2008/01/04『株価材料』PART Ⅵ

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■株価材料

□国際線発着　第三者機関が時刻を調整　ＪＡＬ<9205>から移管
国土交通省は１日、航空機の国際線発着時刻を調整する国際線発着調整業務を日本航空協会に委嘱する。これまでは日本航空（ＪＡＬ）に委嘱してきたが、海外で第三者機関が対応する事例が増え、国際線の競争も激化しているため、国際線発着調整業務の中立化を進める。国際線発着調整業務は、ＩＡＴＡ（国際航空運送協会）の指導のもと、混雑の激しい国際空港で調整を行っている。日本では７０年から、当時は国際線を運航する唯一の国内航空会社だった日本航空が事務局を設置。現在は、成田国際空港と関西国際空港の発着調整を行っている。しかし、日本航空が路線開設や運航時間を事前に知ることができるため、国際線に乗り出した全日本空輸<9202>（ＡＮＡ）や日本貨物航空（ＮＣＡ）から不満の声が出ていた。外国航空会社の日本乗り入れ需要も増え、発着調整の重要性が高まったこともあり、第三者機関による中立化を求める声が高まっていた。

△電気自動車　実用化急ぐ　富士重<7270>、三菱<7211>が０９年発売を表明
自動車メーカー各社が電気自動車の実用化を急いでいる。１回の充電での走行距離が短いことが弱点だったが、技術革新が進み、走行距離が伸びているためだ。地球温暖化に有効な環境対応車として期待され、富士重工業と三菱自動車は０９年の発売を表明した。富士重工業は、軽自動車ベースの電気自動車「Ｒ１ｅ」の実用試験を実施中で、発売時期を従来計画より１年前倒しした。当初は年間１００台程度を企業・自治体向けに販売するが、早ければ１２年に価格を２００万円台まで引き下げる。２００万円台は一般消費者への普及の第一段階とされ、森郁夫社長は「１０年代半ばに年間販売が数万台になれば、１５０万円以下も可能だ」と述べた。三菱自動車も軽自動車「ｉ（アイ）」をベースにした電気自動車を、０９年に日本と欧州で発売する計画だ。１回の充電（家庭で一般的な１００ボルトで１４時間）で走行できる距離をこれまでより約３０キロ伸ばして１６０キロにした試作車を開発した。
日産自動車<7201>も１２年をめどに、日本と欧州に投入する考えを表明した。カルロス・ゴーン社長は「排ガスゼロ、騒音ゼロで、特に都市部でビジネスとして成立する」と期待する。電気自動車は９０年代に一時、開発ブームが起きたが、走行距離の問題で下火となった。しかし、大容量で急速充電が可能なリチウムイオン電池の開発が進み、機運が再び盛り上がっている。地球温暖化の原因の二酸化炭素の排出量は、ガソリン車の４分の１とされる。ただ、走行距離をできるだけ確保するため、実用化されても当面は重量の軽い軽自動車が主体となる見通し。ガソリンスタンドにあたる充電ステーションの整備も課題だ。
トヨタ自動車<7203>とホンダ<7267>は、電気自動車よりハイブリッド車に重点を置く方針。「充電池などで技術的課題も多く、まだ乗用車に適するレベルではない」（ホンダ）という。
（毎日新聞）

△ＴＢＳ<9401>が認定持ち株会社に移行方針、放送と番組制作一本化
ＴＢＳは３１日、放送法の改正で設立できるようになる「認定放送持ち株会社」に移行する方針を固めた。グループの経営体制を強化するほか、敵対的な買収から放送事業を守る狙いがある。改正放送法は２００８年４月１日に施行される予定で、ＴＢＳは６月の定時株主総会で組織再編案を提案する方向だ。移行方針を固めたテレビ局はＴＢＳが初めてで、他局の戦略にも影響を与えそうだ。ＴＢＳは、放送免許を持つ事業持ち株会社制をとっている。傘下にはラジオ局の「ＴＢＳラジオ＆コミュニケーションズ」やテレビ制作会社「ＴＢＳテレビ」、プロ野球の横浜ベイスターズなど３０社がある。これを、総務相の認定を受けた純粋持ち株会社に改める。放送免許は子会社の「ＴＢＳテレビ」に移す。テレビ放送と番組制作を一本化し、経営を効率化するためだ。ラジオ局やベイスターズなども、引き続きグループ内にとどめる。ＴＢＳの関連会社であるＢＳ放送「ＢＳ―ｉ（ビーエス・アイ）」の子会社化も検討する。

△国際争奪戦が激化、農水省が小麦・大豆などの備蓄拡大方針
政府が、輸入への依存度が高い小麦、大豆と、家畜に与えるトウモロコシなどの飼料作物について、現在の備蓄水準を引き上げる方向で検討に入ることがわかった。２００９年度からの実施を目指す。食料自給率が先進国最悪の４０％未満に落ち込む一方、中国やインドなどの新興国での消費が急増、穀物の争奪戦が激しくなっていることに対応する。穀物の備蓄水準は財政難を理由に徐々に引き下げられてきたが、食料安全保障政策を強化する方向に大きくかじを切る。福田首相が本部長を務める「食料・農業・農村政策推進本部」の下部組織「食物の未来を描く戦略会議」（座長・生源寺真一東大教授）が月内に検討に着手し、３月に報告書を取りまとめる。これを受けて農林水産省が具体策を検討する。現在、民間在庫も含め、穀物に応じて年間需要の１～２か月程度に設定している水準を３か月程度に増やす案が軸となる見通しだ。
（読売新聞）

△手ぶらでチャットや会話ができる「ヘッドセット」　ロジテック（エレコム<6750>）
ロジテックは、「ブルートゥース（Bleutooth）2.0」に対応したパソコンでのチャットや携帯電話での会話が「手ぶら」でできるハンズフリーヘッドセット「LBT-HS11xシリーズ」を2008年1月中旬から発売する。従来製品よりもさらに小さく、軽くなった。同製品は、短距離無線通信の技術である「ブルートゥース2.0」の機能を搭載したパソコンや携帯電話と組み合わせて使用する。コードがないため、パソコンから離れた場所でチャットをしたり、携帯電話をポケットに入れたまま「ハンズフリー」で会話することができる。大きさは27ミリ×52ミリ×32ミリと小型で、重さは11グラムと軽いため、手軽に持ち運ぶことができるという。ヘッドセット単体モデルの「LBT-HS110C2」と、USB対応のブルートゥースアダプタが付いたセットモデルの「LBT-HS111C2」の2タイプを発売。後者ならば、ブルートゥース機能を搭載していないパソコンでも使用できる。いずれもオープン価格。
（J-CASTニュース）

△産業維新に挑む・ＩＣＴ業界トップに聞く　ＮＥＣ<6701>社長・矢野薫氏ほか
“第二の開国”が迫られる日本経済。国内を営業基盤にしてきた情報通信技術（ＩＣＴ）業界でも国際プレーヤーとの競争が激しさを増すなど“脱国境”への取り組みが待ったなしで進展。生き残りをかけた戦いが国内外一体で本格化しようとしている。産業維新ともいえる大変革に各社はどう挑むのか。大手３社のトップを皮切りに、主要企業の取り組みをシリーズで聞く。
【ＮＥＣ社長・矢野薫氏「持続的な成長基盤を確立」】
―０８年を展望すると。：「いよいよ３月に次世代ネットワーク（ＮＧＮ）の商用サービスが始まる。本当の意味での“ＮＧＮ元年”といってよい。ＮＧＮは安心、安全で快適、便利なネットワークインフラだ。これまでアイデアベースだった世界が現実となる。まさにＣ＆Ｃ（コンピューター技術と通信技術の融合）の時代が来る」
―中期経営計画を打ち出す好機ですね。：「（半導体など）赤字事業が改善すればそこそこの数字にはなる。しかし、それでは本質的な解決にはならない。当社の経営課題は収益性の改善と成長の回復だ。（今年公表する）中計は持続的な成長と収益性を改善できる基盤づくりに焦点を当てる。そういったＤＮＡ（遺伝子）を持つことが重要なのだ。社員が日々新たな気持ちで頑張れるような会社を目指し、中計で新たな一歩を踏み出す」
―ＮＥＣは戦略のすべてを製品という形に集約する傾向が強いと感じます。新中計も同じようになるのでしょうか。：「当社はテクノロジーカンパニーであり製品が戦略の要となる。シンクライアント（記憶装置を持たない端末）に続き、今年はグリッドストレージ（外部記憶装置）に期待している。同時にＩＴのサービス事業も本格化する年だ。データセンター上にサービスプラットフォームを構築し、企業の情報システムをアウトソーシング（外部委託）で請け負う。その一環でＳａａＳ（ソフトウエア機能のサービス提供）事業も展開する」
―グローバル展開の攻め口は。：「グループ全体で海外に販売売子会社が約２００あり、また中国では３０００人以上のソフトエンジニアを雇用している。海外事業のベースはできているが、事業部ごとに海外進出してきたため現地法人もそれぞれ縦割りになっている。そこに横ぐしを通し、皆で使えるようにする」
―通信分野の市場動向をどうみていますか。：「通信バブル崩壊の痛手から回復へ向かいつつある。典型的なのは海底ケーブルの需要だ。需要の回復に１０年かかるといわれていたが、国際間での通信量の増加によって５年で戻ってきた。主体はユーチューブなどに代表される映像サービスだ。また携帯電話向けのネットワーク需要も旺盛で、各国ともインフラをＮＧＮで再構築しようとする動きが顕著だ。我が社はこの分野で先行しており、大きくビジネスを伸ばすチャンスがある」
―省エネなど環境対応の取り組みは。：「『ＩＴでエコ』をキーワードに環境経営に力を入れてきた。これをもっと前面に打ち出す。植林などのボランティア活動も引き続き力を入れる。ビジネスではＩＴ機器の低消費電力化に加え、空調や冷却設備などフロア設計を含めて総合的に省エネを実践していく。またバイオプラスチックの採用を増やすなど地球に優しいエコプロダクトを徹底していく」　
【記者の目／世界戦略に注目】
矢野体制となり１年９カ月。この間、ＮＧＮを軸とした事業路線に舵を切り、ＩＴとネットワークの融合を加速してきた。その実績を踏まえ近く公表する中計は矢野社長にとって初の成長戦略となる。注目はグローバル展開。通信機器分野では世界市場のうまみと手ごわさを熟知するが、ＩＴ製品ではまだ海外での成功経験はない。この点に道筋をどう付けるのか。国際派経営トップの手腕が問われる。
【日本ＩＢＭ社長・大歳卓麻氏「グローバル経営を訴求」】
―０８年のＩＣＴ業界をどうみますか。：「サブプライムローン（信用度の低い個人向け住宅融資）問題や原材料の高騰など波乱要因がある。そういった問題をいかに早く乗り越えられるかが重要だ。併せて環境変化にいち早く対応し、勝ち抜き、生き残るためには事業を変革せざるを得ない。経営トップは皆、自ら経営モデルを描き、進化させている。ＩＴの活用にも積極的だ。需要サイドの変化がＩＴ投資を支え、底堅くしている」
―昨年１０月にアジア太平洋地域統括（ＡＰ）から外れ、独立した地域子会社となりました。：「意思決定など会社全体の回転が速くなった。米本社との連携も深まり、客先との距離もさらに近くなったのが実感だ。これにならって社内の階層も減らすよう指示を出した。また今年は０６年に掲げた中期経営目標『チャレンジ２００８』の仕上げの年だ。ＩＴ業界のみならず、広く企業モデルのあり方について先導役を担い、その流れを加速していく」
―ＧＩＥ（グローバリー・インテグレーテッド・エンタープライズ）と呼ぶ新たな経営モデルを提唱されています。：「英語３文字では分かりづらいが、客先でもあえてＧＩＥという言葉を使っている。併せてビジネスのサイクルタイムの短縮やグローバル化の進展、株主資本主義へのシフトなどについても説明している。またトーマス・フリードマンが著した『ザ・ワールド・イズ・フラット』を例に挙げて新興国をマーケットとして見るだけでなく人材のスキルなどを踏まえた国際分業のあり方なども訴えている。コストも重要だが、それだけで中国やインドが注目されているのではない。教育水準ややる気も高い。これらを適材適所で活用し、日本は得意分野に経営資源を集中させるべきだ。そうすれば日本人の能力はもっと生きてくる」
―システム開発のあり方も変化していますね。：「プロジェクト管理はアポロ計画で用いた手法をベースにしている。これは手作りを基本としており、新しい手法ではアセット（知的財産）ベースの開発となる。まだ移行期だが、完成すると大きな力になる。我々はオープンテクノロジーを志向し、その道具立てはそろってきた。あとは業種ごとのアセットが充実してくれば広く流通できる」
―省エネ計画「プロジェクトビッググリーン」の実現に向けた方策は。：「ＩＴの進化は半導体プロセスの線幅の微細化にある。ここで常にＩＢＭは最先端を走り、責任も負っている。線幅が細くなれば集積度が上がり発熱する。ＩＴの歴史は熱との戦いだ。これに対し個々のテクノロジーレベルからマシン室や冷却設備などを含めた全体最適を推進する。まさに一大プロジェクトだ」
【記者の目／仕上げの年】
日本ＩＢＭは７０年前に“黒船”として第一歩を踏み出した。旗印に“日の丸”の赤色を打ち出した時代もあったが、グローバル化の進展で状況は様変わりし、０７年１０月以降、“ＩＢＭブルー”の旗を高くかざすことになった。しかし違和感はなく、むしろ力強さを感じる。大歳社長は０８年を「仕上げの年」と位置づける。次期トップへのバトンタッチのタイミングが注目される。
【富士通<6702>社長・黒川博昭氏「内外一体で事業改革推進」】
―足元の景況感をどうみていますか。：「昨年１１月までは順調だったが、サブプライムローン問題や原材料の値上がりなどで先が読み切れない。どちらかといえば厳しく見ているが、通期の営業目標は貫く。何よりも一つひとつの商売をきちんとこなす。リスク管理や投資計画の吟味など内部改革の手も緩めない」
―昨年４月に始動した中期経営計画の手応えは。：「中計では利益と成長を掲げた。達成に向けて全社の行動を根元から変えねばならない。具体策としてローリング予算を試行している。世の中の変化は年度単位ではなく、連続して動いているからだ。年度主義的な考えから脱皮するために、仕事のやり方を上から下まで変える必要がある」
―中計では構造改革も重点化していますね。：「事業ポートフォリオ（中身）をみると、問題点は明確だし、伸ばすべき分野もはっきりしている。ここに強弱をつけるのが経営だ。成長の機会を求めればグローバルへのコミットメントを増やすことも必須となる。３年後に全社売上高の４０％超（０６年度は３６％）を海外で稼ぐ。そのために『日本市場とそれ以外』という考え方を改める」「日本市場もローカルの一つとしてとらえる。その上で広くマーケットニーズから商品を企画し製販一体で責任を持つ体制を築く。ベンダーの論理でモノが売れる時代は終わった。サーバ分野はその顕著な例だ。マシンの上ではアプリケーションが動き、さらにその上にはユーザーごとの固有の業務やリテラシー（読み書きの能力）が載っている。これこそが経営のインフラであり、それを保証しない限り我々の成長はあり得ない。自動車業界でいう（チーフエンジニアといった新車開発で幅広い責任と権限が与えられている）『主査』のような役職を設置し、新たな取り組みを始める」
―半導体投資をどう考えていますか。：「中計では原則、自分たちで稼いだ分を投資する方式に改めており、厳しい規制がかかると考えてよい。半導体事業は変わり目にある。微細化の進展に伴って投資リスクは巨大化し、既存の方程式が成り立たなくなっている。まず生き残るために自分たちが何をしたいかを決め、その上で提携を含めて最善策を考えるよう指示した」
―通信機器事業は。：「海外の光伝送分野ではソネット向けで大きな実績をつくることができた。しかし通信市場の価格競争は激烈で、商売のやり方も変化している。このままでは市場変化の速度についていけなくなると危惧している。開発の初期段階からコスト削減を組み入れた体制でなければ戦えない」
―省エネなど地球温暖化対策も重要です。：「経営層が上から二酸化炭素（ＣＯ２）削減目標を唱えても現場には浸透しない。お題目とならぬように商品やサービスの中に省エネ設計を初めから組み込んでいく」
【記者の目／俎上に載るグループ連携】
「変えることに重点を置く」と標ぼうした新中計が本格的に始動し、国内では子会社への大規模な人材シフトなどでグループ経営を加速。海外では現地法人の富士通サービス（ＦＳ）と富士通コンサルティング（ＦＣ）がそれぞれ買収攻勢を積極化している。内外一体で進む事業改革。０８年は母艦となる本体と、ＦＳやＦＣに中国現地法人を加えた海外船団との連携強化が改めて俎上（そじょう）に載りそうだ。

△０８動く・トップに聞く　日立製作所<6501>社長・古川一夫氏ほか
製品の価格下落、素材高、米国経済の変化―。電機業界を取り巻く環境はめまぐるしく変化している。“オリンピックイヤー”の０８年は家電製品の需要増や中国経済の拡大といった追い風はあるものの、サブプライムローン（信用度の低い個人向け住宅融資）問題の波及による米国の景気後退懸念など先行きは不透明だ。こうした環境の変化に対応、成長を継続するには改革の“常態化”が必要になる。０７年は業績好調だった電機各社も改革の手を緩めるわけにはいかない。主要企業トップに０８年に取り組むべき課題とその解決策を聞く。
【日立製作所社長・古川一夫氏「成長シナリオを遂行」】
―業績回復の手応えはありますか。：「０６年度は少し問題が多すぎた。その解決に手を打った成果が０７年度に出てきた。原子力発電でのプロジェクトマネジメントのミスやタービン事故が大きく影響したが、これらを解消できて電力部門が力強さを取り戻したことは大きい。テレビなど一般消費者向け事業は苦戦しているが、日立建機や日立工機、日立製作所の大規模情報記憶システム（ストレージ）事業などが好調でグループ全体で成長している」
―０８年度が“復活”への正念場です。：「２０１０年に日立は創業１００年。それまでに成長の基盤を築きたい。０８年度から成長シナリオの遂行に移る。社会インフラを中心に具体的な手を打つ」
―ハードディスク駆動装置（ＨＤＤ）事業の取り組みが注目されます。「０７年に日立グローバルストレージテクノロジーズの経営陣を入れ替え、新製品開発も日本の技術陣が支援、拠点のリストラ、生産現場で歩留まり向上に取り組んだ。その成果から現在は黒字基調だ。通年でも０８年度黒字化がターゲットになる。先端技術をいかに早く量産に結びつけるかが勝負。日立の研究所やモノづくりの力を投入して競争力を高める」
―テレビ事業の業績改善も課題です。：「日立はテレビを単なる家電とは考えていない。放送と通信の融合が進む中での“出力機器”と位置づけ、日立の総合力を発揮した製品を出す。情報通信部隊の技術を投入したインターネットテレビの開発など、総合電機の持つアドバンテージは大きいはずだ。テレビは重要だと見なして何が得策かを考え、他社との協力を含めて施策を決めていく」
―電力事業の回復が業績を押し上げています。：「電力部隊は原子力発電のタービンの事故で悔しい思いをした。その思いを持った若い人たちの踏ん張りによって良い方に向かっている。原子力の受注は好調だ。収益への貢献にはまだ時間がかかるが超臨界圧技術を使った石炭火力発電設備も伸びている。原油高の中で石炭の価値は向上している」
―次世代を担う人材は育っていますか。：「日立に入って世界で仕事をする喜びを経験してほしいと考え、意識的に動かしている。グローバルリーダーを育成していきたい」
【記者の目／強い領域への“選択”が不可避】
薄型テレビなど一般消費者向け製品や、ＨＤＤ事業の立て直しための投資が重荷で業績が悪化していた日立。だが、０７年度に社会インフラ事業に投資を回せるようになると、全体の収益性がぐっと改善した。こうした業績の推移から日立が力を注ぐべき分野は何かが読みとれる。強い領域への“集中”でさらに成長性は高められるはず。そのためにもう一段の“選択”は不可避だろう。
【松下電器産業<6752>社長・大坪文雄氏「原価抑えコスト競争力」】
―製造、販売の改革が進んでいます。：「モノづくりイノベーション本部（経営のあらゆる活動をモノづくりに結集させるプロジェクト）を０７年４月にスタートさせ、具体的な成果が出てきた。例えば原価構築活動では、原価の構成要素を鉄板や粉などいわゆる“イタコナ”にまで分解し、分析している。原価低減手法として定着すればコスト競争力がつく」「販売ではＢＲＩＣｓ（ブラジル、ロシア、インド、中国）やベトナムを中心に音響・映像（ＡＶ）機器と白物家電を売り込むため、地域の実情に合った販売政策を打っている。ある国では前年比２０％増の計画をはるかに上回っている」
―０７年度上期は北米市場の収益が前年同期を下回りました。下期の見通しは。：「第３四半期（０７年１０月―１２月）、年末商戦と持ち直している。流通政策が実を結んできた。北米は購買層が幅広い。これまで大手量販店との関係構築を進めてきたが、中堅量販や地方の流通網まで間口を広げている」
―日本ビクター<6792>が連結対象から外れて売上高が４７００億円減少しましたが、０９年度目標を当初から変えていません。：「全社員が自分たちの努力で０９年度目標の１０兆円（０７年度見通し８兆７８００億円）に挑戦することが基本方針。それが難しいということになれば、その手当てを考えておかねばならない」
―地域別の利益水準は国内が圧倒的に高く、海外は軒並み低いです。：「国内の利益率が高いといっても、まだ十分な水準ではない。ただ海外は国内以上に伸ばす必要がある。海外拠点は撤退基準を明確にし、低収益の拠点を減らす。ＢＲＩＣｓなど成長地域で的確な販売政策を打ち、生産体制も強化する」
―キャッシュ（現金）をどう活用しますか。：「Ｍ＆Ａ（企業の合併・買収）や株主還元策に投じる方針だ。Ｍ＆Ａは自分たちが目利きの分野でないと難しい。強いところをさらに強くする、あるいは手薄な部分を補完するなど、いろいろな狙いがあり得る」
―中期計画の達成に向けて社員の意識をどうみていますか。：「われわれが目指すのは“グローバルエクセレンス（国際的な優良企業）”への挑戦権。目線をさらに上げる必要があり、緊張が一瞬でも緩めば計画達成はありえない」
【記者の目／モノづくり力で変化に対応】
中期計画「ＧＰ３」初年度の０７年度上期は増収増益となり、狙い通りの成長に向けて歩み出した。ただ「０９年度に売上高１０兆円、株主資本利益率（ＲＯＥ）１０％」と高い目標を掲げるだけに、わずかな後退も許されないことが社内に緊張感をもたらしている。中期計画の遂行で目玉となるのは「モノづくりイノベーション本部」だ。メーカーの“足腰”といえるモノづくり力を鍛える活動が、外部環境の変化に耐える強さを生み出すのか注目したい。
【ソニー<6758>社長兼エレクトロニクスＣＥＯ・中鉢良治氏「質高めもう一段成長」】
―エレクトロニクス部門の業績は急回復しました。：「商品がそろってきた。“顧客視点”での商品企画が実を結び、商品力が高まった。有機エレクトロ・ルミネッセンス（ＥＬ）など“ソニーの魂”のような技術が織り込まれた製品や開発を公表して“技術のソニー”を訴求できた。サプライチェーンマネジメントの運用も順調で在庫は適正水準だ。復活の条件とした商品力、技術力、現場力の強化が進んだ」
―商品力を高めた要因は。：「トップマネジメントが商品に目を向けた。また、本当の意味の顧客視点とは何かを社内で議論した。製造業が顧客視点を失ったらどうなるのか、さまざまな場で話した。『お客さまから給料をいただいて成立しているのがＢツーＣ（対消費者）モデルだ』ということを実感すべきだ。自己満足な製品は出さない。これが理解されてきた」
―期待の薄型テレビが薄利多売の状況です。対策はありますか。：「需要は確実に拡大している。この旺盛な需要に応えていかにして供給するかが先行している。生産体制をどうするか、利益を出すにはどうするかの対策が遅れている。ソニーでいえば、欧、米、日、アジアの４極でブラウン管テレビを製造して供給してきた。だが液晶は（サムスン電子との合弁会社がある）韓国の一極だ。現在はビジネスの移行期であり、効率化は完全でない。そうした複合的な問題でいまは“数字”をつくれていないが、液晶テレビは健全な事業だ」
―テレビではどんな差別化が考えられますか。：「単なる受像機にはしない。双方向のインフラが整備されてさまざまなサービスが実現する。ほかのデジタル機器と接続でき、離れた部屋で同じビデオが見られるなど、新たな楽しみ方を提供できる。本当のデジタル時代の家電製品やサービスを提案していく」
―０８年には新たな中期計画が始まります。：「次の成長は、今まで来た成長の道とは違う。質が成長基盤をつくる。量を作れば質が高まるのではなく、質が量をつくるという考えを浸透させたい。質を高め、もう一段成長するために０８年は品質や環境対策、コンプライアンスなどのインフラを整える。“負け組”と言われたところから第一集団に追いついた。だが、まだ集団の最後尾にいる。これから先頭を目指す」
【記者の目／魅力的な製品の継続供給が課題】
業績低迷に伴い、「技術力が低下した」などソニーの技術陣のプライドを傷つける言葉がメディアで踊った。有機ＥＬを世界で初めて製品化した際に、中鉢社長が「技術のソニー復活の象徴」と繰り返したのは技術者としての意地であり、社内に向けたメッセージでもあった。活力を取り戻したソニー技術陣。本当の復活は０８年以降、魅力的な製品を継続して出せるかにかかっている。

△ネットワークがクルマを変える－制御、「機械」から「電子」へ
ネットワークの進化がクルマを劇的に変えようとしている。「走る」「曲がる」「止まる」だけが求められていた時代は終わった。これからは「つながる」がクルマの利便性を飛躍的に向上させる。国内自動車メーカーは、次世代の車載通信ＬＮＡ規格の導入に向け「協調と競争」を打ち出した。一方で、高機能カーナビゲーションシステムの登場や車外との無線通信によって、まったく新しいサービスが生み出されようとしている。ドライバーはネットワークという「見えない技術」をどのように享受できるのか―。
この１年、東京・お台場のある会議室に毎週、トヨタ自動車<7203>や日産自動車<7201>などの技術者が集まり規格づくりにいそしんだ。この会議の主催者は「ＪａｓＰａｒ」（ジャスパー）という車載システムの標準化団体。

△素材業界０８年を占う／鉄鋼、非鉄、化学
資源高騰、ＢＲＩＣｓ（ブラジル、ロシア、インド、中国）諸国の勢力拡大、世界的な企業再編、地球温暖化対策―。さまざまな問題を抱えながら、素材業界も新しい年を迎えた。０８年は北京五輪が開催され、中国市場は一段の成長加速と、それによる反動が見込まれる。また、米国では大統領選挙があり、政権交代が起きれば、世界の産業界にも大きな影響を与えそうだ。こうした中、鉄鋼、非鉄、化学、繊維の各産業にとって、０８年はどのような年になるのか。各担当記者がこの１年の最大のトピックスを大胆に占った。
「高炉建設など上工程からの海外生産を考える時期に、日本の鉄鋼業も来たのではないか」―。日本鉄鋼連盟の馬田一会長（ＪＦＥスチール社長）は昨年末の会見で、海外進出について、より踏み込んだ発言をして注目を集めた。

△素材業界０８年を占う／合繊
合繊業界を取り巻く０８年の外部環境は厳しいといえ、特に原燃料価格の高騰・乱高下は収益圧迫要因として重くのしかかる。また海外売上高比率の高い各社は、サブプライム問題を背景とした米国景気の動向も気になるところ。とはいえ中国やロシアなどの新興国の経済発展は著しく、国内景気も緩やかな上昇基調が予想される。コストアップ要因を価格転嫁やコストダウンで吸収し、新規事業をいかに立ち上げていくか、難しいかじ取りを求められる１年になりそうだ。８月に開催される中国・北京オリンピック関連で、合繊業界では“特需”といえるほどの需要拡大には至っていない模様。
しかし、東レ<3402>とクラレ<3405>は得意分野でオリンピック開催を支える技術を提供している。東レは北京オリンピック関連施設の排水処理プラントに、メンブレン・バイオ・リアクター（ＭＢＲ）用浸漬膜を納入。

△０８年、食品値上げ本格化－価格交渉せめぎ合い
０８年は食品の値上げがいよいよ本格化する。原料価格の高騰に歯止めがかからない中、０７年に値上げに踏み切ったメーカーも多い。各社ともコスト削減策を進めてきたものの、「原料高を吸収しきれない」というのが共通の声。食品に加え、ガソリンや灯油、日用品など生活必需品の相次ぐ値上げは家計を直撃し、消費の冷え込みを呼ぶ可能性があるだけに、小売り側は安易な値上げには慎重姿勢。メーカーと小売りの価格交渉が加速する０８年の「食品の値段」の行方を“値上げ後”のある青年の一日とともに占う。
朝食は決まってパンと牛乳。柔らかい食感が気に入っている食パン「ダブルソフト」も最近、値上がりした。原料高を受け、政府が小麦を製粉会社に売り渡す際の価格が１割上がった影響で、パン全体が値上がりしているようだ。

△開発進む高機能産業施設－人・モノ・環境にやさしく
環境保全や耐震性に優れた物流センターなど、高付加価値の産業施設が脚光を浴びている。７月に開催される北海道洞爺湖サミット（主要国首脳会議）で「環境」が主要テーマの一つになるなど、二酸化炭素（ＣＯ２）削減をはじめとする環境負荷の低減が産業界共通の喫緊の課題となっているだけに、施設面からの取り組みも進み始めた。また、ゼネコンでは大規模地震などを想定した緊急時企業存続計画（ＢＣＰ）を前面に出した産業施設の建設提案に力を入れる。０８年は人・モノ・環境にやさしい施設建設が一層加速しそうだ。
日本と海外を結ぶ国際物流が活発化する中、大都市圏で空港や港湾などの機能強化が進められている。２０１０年は成田国際空港の滑走路延長や羽田空港の再拡張に伴う空港機能強化もあり、航空貨物は大幅に増加する見通しだ。

△議定書約束期間スタート－地球温暖化防止へ新たな一歩
０８年―。地球温暖化防止へ向け世界は新たな一歩を踏み出した。先進国に温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書の約束期間（０８年から２０１２年）に突入するとともに、その先の２０１３年以降の枠組み作りでも世界は大きくかじを切った。７月の北海道・洞爺湖サミットで日本は議長国として、低炭素社会の実現へ向け具体的な道筋を付けなければならない。環境立国としての真価が問われる一年だ。
政府は、日本の温暖化対策の基本方針となる「新・京都議定書目標達成計画」を０８年３月にも閣議決定する。０８年から２０１２年の間に温室効果ガスを９０年度比６％減らさなければならない日本。
（日刊工業新聞）

△晴れ着ペコちゃん　２００８年“新生”不二家<2211>へ一歩
３１日、東京・銀座の不二家数寄屋橋店の店頭では、ペコちゃんが晴れ着で客を迎えた。新年の準備で銀座の街を慌ただしく行き交う人々も、かわいらしい姿に思わず足を止めていた。０７年は年明けから食品不祥事に揺れた不二家。
桜井康文新社長のもと、４月には山崎製パン<2212>の傘下に入り、再建を開始。山崎パンの焼きたてパンを提供するベーカリーカフェ業態への一部転換など、新たな取り組みに着手した。例年、大みそかは年始の贈答用や家族へのお土産にケーキなどを買い求める客が多く、数寄屋橋店は３１日も「例年並みの売り上げ」という。同店の菊地文子ショップマネージャーは「（事件後の復活を）ペコちゃんが助けてくれた。再開後に来店してくれた多くのお客さまの期待を裏切らないよう、新しい年もペコちゃんとともに頑張りたい」と誓った。
（FujiSankei Business i）