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2010 03,16 09:00 |
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日本の「当たり前」が世界で売れる ■工場進出とセットで地元を育てる 積水化学 「明日からリビアに1週間行きます。その後は東南アジアなど。日本に戻ってくるのは少し先ですね」 積水化学工業・水インフラ海外事業部担当部長の仲野雄二氏は、ここ数年、年間約280日海外出張という生活を続けている。そんな仲野氏念願のプロジェクトがついに動き始めた。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
積水化学がリビアで行うのは、水道管の製造・販売だけではない。工場内に人材育成の場を開き、生産技術についての社内教育はもちろん、施工やメンテナンスに携わる労働者の育成にも力を入れる予定だ。「ただ生産するだけでなく、リビアの水インフラ全体に深く長くコミットメントしたいという気持ちをリビアは高く評価してくれた」と伊藤義一・水インフラ海外事業部GRPビジネスユニット長は語る。 積水化学の水インフラ事業は、90年ごろ海外から一度撤退している。展開していた塩化ビニル管が、需要増で世界中に設立された現地企業と差別化できなかった。国内に経営資源を集中したが、市場は縮小の一途。90年代末ごろから海外再進出を検討していたという。 世界中の進出先候補を調査すると「リビアは好条件」(伊藤氏)。政情不安と思いがちだが、米国が06年にテロ支援国家指定を解除して以来、世界の注目を浴びる。 リビアは、世界第9位の埋蔵量を誇る原油など豊富な資源を有し、国民一人あたりGDPがアフリカでトップという豊かな国である。この資金力とカダフィー一族の強い政治力を背景に、インフラへの投資意欲が非常に旺盛なのだ。 そんなリビアの悩みは水不足だ。1984年に発表された大人工河川計画Great Man-Made River(GMMR)は、数万年前に貯まった地下水を汲み上げ、4000キロメートルのパイプラインで国土の隅々まで送るという巨大工事だが、まだ完成していない。 水道は息の長い事業である。地域特性や流量に合う管を選び、上手に敷設し、メンテナンスし続けなければいけない。日本では自治体と企業が協力し漏水率を低く抑えているが、これは世界の非常識。「世界の現場を歩くと、管は良いのに施行やメンテナンスが拙くて漏水している例が散見される」と仲野氏と伊藤氏は口を揃える。GMMRも敷設した管からの漏水が問題のようだ。 リビア進出は決して簡単ではない。税優遇がある外資法の適用を受けるなら、リビア投資庁の審査が必要で、100社超の企業が順番待ちだ。今回、日系の製造業で初の適用となったが、そこへ至る道は決して平坦ではなかった。 積水化学が初めてリビアと接触したのは05年。リビアには大口径の水道管需要がある。積水化学が技術的に競争力をもつGRP(右図)はコストと強度のバランスが良い。大口径管は輸送に向かないため、生産拠点をつくりたいと政府関係者にアプローチし続けたが、そううまくはいかなかった。相手の省庁や事業モデルを数回変更して今回のプロジェクトにたどり着いている。 成就のカギは、先述の「学校」ともいうべきアイデアにありそうだ。営業マンが、世界の現場を歩いた眼で相手の本当の要望を探り、共に解決する。しかもその手法が、日本企業のお家芸、企業内教育の延長にあるなら、実に日本らしいといえよう。 かつてリビアには神戸製鋼所が進出していた。「90年代、国連制裁で日本企業が次々撤退する中、現地日本大使館にかけあって踏み止まった新居哲さんという技術者の存在が、日本に対する信頼感をつなぎ止めた」(仲野氏)。 現在は日本リビア友好協会の副理事長を務める新居氏はこう語る。「日本人には約束したことは必ずやり、できないことは相手と一緒に代案を考える生真面目さがある。契約どおりにしか動かない諸外国にはない強みだ」。 製品の質が良くても買ってもらえない時代。私たち日本人は、失いつつあるかもしれない自らの「当たり前」を、強みとして再確認するところから始めるべきなのかもしれない。
常夏の都市ホーチミン市では、白い帽子を被ったヤクルトレディ70人が、炎天下の住宅街をカートで1軒1軒回っている。2008年にベトナムで販売を開始したヤクルトは、目下、きめ細かな販売チャネル作りを行っている。販売本数が対前年比30%前後の伸びを示し、海外事業の成長エンジンとなっている中国やインドネシア等でも、彼女たちのネットワークが業績を大きく左右する。 新規市場に参入する際、大手飲料メーカーはテレビCMなどでイメージ戦略を打ち出すが、ヤクルトは半世紀前に生み出したヤクルトレディによる宅配を今も販売戦略の軸に据える。というのも、日本では馴染みある乳酸菌飲料も、海外には「乳なのに何で白くないの?」、「酸や菌を飲むの?」と驚く消費者も少なくない。だからこそ短いCMでは伝えきれない、丁寧な商品説明が必要なのだ。 彼女たちの多くが主婦であるのにも、理由がある。「どこの国や地域であろうと、自らの体験を交えながら商品の紹介ができるのは、一家の健康を預かる主婦だからこそ」とヤクルト本社取締役の成田裕氏は、海外でも変わらずこの販売手法に重きを置く。「ご近所付き合いの良い人が商品を売ると信頼感が増すため、コミュニティの繋がりが強い地域では長を務める奥さんにお願いすることもある」(成田氏)と地域性に根ざしたネットワーク作りに気を配る。 ちなみに、プライバシーを重んじる欧州では宅配サービスには難があると言う。ヤクルトレディは、日本のように顔の見える関係を保ち、地域社会に入っていける環境があって初めて成立する。その点、成長著しいアジアを見渡せば、コミュニティは残っており、彼女たちのネットワークもまだまだ広がりそうだ。
アサヒビールの主力商品と言えば、もちろんビール。そんなアサヒが、中国で牛乳を販売しているのをご存知だろうか。 その名も「唯品(ウェイピン)」。日本では当たり前の成分無調整・チルド流通の牛乳だが、中国で一般的に飲まれている牛乳は、高温殺菌したLL(ロングライフ)牛乳という、常温保存のものがほとんどである。つまり、「冷たくても飲める」牛乳は非常に珍しい。しかも価格は市場の2~3倍。しかし、この牛乳が都市部を中心とする、安全・安心志向の高い富裕層を中心にウケているという。 元々ビールで中国進出を果たしていたアサヒビールに舞い込んできたのは、「中国で農業の事業モデルを示してほしい」という山東省書記からの依頼だった。そこで06年5月に、住友化学、伊藤忠と共同で『山東朝日緑源農業高新技術有限公司』(以下『朝日緑源』)を設立。安全でおいしい農作物を中国で販売し、中国の食生活を向上させることなどを目標に掲げている。 ちなみに、中国人富裕層の食への安全志向は非常に高い。日本政策金融公庫水産事業本部が08年に北京と上海で実施した調査では、「日常の食品購入で重視する点」を、「健康志向」と答えた人の割合が全体の91.1%、安全志向は85.2%だそうだ。これは、粉ミルクのメラミン混入問題が起きる以前の調査なので、その後彼らの食品に求める安全性がさらに高まっていることは疑いの余地はない。 朝日緑源は牧場を所有し、酪農を行っていた。牧場でとれる生乳は1日約16トン。それをすべて地元の乳業者に販売していたが、きちんと管理された牛からとれる新鮮でおいしくて安全な生乳を、B to Bのビジネスだけにとどめておくにはもったいない。事業としての付加価値をより高めたいという思いから、商品化を検討し始めた。 牧場でとれたてのミルクを飲む。釣ったばかりの新鮮な魚を刺身で食べる。私たちの普段の生活からも分かるように、日本人は素材の味を大切にし、とれたての状態に近い方が安全かつおいしいという感覚をもっている。食品添加物しかり、「手を加えていない状態」の方が安全という認識とも言える。一方、中国は反対の考えだそうだ。中華料理を思い出していただければ分かるように、食材にはほとんど必ず熱を通し、たくさんの調味料を加える。野菜は生で食べることは少なく、手を加えることによって食品の安全が得られるという文化だと聞く。 現実的な問題としても、広大な国土をもつ中国は、輸送は基本的に常温で行う。さらに、零細農家が多く、少ない牛からかき集めた生乳は品質が安定しておらず、手を加えずに飲むことは難しい。このような事情からも、中国では「冷たい」牛乳を飲むことは一般的ではなかった。 そんな中国の食文化に入り込むというアサヒビールの挑戦。100%自社管理牧場での生乳を使用し、日本では当たり前の冷たい牛乳の製法である、ESL(Extended Shelf Life:賞味期限延長)製法を導入。さらに製造後から店舗まで一貫したチルド輸送を徹底。これにより中国では珍しい成分無調整の牛乳を届けることが可能となった。 上記のように物理的な問題をクリアすると、あとは「実際にどのように広めていくか」ということに力を入れていく。「素材そのものの良さ・安全性・おいしさ」を理解してもらうために、実際に販売店舗での試飲を実施。その際には、「安全」の象徴とも言える「日本企業」であることや、上記のような自社牧場から一貫した生産管理を行っていることまで丁寧に説明していく。さらに、ポップには牧場管理をする日本人スタッフの写真を掲載することで、生産者の「顔」が見えるという安心感を消費者に与える。 試飲時には「冷たいまま飲んでも大丈夫なのか」という声が少なくなかった。しかし、上記のような丁寧な説明を心がけることで、消費者は安心して牛乳を口にする。飲めばやはり「おいしい」「これが本来の牛乳の味なのか」という声が多数だった。中には高価格に多少驚きの声を上げる人もいるものの、価格に匹敵する高度な技術を要する製法であることを理解すると、「それなら納得できる。安心安全にはかえられない」と、購入を決める。初年度の販売数量は年間700トン。稼働日計算で日糧は2トン以上となる。10年は年間850トンを目標とし、現在まで日糧3トンペースで順調に推移しているそうだ。 食文化とは、その国や地域に深く根ざすものであり、そこに入り込むことは容易ではない。しかし、日本のもつ高い技術力をもってこそ可能となる「素材そのものの良さを活かす」という価値観は、アサヒビールの牛乳をもって中国で受け入れられた。現地の農業技術や食生活を向上させたいという思いから始まったこのプロジェクトについて、国際経営企画部のチーフプロデューサー・大西隆宏氏は、「まだ道半ばではあるが、今後は1日あたり16トンとれる生乳のうち、唯品への使用分以外を、自社商品として有効活用していきたい」と言う。「素材そのものの良さを活かした」日本では「当たり前」の食物は、今後も中国人の胃袋を満足させていくであろう。 * * * ここに紹介した3つは、ほんの一部の事例に過ぎない。日本企業が世界で戦うヒントは意外と身近なところにある。 リーマンショックが先進国に深いダメージを与え、今後、国内需要が収縮する一方で、新興国の中間層が大きく膨れ上がっていく見通しを前に、日本企業は今、従来の高付加価値路線と異なるスタイルで新たな市場を切り拓く必要に迫られ、戸惑っているようにも見える。 しかし、心配する必要はない。 自分たちがこれまでに経験してきたことや、日本という地に根ざしていたことで今も残る組織のDNA。当たり前すぎて忘れかけていたものに目を向けることで、ヒントは自ずと見えてくるはずだ。 ◆「WEDGE」2010年3月号 ■□━━━━・・・・・‥‥‥……………………………… 「WEDGE」と言えば新幹線ですね! ・・・で、この記事は、全て成功例が他国であるケースを取り上げて ですが、成功例になるまでの道程は険しく大変だったのを ・・・で、この記事の最後に、 「自分たちがこれまでに経験してきたことや、日本という地に根ざしていたことで今も残る組織のDNA。当たり前すぎて忘れかけていたものに目を向けることで、ヒントは自ずと見えてくるはずだ。」 コレッ!・・・ワタシが何度もブログで言ってきた事ですね。 日本人のDNAが日本企業の極め細やかなサービスを作り上げているって・・・ なのに日本の政府や行政は、日本のソフトを尽(ことごと)く ハードばかり作り、ソフトが何たるかを全く理解できない そろそろ日本固有のソフトに気が付けやぁ~・・・・・ トロン PR |
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