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このままでは成果主義で会社がつぶれる Nikkei Business 2007年12月10日 月曜日 鶴岡 弘之 アンケートの結果は、予想を大きく上回るものだった。良い意味で上回ったのではない。予想以上に“ひどい状況”であることを示していたのだ。 1990年代後半以降、多くの日本企業が人事評価制度に成果主義を導入した。成果主義型人事制度は、当初から「社員のモチベーションが低下する」「人材が育たない」など様々な問題点があると指摘されていた。1993年にいち早く成果主義を導入したものの、多くの問題が噴出し、見直しを余儀なくされた富士通のケースは有名だ。 しかし日本企業が成果主義を導入する流れは止まらなかった。今や上場企業の8割以上が、何らかの形で成果主義に基づいた人事評価制度を運用していると言われる。米国生まれの成果主義は、結局、日本にしっかりと根を下ろしてしまったようだ。 日経ビジネスオンラインでは本特集を作るに当たり、成果主義を取り入れた会社の現状を知るために、読者アンケートを実施した。アンケートは、日経ビジネスオンライン上で質問に答えてもらう形で行った。土曜日、日曜日を含む4日の間に、1000人以上という予想を超える人数の読者から回答をいただいた。 アンケートでは、成果主義に対する読者の皆さんの“実感”や“生の声”を集め、成果主義の問題を改めて明らかにしようという狙いがあった。だが、日本企業が成果主義を取り入れるようになってから、かなりの年月が経つ。企業によっては10年近く成果主義を運用しているところもある。多くの読者は、成果主義に問題があることを承知しながらも、結局はそれを受け入れ、何らかの形で折り合いをつけているのではないかと半ば予想していた。 しかし、実態はそんな生易しいものではなかった。アンケートの結果からは、成果主義が社員に重くのしかかり、やる気を低下させ、成長の機会を奪っている実態が浮かび上がった。中には「成果主義を導入したせいで、おそらくこの会社はつぶれる」というショッキングな声まであった。今回の記事では、読者の皆さんにご協力していただいたアンケートの結果を報告する。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
■やる気が失せ、成長にもつながらない アンケートではまず、成果主義と「仕事へのモチベーション」の関係を聞いた。「成果主義に基づいた人事評価制度は、あなたの仕事への意欲に影響を与えていますか?」と聞いたところ、「意欲を高めている」人は18%、「意欲を低めている」人は41.4%、「特に影響を受けていない」人は40.6%だった(回答者数は1082人)。意欲を低めていると答えた人は全回答者の半数以下だが、意欲を高めていると答えた人よりも2倍以上多い。 次は成果主義と「自らの成長の実感」との相関である。「決められた期間における目標達成度(成果)を評価されることは、あなたの成長に結びついていますか」という質問だ。これに対して「結びついていると思う」人が25.5%、「結びついていないと思う」人は59.2%だった(回答者数は1135人)。約6割の人が、決められた期間の成果を評価されることは、自分の成長に結びついていないと答えた。 「自分の評価への納得感」も聞いた。「成果主義に基づいた人事評価制度において、あなたは自分への評価に納得していますか?」という質問に対して、「納得している」人は17.3%、一方、「納得していない」人は50.1%もいた(回答者数は1084人)。約半数の人が、自分への評価は適切ではないと考えている。 そもそも「成果主義」という言葉に反応してアンケートに答えようという時点で、おそらく成果主義に好感を持っている回答者は少ないと思われる。それは確かに差し引いて考える必要がある。だが日経ビジネスオンライン読者の皆さんは基本的に仕事の情報収集に熱心で、成長への意欲が極めて高い人たちのはずだ。そうした人たちの多くが成果主義は自分の成長に結びつかず、自分のやる気を低下させていると答えている。やはり成果主義には大きな問題があると言わざるを得ない。
アンケートでは「(成果主義に基づいた)あなたの会社の人事評価制度にはどのような問題点があると思いますか」と問いかけ、自由に記してもらった。この質問に対しても予想を超える数の書き込みがあり、導入当初から指摘されていた成果主義の様々な問題が、現実の形となって噴出していることが分かった。その中からいくつかの声を紹介しよう(文意は変えないようにして、編集部で表記や表現を直した部分がある)。 まず、仕事のプロセスやチームワーク、長期的目標の軽視につながるという意見が多く見られた。例えば次のような声である。 「数字でしか評価せず、顧客との信頼関係や他部署とのネットワーク等、業務を進めるうえで大事だと思われることについては全く評価されない。数字を稼げることは確かに大事だが、数字だけが一人歩きしている気がする」 外資系企業では、日本的なチームワークの良さが失われたという声もあった。 「今までチームワークで仕事をしてきた。全員で力を合わせて1つのことを成し遂げ、苦労を共にし、喜びを分かち合い、成果は全員で分配してきた。 また、成果主義の目標管理制度では短期的な成果ばかりに目が行ってしまうという弊害がよく指摘される。それを裏づける声も多く見られた。 「高い目標に向かってモチベーションを上げて取り組む思想が皆無になってしまった。みんな目先の小さな目標の達成に躍起になっている」
「評価方法に問題がある」という意見も多かった。つまり「評価基準が曖昧である」「上司が部下を好き嫌いで評価している」「評価者の実力が不足しているため目標を示せないうえ、評価も適切に行えない」といった声が寄せられた。そのことが大きな理由となって、半数の人が自分への評価に納得していないという結果につながっているのだろう。 「結局は人が評価するものであり、定量的な目標ならまだしも、定性的な目標は上司の主観が入る。達成していなくても、上司がよしと認めればよい評価がつき、いくら頑張っても外的な要因により達成できなかった場合、評価する上司によって評価の結果は違ってくる」 「相対評価になっている点が大問題であると思う。いくら目標を達成しても、職位(職級)別にAランクは何人、Bランクは何人、と決まっていてはやる気もなくなるでしょう。ほとんどの人がCランクになるのですから。
企業にとって何よりも深刻なのは、人材が育たないという問題だ。成果主義が人材育成を阻害しているという声が多くあった。次のような声である。 「若年層を指導する立場としては、彼らに“考えること”“失敗を恐れないこと”などを重視し、長期的な意味での自己成長をしてほしい。仕事で成果を出すために効率的な方法だけを追求する人間に何の魅力があるのか。成果主義は近視眼的で機会主義な人物を養成してしまっている元凶に思える」 「若手や新人を教育する際に、彼らに結果だけを求め、かつ指導する側も自己の成果にこだわるあまり、教育の中身が中抜けになりがちである」 人が育たない企業に将来の成長戦略は描けない。極論すると、その企業には将来がないと言っても過言ではない。だが、多くの日本企業が導入した成果主義には、中長期的に人を育てるという観点が抜け落ちていた。 慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科の高橋俊介教授は、かつて日本企業が競うように成果主義を導入した際に、人事戦略コンサルタントとして数多くの企業から相談を受けた。「本来の成果主義は、仕事の成果に応じて報酬に差をつけることで、仕事に対するやる気を高めてもらうもの。だが、相談を受けた企業の中にそういった狙いで導入しようと考えていたところは1社もなかった」と言う。
では何のために成果主義を導入したのか。「90年代半ばから企業の中で45歳以上の社員の比率が増え始め、多くの企業は“このまま年功制で賃金を支払っていると人件費倒産する”という危機感を抱いた。そこで、人件費削減策を早急に実施しなければならなくなった」(高橋教授)。企業はその対策としてリストラを進めると同時に、人件費抑制策として成果主義を導入した。 アンケートでも、そうした成果主義導入の狙いを見透かした声が多く寄せられた。 「目標や昇格用件などが全く不明確であり、成果主義という言葉だけを取り入れただけで、その実は人件費抑制だけだった」 「客観的な数値に基づくものではなく、上司の主観的な判断に基づくものである。給料を下げるための手段としか思えない」 日本企業が導入した成果主義は、当初から組織を活性化しよう、社員の成長に役立たせようという狙いはなかった。人件費抑制が最大の目的だから、給与を減らすための目標管理制度にばかり重点が置かれることになる。 人事戦略コンサルティングを手がけるIBMビジネスコンサルティング サービスの三巻由希子・ヒューマン キャピタル マネジメント サービス担当 パートナー/執行役員は、同じ成果主義型の人事評価制度を運用しながらも、日本企業は欧米企業に比べて社員のスキルマネジメント(能力管理)が極めて手薄だと言う。「日本企業は、成果の評価ばかりに多大な労力をかけている。本来はその数倍の労力をかけて社員の能力管理に労力を費やすべきです」(三巻氏)。そのことによって、一人ひとりの社員の成長を正しい方向に導けるし、全社的に適正な人材配置が可能になるからだ。 日本企業の成果主義が様々な問題、特に人材育成面で深刻な問題を抱えていることは間違いない。「とはいえ、全社員に対して同じように処遇をする、かつての年功序列的な人事制度に戻るわけにはいかない。成果主義というツールをいかにうまく使いこなすかが重要。成果主義に人材育成という観点を付け加えて、よりよい形で運用していくことを考えなければならない」(三巻氏)。 後編(12月17日公開予定)では、独自に成果主義を見直し、人材育成につなげようとしている企業の例として、日産自動車、住友商事、積水化学工業の取り組みを見ていく。
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コメント |
サイトのレイアウトを変更した見たいですね。
12月らしくていいですね~(~_~) 成果主義に私も翻弄された1人です。 確かにモチベーションも下がりますし、 人件費は下がりますが、リスクを伴う可能性の 高いものは避けるようになりますね。 当然人材も育たないので売り上げも落ちる。 人件費が下がって喜ぶのは経営者くらいで それ以外の人は誰も喜ばないというのが わからないのが現在の経営者の状況なんですよね・・・。 これい気づいた人は、今、成果主義をやめようという方向に変わってきてるみたいですが・・・。 現実にイギリスではそれを辞めている会社が多いみたいですね~。 日本はこれにいつ気づくのか・・・ もしかしたら私が生きてる間は気づかないかも・・・。 と、考える日々・・・。 Re:成果主義は・・・
かずひこ 様、おはようございます。CyberBizKizです。
ワタシは結構飽き症なのでレイアウトをX'masバージョンに変更しました。 成果主義は、元々確信犯なのですが、思惑通り本末転倒になりました。 全て経団連・奥田の思惑通り! 例えば、今の派遣の件も、労働組合潰しから仕掛けて派遣移行にする思惑だった、 経団連・奥田でした。日本の経営者は、本当の意味では勉強していない。 薄っぺらな外側だけ理解しているようなものです。 まぁ~歴史で年号と薄っぺらな概要を勉強している受験生と大して変わらない状況 です。勉学手法は変わらないんですねぇ~・・・。。。 |
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