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2008 02,06 13:00 |
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SAFETY JAPAN 2008年2月4日 経済アナリスト 森永 卓郎氏 日本国内で自動車が売れなくなった。昨年の国内新車販売台数は、軽自動車を含めて535万台にとどまり、前年比6.7%減という大幅減を記録。3年連続の減少であり、販売台数のピークだった1990年の777万台と比べると31%も減少している。 車が売れなくなった理由について、評論家や自動車業界は口を揃えて、人口減や若者のクルマ離れだと指摘している。 だが、人口減が原因ということはあり得ない。というのも、減っているのは子どもの数だけであり、車を運転できる年代の人口はけっして減っていないからだ。実際に、2007年の成年人口は、2006年と比較してわずか0.3%だが増えている。だから、人口減が自動車販売減少の理由にはならない。 では、若者のクルマ離れという説はどうだろうか。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
■全国的に見れば車は生活必需品 たしかに、若者にとって車はあこがれのものではなくなり、かつてほど積極的に車を買おうという気持ちがなくなってきたのは事実だろう。 しかし、だからといって自動車を必要としなくなったのかといえば、そうではない。2004年の「全国消費実態調査」において、単身世帯を含む自動車の世帯普及率を見ると、興味深い事実が浮かび上がる。 年収400万円台前半世帯の自動車普及率は78%、年収300万円台前半でも66%もの普及率があるのだ。つまり、かなり年収が低くても自動車を持っていることが分かる。なぜなら、現代の日本において車は生活必需品になっているからだ。 こうした現状に対して、残念ながら評論家の認識は足りない。彼らは東京のような大都会に住んでいるために、全国の実態がよく見えていないのだ。 公共交通の面において、東京はかなり特別な町である。なにしろ、発車時刻も知らずに駅まで行って電車に乗るなんて、地方では考えられない。そんなことができるのも、数分も待てば電車がやってくるからだ。 だが、東京でも郊外まで行けば20分おき、さらに地方に行くと1時間おきというのも珍しくない。そうなると、通勤通学は別として、鉄道が日常の移動手段とはなりにくいのだ。 だから、東京や大阪などの大都市中心部に住んでいる人は別にして、郊外や地方都市に住んでいると、病院に行くにも買い物に行くのにも、車がなくてはどうにもならない。それが、車が生活必需品になっているという意味である。さらに言えば、一家に一台どころか、一人一台という家庭もいまや珍しくない。 よかれ悪しかれ、それが全国的に見た基本的なライフスタイルになっているわけだ。その認識を抜きにして評論することは意味がないのである。
生活必需品であれば、たとえ年収が低くても買わなくてはならない。だからこそ、年収300万円台前半という年収の層であっても、66%の普及率を記録しているわけだ。 だが、生活必需品でありながら、ここ何年も車の販売台数が減ってきたのはどういうわけか。本当に若い人たちが車を買わなくなったのだろうか。 結論を言えば、「買わなくなった」のではない。「買えなくなった」のである。いくら生活必需品といっても、あまりに低所得になると車を買うことはできない。実際、年収200万円未満の世帯になると、自動車の普及率は35%に激減する。 昨年国税庁が発表した「民間給与の実態」によると、年収200万円未満の給与所得者が1023万人と、21年ぶりに1000万人の大台に乗せた。こうした低所得層の拡大が、車の販売不振に結びついているのは間違いない。 それを示す傍証がもう一つある。それは貯蓄率の劇的な減少だ。1970年代に20%台あった貯蓄率が、ここに来て文字通りまっさかさまに低下。いまでは3%になってしまった。 なぜ貯蓄率が減ったかといえば、日本人が享楽優先のライフスタイルに変わったからではけっしてない。そうではなくて、貯金している余力がなくなってしまったのだ。 車の販売台数減少と貯蓄率の低下から、次のようなことが分かる。それは、いままでは貯金を取り崩してモノを消費していたのだが、とうとう蓄えも底をつき、生活必需品である車も買えなくなったということである。
もし、このまま国内自動車販売が減少を続ければどうなるか。外貨獲得のリーダー役である自動車産業が衰退してしまうだろう。自動車は、海外で売れればそれでいいというものではないのだ。中長期の経済政策として日本はだめになってしまう。 こうした現象について、わたしは、構造改革派が天につばした結果ではないかと感じている。 これまで、構造改革派の人たちは、グローバル競争に勝ち抜くためには人件費コストを抑えることが必要不可欠だとして、リストラや非正社員の活用を進めて、平均所得の切り下げを積極的に進めてきた。 しかし、いくら何でも、それをやり過ぎてしまったのではないか。そのために、車が買えなくなるくらい庶民の懐が寂しくなってしまったのだ。 これまで好調だった軽自動車も、前年比5.1%減の192万台と4年ぶりに減少してしまった。その一方で、国産超高級車の「レクサス」シリーズは、前年比11.9%も販売台数を増やしている。 いわゆる勝ち組が所得を増やして高級車をどんどん買っているのに対して、庶民は軽自動車さえ買えなくなってしまっているわけだ。 たしかにレクサスはいい車ではあるが、自動車販売全体の売り上げに対する比率は小さい。自動車業界にとって、レクサスだけが売れても、ほかが落ち込んでしまえば意味がないだろう。 ことは車だけではない。若い人たちはお金がないものだから結婚もできない。30代の非婚率は上昇するばかりである。家庭が出来ないから、ファミリー向けの商品も売れないし、年金も倒れてしまう。 構造改革派が「国際競争力を高めなくては」といくら声高に叫んでも、庶民の懐が寂しくなって消費がさらに落ち込んでしまえば、元も子もなくなってしまう。 「いいかげんにしろ! 構造改革派」――。前年比6.7%減という自動車販売台数の大幅減少は、そうした警告なのではないかと思えるのだ。 PR |
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