『夏の衣替（ころもがえ）』（京都の休日２２８）

　汗ばむ前に衣替（ころもがえ）をと、
明けきらぬ梅雨の晴間を窺（うかが）って
しつらえを夏向きに整える。

畳に網代（あじろ）、障子を簾（すだれ）、布は麻へとかえる。

　日本家屋は夏の趣が一入（ひとしお）で、
衣替（ころもがえ）をすると涼しさが家内を透明な空気で満たしてくれる。
内と外とが同化し、外との触れ合いが濃密になる故でしょう。

　その習慣、つまり殊更（ことさら）に暑い夏を過ごしやすくする為の事も、
空調の普及した今は無用の筈だが、視覚による涼しさは近代設備だけでは
代えられないものがあります。
どこからともなく冷たい冷房の風が、網代（あじろ）の上を撫でて通る
ひやっとした心地良さは、佇（たたず）まいの涼しさに
現代の技術を併用した此の上もない贅沢であると思います。

　祇園祭は今日からです。祇園祭が屏風祭りともいわれたのは
鉾町の家々が自慢のそれを、格子をはずした表の間に飾ったからで、
風情のある町並みです。

　祭りのあたり、京都の暑さは本格的になります。
打ち水と衣替（ころもがえ）で活気の増した座敷に祭り屏風を引き回し、
蝋燭（ろうそく）の灯をともす夕暮れ、
風の流れに伝わってくるお囃子の音に、
壊れつつある町の中にもまだ残る「此処は京都」
･･･という思いがする一時です。

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