネーばかりが市場に出入りし、ロングの投資家や個人投資家が手を出せない状況となっている。売りに極端に傾いているポジションがショートカバーに転じるためにはきっかけが必要だが、国内では政策に打つ手が限られている。海外要因頼みにならざるを得ない」と話している。

　＜円債は株価にらみ＞

　円債市場では、国債先物が反落。前日の相場上昇の反動や、日経平均株価が一時反発したことなどで短期筋の売りが先行、財務省が入札を実施している１０年物価連動国債を控え入札を警戒したヘッジ売りが出やすかったことも先物や現物長期債の上値を抑えた。もっとも、全般的には「株価以外は特に材料もない」（国内証券）状況で、先物は株価をにらみながらの動きが続いた。

　市場では「今週に入り行き過ぎた相場を巻き戻す動きがみられたが、やはり米国発の景気後退やクレジット問題に対する懸念は根強いようで、結局（巻き戻しも）ポジション調整の域を出なかった。ただ、金利は低下方向だとはいえ、例えばここから長期金利がさらに１．３％台、１．２％台へと低下していくには、新たな材料とエネルギーを溜める時間が必要だ」(外資系証券の関係者）との声が出ていた。

　また、ある都銀関係者は「国内勢の投資意欲が相当に減退している。米市場任せの相場展開が続き、主体的に動いている向きは影をひそめている」と話す。

　＜弱さが目についた岩田日銀副総裁の発言＞

　日銀の岩田一政副総裁は高知市で講演と会見を行い、米景気の後退リスクに言及し、足元で一時減速している国内景気の回復が遅れる可能性に言及した。ある国内金融機関の関係者は「１月の中間評価よりも、ダウンサイドリスクを警戒する必要があるという思惑につながった。ポジションの傾きによるものかもしれないが、こうした景気後退に言及するような発言に対し、市場は非常に神経質になっている」と述べた。

　外為市場では、ドル／円が１０６円台で上下する動き。海外で欧州中央銀行（ＥＣＢ）やイングランド銀行（英中央銀行・ＢＯＥ）の政策金利決定など関係者の関心が強いイベントが数多く予定されているため、東京市場では全般様子見ムードが強く、取引量も少なめだった。

　市場では、株価が下落するとリスク回避で円が買われる株価と円相場の連動について「サブプライムローン（信用度の低い借り手向け住宅ローン）問題に多少の安心感が出てきた」（都銀）ことなどから「株安で円買いという反応は明らかに鈍くなっている」（別の都銀）という。
（ロイター日本語ニュース　田巻　一彦；編集　宮崎亜巳）