『向月台と月・銀閣寺』  写真：石川賢治
『銀閣　幻の"月の御殿"』（京都の休日２３０）

　金閣寺・清水寺と並ぶ京都の三大人気スポット、国宝・世界遺産の銀閣寺。

　　　　　渋い「侘（わび）寂（さび）」の世界。

しかし、銀箔を貼っているワケでもないのに何故「銀」閣と呼ばれるのか･･･
･･･これ如何に？？

この「銀」閣のなぞは･････

漆（うるし）+白土（はくど）+大量の明礬（みょうばん）+月光 ＝ 「銀」閣

──それは月光に輝く白亜の銀閣だったのです。

建物の壁に残された微かな文様や白い顔料。
さらに最新の研究から、銀閣は将軍が精魂を傾けて建築した
『月見の館』だったことが明らかになってきたのです。

知られざる銀閣の姿を求めて、時空を超えた旅が始まります！

[1回]

◆なぜ「銀閣」なのか？

　地味な木造の建物がなぜ銀閣と呼ばれたのでしょうか？

銀閣寺はもともと足利8代将軍・足利義政が山荘として建てたものです。
建設当初の記録は500年の間に失われ、銀閣の真の姿は謎に包まれてきました。
しかし、4年かけて行った解体修理により驚くべき事実が明らかに。

黒い板がむき出しの壁には、実は大量のミョウバンが混ぜ込んだ白土が塗り込まれ、
さらに彩色が施されていた形跡が見つかりました。
外観は、まさに大量のミョウバン（現代でいう多量のラメ入り）でキラキラと輝く
「白亜の銀閣」だった可能性があるのです。

◆月と銀閣の驚くべき関係

「白亜の銀閣」を一層輝かしい存在にする一つの説があります。
銀閣は「月見のために建てられた」というものです。

最近の研究から、月を愛でるために
凝らした様々な仕掛けが明らかになってきました。

東山からのぼる月の出の方角を正確に計算して建物や池の石を配置、
月の動きに合わせて、銀閣の1層から2層、そして別棟へと延びる
動線を設定していたのです。

月明かりに照らされて妖艶な輝きを放つ白亜の銀閣…。
義政が夢見た究極の「月見の宴」を、豪華CGで再現しました。

そのクライマックスで目に映る光景とは･････

◆義政の二つの顔

京の町を焼き尽くした応仁の乱、
そのさなか政権を投げ出した「無能の将軍」。

そして茶の湯や生け花など日本の伝統文化を生み出した「異能の将軍」。

無能と異能、2つの顔を持つ男。月を求め続けた将軍の、波乱の人生に迫ります。

─…─…─…─

　銀閣をＣＧで再現すると､軒などに赤や緑の色が使われていて､
壁は､白土にはミョウバンを混ぜたものが塗られていて､
ガラス質のラメがキラキラと上品な輝きを見せてくれていました。
銀だと黒く変色するので､この方法がとられたと思われます。

　足利義政は､お爺さまが建てた「金閣」をお手本にしていました。
肖像画を見ると､「金閣」お爺さまは明るい表情･････「陽」
足利義政は､ちょっと暗い表情･････「陰」

「陽」に対し「陰」、「表」に対し「裏」、
そして「太陽」に対して「月」を表現したかったのかもしれません。

　足利義政は、月をこよなく愛したと伝えられています。

ちょうど秋の満月の頃､正面に月が見えるように 「銀閣」 は建てられていました。
「銀閣」は東を向いて建てられています。その先には義政が「月待山」と
名付けた山があります。

　銀閣は「月見のために建てられた」というものです。

最近の研究から、月を愛でるために凝らした様々な仕掛けが
明らかになってきました。
東山からのぼる月の出の方角を正確に計算して建物や池の石を配置、
月の動きに合わせて、銀閣の1層から2層、そして別棟へと延びる動線を
設定していたのです。　

　夕刻６時ごろから『お月さま』のステージが開催されます。

１層（１階）では２０分程度のお月見となります。

そして次は２層（２階）へと場所を移します。
２層の障子戸を開けると､下の池が見えて､その水面（みなも）に
ちょうど月が映っているんです。
そう！２層では直接上を向いて月を愛でるのではなく、
下の池の水面（みなも）に映る月を愛でるんですよねぇ～･････
なんと風流なことでしょう。

そしてこんな仕掛けが！
１層から２層へ移った時刻、６時２０分ごろから池の水面（みなも）に
月が映りだすように池が設計され、
池には月を模した石が一つ置かれていて、月が６時４０分ごろ
この石と重なって光輝くよう設計されていたのです。

粋な遊び心満載です♪

そこから階段を下り渡り廊下を歩いて別邸から眺めると、月と
大量のミョウバン（現代でいう多量のラメ入り）でキラキラと輝く
「白亜の銀閣」を明け方まで眺めることができました。

ほかにも色々と趣向を凝らした『粋な遊び心』があるのですが、
それは動画を観てからのお楽しみにして下さいね。

■写真『向月台と月・銀閣寺』

名著「日本の伝統」（岡本太郎・光文社知恵の森文庫・２００５年）の中で、
岡本太郎は以下のように述べています。

〈銀閣寺の銀沙灘はまったく、だれにも意外なものであるに違いありません。正直にいって、はじめて見たとき、私じしんがギクッとしました。（中略）門をくぐって入ったとたん、目の前に、胸高いところまで盛りあがった白砂のひろがりが、ドカンとたちふさがっています。ところせましといった感じです。古寺とか庭とかいう、尋常な期待でここに来たものは、とまどわされる。しかも、その右がわには、さらに一だんと高くきわだって盛り上がった、白砂のすりばち山が対応してひかえています。庭全体を抱いている東山の木々、そのやわらかく沈んだ緑と、ややあらあらしいまでの砂の白さとは、なにかチグハグな不協和音を発しています。（以下略）〉

銀閣寺の「向月台」（すりばち山）と「銀沙灘」（石庭）は、
その色彩においても、形態においても、
尋常ではない異色・異様な景色を描出している。
正に「チグハグ」、正に「不協和音」。

だがしかし、世界的な芸術家・岡本太郎の眼には、
それが稀有な芸術作品として映るのだから面白い。

ぼんやりと見過ごしてしまうであろう「銀沙灘」の「形状」「模様」も、
岡本太郎が見出した拠点（撮影ポイント）から眺めると、
瞬く間に名作の「絵画」「彫刻」に変貌してしまうといった按配で、
「お見事」という他はありません。

極め付きは、方丈（本堂）縁側から展望する「銀沙灘」と「向月台」、
背後にある月待山とのコントラストが、えもいわれぬ美しさを醸し出します。

白砂ばかりを見ていても解らない。
両者を「同時」の視野に取り込むこと（借景）によって、
初めて浮かび上がる「自然」と「反自然」の対立と統一、
そのもの凄い「風景」に、皆さまも「ギクッ！」･･･とするのでは･････