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2012 12,02 12:00 |
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世界的投資家ジム・ロジャーズが語った(1)
ザイ・オンライン編集部は約4年6カ月ぶりに世界的投資家ジム・ロジャーズのシンガポールの自宅を訪れた。4年前には、サービスアパートだった彼の住まいは、今は近郊の高級住宅街の一軒家となっていた。今回から2回にわたって、ザイ・オンラインの独占インタビューによる、ジム・ロジャーズの2013年の世界経済予測、そして投資戦略を掲載する。
ジム・ロジャーズ氏は「投資家」であり、
・・・って事で、一読の価値はあるかと思います。
──大統領選は接戦に白熱しましたが、ついにオバマが再選しました。これからのアメリカ経済はどうなるのでしょうか。 オバマ再選でアメリカの株式市場はネガティブに反応しています。それもそのはずで、オバマがまた大統領になったところでアメリカ経済は良くならないでしょう。 アメリカ大統領なんて、オバマがなろうとロムニーになろうと、大統領の友達だけ景気が良くなるだけで国家の景気が良くなるわけじゃないですからね。 そうなると、これから大統領の友達以外のアメリカ国民はもっと悲惨な状態に追い込まれるでしょう。 過去から学ぶと、アメリカは大統領選挙が行われる年は必ずと言っていいほど財政支出が最大限行なわれるから、そのしわ寄せは選挙の翌年や翌々年にやってくるのです。 過去のパターンから見ると、アメリカは選挙の為の財政支出で4年から6年周期で不況に入る。例えば、2002年、2007年と不況になってきたので、サイクル理論から言うと、次は2013年とか2014年にアメリカは不況に見舞われるはずです。 景気サイクルで見る限り、来年、再来年にはアメリカの景気はもっと悪化するでしょうし、景気が悪化すれば、景気刺激策のために更にドル札は刷られ、債務は膨らみ続けるでしょう。政府が発表する「失業率」の数字も簡単に信じてはいけない。フードスタンプ(アメリカ版の一種の生活保護で食料品との引換券)の発行量は増え続けているのです。 ──アメリカの景気悪化は、世界にどのように波及するのでしょうか。 これから、日本もアメリカ同様に景気は悪化するでしょう。そして、景気の悪化はそれだけにとどまらず、高い失業率を伴う不景気が世界中に波及していくでしょう。 ヨーロッパも経済的な危機、それどころか加盟国がデフォルト(債務不履行)する可能性も非常に高い。これから数年以内に世界的な不景気が始まろうとしています。 スペインは来月にでも債務不履行になりそうなくらい危険な状態ですし、イギリスだって危ないのです。 ただ、この『危機』を投資家として冷静に分析すると、反対側に『チャンス』に変わるんです。それは、株式会社と違って、国家はお金が無くなってくると中央銀行がお金を刷ることができるというところに違いがあるんです。 ──中央銀行がお金を刷るとどうなるのですか? お金をたくさん刷ると、今日1ドルのパンが明日2ドルになったりするわけですから、パン一個という物は同じでも相対的にお金の価値は目減りしているということですよね。 お金の価値が減るということは、物の値段が上がるということです。その物というのは、土地だったり、金だったり、原油だったりという現実的な『モノ』に流れていくんですね。 そう考えると、更なる金融緩和に向かおうとしている今、投資資金の流入先は紙幣から物質、原油、コメ、金や銀などのコモディティ(商品)になります。どんな経済危機でも、投資のチャンスは必ずあるので賢明な投資家ならば、それを見逃すべきではないでしょう。 世界が金融緩和に向かっている今、最も熱い投資先はコモディティです。もともと需要増供給減の為に需給が崩れて物価が上昇してきているのに、金融緩和で更なる物価の上昇に向かうでしょう。 ──それでは、コモディティのなかでもお奨めの投資銘柄は? コモディティのなかでも砂糖や綿花などの農産物が、今、投資先としてかなり熱いです。世界中で農家の高齢化が進み、農家自身が減少してきているのです。 だから、米や砂糖を買うのもいいでしょうし、日本人なら日本の農地を買って農業を始めるのもお金持ちになる近道でしょう。他に、日本人がお金持ちになるとすれば、水源地を買うことでしょう。 日本の隣国である中国は汚染と水源地問題で苦しんでいるので、日本に水源地を買い漁りに来ているのはご存知ですか。これは、日本人にとっても大チャンスで、貴方も水源地を買って中国人に水を売ればいいのです。衰退していくアメリカでは無くて、台頭してくる中国のことをもっと学び、上手に商売や投資をするべきでしょう。 ──コモディティが有望なら資源国通貨も買いですか? もちろんです。資源会社の株を買うのもいいし、資源国通貨を買うのもいい。私は、オーストラリアやカナダのような資源国通貨を今買っているよ。これらの国は、政治が安定しているし、資源が豊富な国ですからね。 ──ところで、ニュースで貴方がユーロを買っていると見かけましたが? それは、リーマンショック後にユーロが異常に安くなったから、リバウンドを狙って買っただけでもう持っていないです。 以前からも言っている通りで、ユーロはそもそも安全な通貨じゃないですからね。現在は、スイスフラン、米ドルと日本円を保有しています。でも、それも資産逃避先の安全資産として保有している訳ではなく、ユーロ等の通貨に対する不信感で、皆が米ドルと日本円を安全だと思い込んでいるからです。 それは事実を反映しているわけでなく、実際のアメリカと日本の経済は最悪の状態で本来なら投資する対象ではないです。 ──それは、短期的な投資では、自分の考えよりも大衆心理を読むのが大事だと言うことですか。 そういう風にも言えます。私はトレーダーのようにタイミングを読むのが得意では無いですが、その代わりに詳細な調査を行って、周囲の人がどういう思い違いをしているかを分析します。 私は、今、米ドルや日本円を安全ではないと知りながら保有していますが、恐らく数年くらいしか持っていないと思います。 5年後には、さすがに世界中の投資家がアメリカも日本も債務がパンパンに膨れ上がっている国だと気が付くでしょう。 アメリカの債務は歴史上最悪で、とてもじゃないけど投資の対象にならない。アメリカ歴史のなかで最悪なのではなく、世界最悪の債務国なのです。 日本は対外債務が少ないにしろ、国民に対する債務が非常に大きいという意味では安全資産だとは言えません。繰り返して言いますが、私は米ドルと日本円を保有しているが安全だからじゃない。皆の安全だという思い込みが解けるころには、私は既にこれらの通貨を保有していないでしょう。 ──それでは、スイスフランを保有しているのは安全資産だからですか? スイスフランを買っている理由は、スイスの国立銀行がスイスフランをユーロに連動させる発表をした為に実力よりも安くなっているからなんです。 私の狙いは、今のうちに割安なスイスフランを買っておいて、将来、スイスフランがユーロとの連動を廃止した時には、一気に強くなるだろうというものです。 似たようなチャンスなら香港ドルにもありますね。香港ドルはドルペッグ制の為にすごく割安なのですが、最近ペッグ制を廃止する声も上がってきています。 その為、香港ドルには投資のチャンスがあるのです。ただしリスクは、人民元が外貨との取引自由になることです。 そうなれば、それまで人民元に代替する兌換紙幣としての役目を担ってきた香港ドルの存在意義が無くなるでしょう。 香港ドルが自由変動制相場になるか、人民元が取引自由になるか、どちらが先になるのか、今はまだはっきりしないので、私は香港ドルも人民元も買っています。特に人民元はなかなか買えないので、「人民元を買いませんか?」という電話があれば、できるだけ買うようにしていますね。 ※ 兌換紙幣 正貨との交換可能な紙幣のこと。一般的には金や銀を指すが、ここでは外国通貨との交換可能であるという意味。
… 次回に続く
ジム・ロジャーズの2013年投資戦略(2) ―新興国に投資する際に必要な条件はありますか? 新興国投資で成功するには、まずその国が原油、もしくは金、鉛などの鉱物か、肥沃な土地に恵まれた資源国であること、そして安価な若い労働力があることが重要な条件です。そして、投資のタイミングとしては社会主義から資本主義に移り変わる時期の国が投資対象として最高のタイミングですね。 ―例えば、どの国ですか? 例えば、ミャンマーですね。数年前から民主化の動きが見えていたので注目してきましたが、最近、私はミャンマーに投資を始めました。 今まで軍に支配されていた資源や市場が民間に開放される方向に向かっています。これは言わば1978年、経済開放に向かった頃の中国のような大チャンスなのです。 イギリスに支配されていた頃、当時ビルマと呼ばれていたのですが、ビルマはアジアで最も豊かな国で、日本や韓国よりも豊かだったのです。それが、1962年に軍事政権によるクーデターが起こって、社会主義国家になってからはあっという間に貧しい国になってしまいました。 あれから50年が経ってようやく軍事支配から解放されたのです。これは、大チャンスです。 ミャンマーは原油や鉱物などの資源が豊かで、7000万人の人口、教育を受けた労働者、安価で規律正しい労働者がたくさんいますので、新興国としての投資条件を満たしていますし、更に社会主義から資本主義に向かう『変化』が始まったという意味でもベストタイミングです。 それに加えて、近隣にはタイや中国などの経済的に豊かな新興国もあるので経済活動の拡張もしやすいでしょう。 ―例えば、ミャンマーのどの会社に投資されたのでしょうか? ミャンマーはまだ株式の取引所が無いので外国人がオープンには株が買えないという困難さもありますが、それでも一社に投資することができました。 それは、シンガポールのSGXに上場しているYomaというミャンマーで不動産や農業、車のディーラーを行っているホールディングスです。 数年前にYOMA.siを0.06SGD(シンガポールドル)で買いました。(2012年11月13日で0.55 SGD --すでに10倍近くに!--)将来的に、ミャンマーでも株の取引所が開かれれば、もっと投資をするチャンスが生まれるでしょうし、外資を惹きつけてますます繁栄していくでしょう。 編集部注: ヨマ・ストラテジック・ホールディングスという、ミャンマーで不動産や農業、車のディーラーを行っている会社で、シンガポール(SGX)に上場しています(ティッカーはYOMA、日本でも楽天証券で取引可能) ―他に注目されている新興国はありますか? 次にホットなのは北朝鮮です。北朝鮮も2500万人の人口を有しているということ、資源国であるという条件を満たしています。 安い労働力と資源は何にも勝る投資先ですし、中国もそれに目をつけて投資を始めています。北朝鮮はほんの数ヶ月前から中国に対して投資セミナーを開いていますので、チャイナマネーを取り込んで経済を拡張させるためにかなり積極的に動いています。 私の予想では、ここから数年で北朝鮮は韓国に合併されて一つの国となるでしょう。そうなることによって、韓国の資源不足が解消され、安価な労働力で競争力のある生産増強が測れるし、北朝鮮にも経済的なメリットが得られます。 この南北二つの国が合わされば人口は7500万人という大きな国になります。それは、日本にとって脅威かもしれませんが、これからこの国が経済開放に向かって行くという事実に目を向けるべきでしょう。 ただし、まだ先日経済開放が始まったばかりなので、投資対象となるような会社もまだ設立されていないので、私自身はまだ投資はしていませんがチャンスはいつも伺っています。 ―中国の指導者が変わりましたが、政権交代によって何が起こるでしょうか?反日運動は中国経済にマイナスに働くのでは? 新しい指導者習近平になっても、これまでの中国の政策と大きくは変わらないでしょう。 私は、中国が次の数十年、世界の大国として君臨すると見ていると著書でも言及しましたが、その考えは変わっていません。 次に世界経済を握るのは、アメリカや日本ではなく、中国でしょう。もちろん、中国は反日運動を起こして中国国内の日本の工場を破壊したりしていますが、それは過去数百年起こってきたように一部の政治家が煽って、民衆は煽動されているだけです。そもそも中国人は日本の文化が好きですし、歌だって、ファッションだって漫画だって、日本のことはなんでもよく知っていますよ。小さな島々のことで戦わずに、中国とは良好な関係をキープするべきでしょう。 ―どのように良好な関係を築いたらいいでしょうか? 中国が尖閣諸島を問題にして争う原因は、そこに原油があると観測されているからです。 もしも原油があるなら、共同で開発して利益をシェアするというのはどうでしょうか。中国の資本を取り入れて、日本が開発をして、そこから上がった収益を中国と分かちあえばいいのです。 そうすれば、お互いWIN-WINの関係が築けるのではないでしょうか。これから台頭してくる大国と、手を組むべきであって、戦うべきではありません。 私は娘たちに中国語を話せるように教育していますが、それは娘達が大人になった時に英語しか喋れず、アメリカで無職にならないようにするためです。 日本人の皆さんも、今、アメリカから学ぶべきではありません。中国から学ぶべき時がやってきたのです。 私の考えでは、娘たちが中国語を話せるようになっておけば、将来、中国人とビジネスをして、親孝行な彼女らは父親の老後を見てくれるようになるでしょう。 もちろん、娘たちは既に投資家で、スイス銀行に口座を持って商品や通貨に投資もしていますが(長女9歳、次女4歳)、私は娘を甘やかすつもりはないですし、将来、中国でチャンスを手にして欲しいと望んでいます。 ―最後に、読者に成功へのコツをお願いします。 投資をする前には宿題をするのが非常に大事です。 まずは新聞を読み、雑誌を読み、貨幣の供給量を調べ、資源の受給も常に知っておくことですね。需給が価格を支配していますから、需給を知っておくことが、全ての物の将来価格を予想するうえで重要になります。 そして、海外投資をする際には綿密な調査が必要ですから、投資先の国には必ず赴くことです。現地のことを知るには、ウェブや新聞だけでは不十分で、そこまで自ら飛んでいかないといけないんですよ。そこが例え、北朝鮮でもです。
そして、忘れていけないのは、週刊ダイヤモンドと、ザイ・オンラインを欠かさず読むことです!(笑) PR |
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