米国の経常収支赤字が収縮？？

経常収支赤字が収縮の妙

　米国の経常赤字はGDP比の6パーセントを超え、ジリジリとドルの価値が
下がっていることと重ね合わせれば、次なる経済大国は中国だと小躍りするのが、わが国の新聞であります。

　ところが・・12月に公表された米国の第3四半期の経常赤字は、前年同期比で
10パーセントも低下し、2007年通期でも5パーセントをやや上回る程度の水準に落ち着きそうです。その要因として、輸出が物凄い勢いで伸びています。

　たとえば、工業用の金属、鉄鋼中間財、プラスチック製品、航空機、産業用の
機械や資源採掘関連の機械の伸びが大きいようです。
　さらに自動車輸出も猛烈に増えているようで、コレには日系自動車メーカーも
かなりの貢献をしています。
　これらの輸出品目は、次なる富を生み出すための資本財的な要素が高いため、納期や製品の安定性が重要であり、エンドユーザーの嗜好や市場価格の影響を受けにくいばかりか、為替が多少変動したところで、輸出が減るという性格のものではありません。
　自動車も、1台の車には数万に及ぶ部品が使われておりますので、その国の
総合的な産業力（部品調達を海外に依存していたとしても調達が可能な政治体制であるということが重要）を推し量るうえでは最適なのですが、今や、ビックマックのようなもので、世界中から安くて優秀な部品を納期どおりに集めて加工できることが重要でもあり、その輸出が伸びるということは、貿易の自由度や社会の安定度まで測ることができます。その自動車輸出が増えているんですね。
日本の工作機械メーカーはウハウハでしょう。

　ドル安とサブプライム問題で米国の輸入は減少傾向でありながら、ドル安が
ため・・米国であっても海外に対し、市場を開拓している企業は、かなり景気が
好いのです。

　これらの現象を、「グローバル化」という言葉でくくっていいのか分かりませんが、このところの資源高で、資源国が豊かになり、地域のインフラ（資源開発、道路、
港湾、航空機等、社会資本の整備）に回りだしたことや、冷戦に勝った余勢で
自由主義陣営の企業は世界中に生産手段を移転しましたが、それらが米国の
貿易赤字と跳ね返りながらも、富の途上国への還流を発生させ、途上国におけるさらなるインフラ整備の必要性が生じ始めたこと等が起因していると思われます。それらのための資本財や生産財は、覇権国であり、投資先の状況を良く知る在米企業から調達せざるを得ないのでしょうね。

　つまり・・・みなが心配している米国経常収支の大赤字は、サブプライムによる
内需低迷で輸入も減る見込みですから・・その大赤字がゆえに改善の方向にあるということです。原油高が心配ではありますが・・　

PS
　ホワイトハウスでの情事が明らかになった唯一の大統領「クリントン」・・・
彼は米国の財政赤字を無くしました。一方で、米国は世界各国に財政出動を促し、多くの国の財政赤字を拡大させました。凄い戦略です。
2008/01/12 湖北庵通信より転載

[0回]