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2010 11,21 10:00 |
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技術立国・ニッポンに赤信号? リストラされた日本人技術者が作る 10月下旬、早朝の成田空港。追跡チームは、旅立つ1人の人物を追っていた。元大手電機メーカーの技術者Aさん、51歳。行く先は中国だ。 商品企画の部長をしていたAさんは、去年早期退職に応じて会社を辞めた。これから中国の電機メーカーの最終面接にのぞむという。 「当然、日本の中で仕事が見つかれば選択します。しかし、離職から1年経ち、いろいろ企業面接を受けさせていただいたが、ノーというケースが多かった…」 やむを得ず中国へ向かうことを決心したというAさん。このあと厳しい現実に直面することになる。 海の向こう中国に活躍の場を求めざるを得ない技術者たち。その先に何が待ち受けているのか、追跡が始まった。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
海を渡った日本人が開発した家電製品が売り出される――。追跡チームは東京・台東区にある中国家電メーカー「ハイアール」の日本の販売拠点を訪ねた。目にしたのは日本の年末商戦を見据えた新製品・ドラム式洗濯乾燥機。設計、開発、デザインに至るまで、担当したのはハイアールに雇われる日本人だ。 回転するドラムの振動を大幅に低減する新たな「バランサー」は世界初の技術、日本ではまだ実用化されていない。ハイアールは、この洗濯機が「日本人によって開発された」ということをセールスポイントに、品質の高さをアピールし、日本での売上げの拡大を狙っている。 では、中国メーカーで活躍する日本人技術者とはどんな人たちなのか。追跡チームは、労働組合の関係者や人材紹介会社などを徹底調査。ある事実が明らかになった。 リーマンショック、円高の影響を受け、去年以降日本の大手電機メーカーの多くが、正社員の大規模な早期退職に踏み切っていた。その数は合計1万人以上にのぼる。対象にしているのは、半導体や薄型テレビ、白物家電など、国際競争に敗れた部門の技術者たち。中国企業はその人材に狙いを定めていたのだ。追跡チームは、あのハイアールの求人票も入手した。 「冷蔵庫、エアコンなど家庭で使う、いわゆる白物家電の開発者がほしい」 日本メーカーのリストラを“技術者獲得のチャンス”ととらえる中国。そんな構図が浮かび上がってきた。
日本で行き場を失い、中国に職を求めた技術者はいま、どんな思いで働いているのか。追跡チームは中国・青島(チンタオ)にあるハイアール本社をめざした。 東京ドームの30倍という敷地に26棟の工場が立ち並ぶハイアール本社。撮影が許されたのは、本社の敷地が一望できる最上階と商品展示スペース、工場の外観だけ。「急成長の秘密は、中国人の技術力が格段に上がったことにある」と広報担当者が語る。事前に申請していた日本人技術者への取材をお願いすると…、 「無理です。答えられる立場の人が忙しく対応できません。それに、ここにはそれほど日本人はいません」 日本のハイアールと違い、日本人技術者については口が重いハイアール本社。中国国内では、日本人が開発したことをあまり表に出したくないのかもしれない、そう感じた。 その頃、国内の追跡チームは、1週間前に成田空港で見送ったAさんを再び訪ねてみた。中国メーカーでの最終面接の結果を尋ねると、思いがけない答えが返ってきた。 「担当する業務の内容や考え方、組織のあり方をレポートしてください、という宿題がありまして…」 面接と思っていたAさんに待っていたのは、レポートの試験。1週間以内に、ヒット商品を生むノウハウをまとめて提出するよう言われたのだ。 大手電機メーカーで30年、CDプレイヤー、プラズマテレビなどヒット商品を次々と企画してきたAさん。去年、部門の廃止に伴い会社を早期退職、いまだ国内で採用してくれる企業は見つからない。現在51歳。下の子どもはまだ小学生、家のローンも抱える。もはや、30年間で培ったノウハウをすべて中国メーカーにさらけだすしかない。 「最悪の場合、採用されず、ノウハウだけが中国に知られてしまう」 戸惑いを抱えるAさん、レポートの提出期限は5日後に迫っていた。
中国のメーカーのほしがる人材が変わり始めている――。 追跡チームに、新たな情報が飛び込んできた。向かったのは大阪。中国の大手電機メーカーに直接日本人技術者を紹介している男性が取材に応じてくれた。中国メーカーはどんな人材を求めているのか。大手電機メーカーから届いたばかりのメールを見せてもらった。 「液晶テレビの技術者たちをチームごとほしい」 なんと、液晶テレビを開発しているチームをまるごと引き抜けないかと打診していた。 中国メーカーの要求は年々高まり、それに見合う人材を見つけることは極めて難しいという。中国メーカーが力をつけ、トップレベルの技術者以外、興味を示さないというのだ。人材紹介業の男性は語る。 「日本の方はあまりにも甘い。行きゃなんとかなるとか、日本人はもう少し値打ちあるという感覚。5、6年前やったら赤いパスポート、日本人だというだけで値打ちはあったんですけど、もうそういう時代でもなくなってますから」 一体、中国で何が起きているのか。追跡チームが向かったのは、1万社を超える外国企業がひしめく、大連。中国メーカーの本音をよく知る男性が取材を受けてくれた。 李熔峰(リヨウホウ)さんは、大学時代日本に留学。その後日本企業に勤めた経験を活かして、2年前から日本人技術者を専門にした人材紹介ビジネスを展開している。すでに100人以上の日本人を中国メーカーに斡旋してきた。直接、日本人技術者を面接している李さん。厳密な“選別”を行なっていた。 「S」――大学院卒、20年以上ひとつの専門分野に従事 →すぐ採用 さらに、この難関を突破し無事に採用されたとしても、契約の多くは1年ごとの更新。厳しい現実が待ち受けると李さんは言う。 「日本人の技術者の給料は同じレベルの中国人の5倍、6倍。企業にとっては大きい負担になる。企業に新しいもの、技術・経験をもたらすことができなければ企業もそれだけの対価を出さない。プロジェクトを終了したら契約も終了する。そういうケースが多いですね」 日本の技術者を選び抜き、トップレベルの技術の獲得を図る中国メーカー。成長を続ける中国のしたたかな一面を垣間見たような気がした。
3日間に渡る中国での取材最終日。追跡チームは、ついに日本人技術者を探し当てた。日本の大手電機メーカーから中国メーカーに転職した男性。きっかけはやはりリストラだった。「技術を流出させた」という後ろめたさはまったくない。職場は活気にあふれ、若い頃味わった情熱を取り戻せたと言う。 「僕の知っているノウハウをすべてをさらけ出して、若い人を育てて、彼らでできるようにしたいなあって」 リストラの流れが加速する日本について尋ねると、男性は声を強め答えた。 「やっぱり人でしょ、企業っていうのは。それをゴミくずのように売ったり捨てたりっていうのは企業倫理としてはどうしようもないですね。特に日本なんて資源がない国ですから、人しかないですわね。いまちょっとおかしいんじゃないかなと感じますよ」 一方、中国メーカーへの再就職をめざしていたAさん。11月初め、再び訪ねてみた。結局、レポートを中国メーカーに送ったものの、連絡はいまだ届いていない(番組放送時点)。 「収入がないっていうのが一番。早く何とか次の仕事を決めないと年も越せなくなってしまいますんで。早く何とかしたいなと思います」 技術者たちを切り捨てることで生き残ろうとする日本のメーカー。かつての「技術立国」と呼ばれたこの国の強みはもはや幻想なのではないか、それが取材を終えた私たちの実感だった。 (文:番組取材班 佐々木修次) ※この記事は、NHKで放送中のドキュメンタリー番組『追跡!AtoZ』第56回(11月13日放送)の内容を、ウェブ向けに再構成したものです。 ■□━━━━・・・・・‥‥‥……………………………… 「やっぱり人でしょ、企業っていうのは。それをゴミくずのように売ったり捨てたりっていうのは企業倫理としてはどうしようもないですね。特に日本なんて資源がない国ですから、人しかないですわね。いまちょっとおかしいんじゃないかなと感じますよ」 まぁ~この言葉が全てだったりするワケです。 年配ではあるが、豊富な知識と経験のある技術者たちも仕事が無い。 社会や会社が自己の金儲けだけを優先した結果、こんな社会になってしまった。 さらには、単身赴任なんて、日本独特といってもよい雇用形態である。 一会社に留まらず、日本全体がこうなってしまった。 だからワタシは毎回『社畜』という言葉を使うんです。 だが結局は、日本企業も個人も目先の利益に目が眩みが、 皮肉なことに、身を切る努力をしてまで励んだ結果、 もう取り返すことは無理だろう。 完全に詰んでいる。 行先は目に浮かぶようです。 ・・・で、次はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)なのですね。 PR |
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