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2010 03,08 09:00 |
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北京を中心に地球が回り始める日 準備せよ、チャイナインクがやって来る 先週、米国のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)で中国関係の面白い評論を見つけた。香港在住の2人の米国人ビジネスコンサルタントが書いた「Get Ready, Here China, Inc. Comes(準備はいいか、中国株式会社が来るぞ)」と題する小論だ。 手前味噌で恐縮だが、「やはり言った通りだろう」というほのかな自負と、「ようやく米国人も気がついてくれたか」という冷めた感慨が筆者の頭の中で交錯した。この手の米国人「中国経済通」にはホロ苦い思い出がある。今回はその話をしよう。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
筆者が「中国株式会社」について書き始めてから、もう4年になる。外務省退職後、ある国際シンポジウムで面白い米国人に出会ったことがきっかけだった。 実にエネルギッシュなその初老の男、以前は有名な米投資銀行のアジア担当副社長だったそうだ。 10年ほど前は東京にも駐在していたが、今では独立し対中投資一本で手広くやっているという。 「本当に儲かるのか、中国は昔の日本株式会社と同じではないのか、規制が多くて大変だろう」。思わず筆者はその経験豊富な銀行家にこう聞いてみた。 答えは予想外だった。「とんでもない、中国は自由だ、規制が多いのはむしろ日本の方だ」と譲らない。そんなはずはない、こう思って筆者は畳みかけた。「共産党の統制は金融にも及んでいるはずだ、中国に自由な経済市場などあるわけがない」 彼の言い分はこうだ。確かに中国にも規制はたくさんあるが、規制のない分野では米側が提案する新金融商品をどんどん認可してくれる。それに引き換え、日本ではこれまで認可されていない金融商品は絶対認めない。だから東京から撤退したのだそうだ。
言われてみればその通りだ。当時の中国は米投資銀行などが駆使する最新金融工学を貪欲に吸収するためか、米系銀行の自由な活動を相当程度認めていたらしい。彼に限らず、米国の金融機関は中国という新開地で大儲けしたに違いない。 「なるほど」と筆者は妙に納得し、その場は黙ってしまった。しかし、一晩寝ると新たな疑問がわいてくる。「中国が自由でぼろ儲けできることは分かったが、儲けはしょせん人民元だろう、ドルに換金できなければ意味ないではないか」翌朝再び彼をつかまえてこう聞いてみた。 男はニヤっと笑ってから、自信たっぷりにこう言った。「その通り、今は換金は不可能だ。しかし、いずれ中国には人民元を自由化させる、しかも大幅に切り上げてからだ、本当の戦略的対中投資とはこういうものだよ」 この一言にショックを受けた筆者は爾来中国の経済金融システムを詳しく勉強するようになった。あの時彼に会わなかったら、このコラムは生まれなかっただろう。4年経った今、どこで何をしているかは知らないが、彼には感謝の気持ちでいっぱいだ。
彼の投資戦略が正しかったかどうかはまだ分からない。しかし、過去数年間に中国が、外資と技術を受け入れて国内産業を強化するだけでなく、海外の市場と資源を求めて本格的な対外投資を行うようになったことだけは間違いない。 冒頭ご紹介したWSJの評論は、こうした「中国株式会社」の経営戦略の変化を踏まえ、中国ビジネスを模索する欧米企業家たちに警鐘を鳴らすものだ。同小論は次のように書いている。 ●海外における中国企業のプレゼンスの拡大は西側企業に対する新たな競争上の圧力となりつつある。・・・中国企業は資本調達コスト、国内の労働力コスト、株主への説明責任の面で外国ライバル企業に比べ優位に立っている。 ●また、中国企業は、進出先途上国との政治的関係を利用して商業上有利な条件を獲得するため、中国の国家資源を動員することもできる。西側企業は、必ずしも純粋に商業的動機だけで活動していない(中国)企業群と競争していることを悟るだろう。 ●こうした中国の投資増大は・・・中国内外の市場で中国企業を強化するだけでなく、国際的舞台でそのソフトパワーとハードパワーの両方を行使するための中国政府および中国共産党のより広範な戦略の一環である。 表現ぶりはまだ稚拙だが、「中国株式会社」の本質はほぼ網羅されている。ようやく米国の中国通ビジネスマンたちもこの点を理解し始めたようだ。冒頭ご紹介した米国人ビジネスマンがこの論評を読んだら、一体何とコメントするだろうか。 過去4年間、中国は人民元を自由化するどころか、切り上げにすら応じていない。これまで外国企業のノウハウを学ぶだけ学んできたが、今度はその知識を自国企業のために活用し、官民一体で海外進出を始めている。 どうやら中国の戦略は、米国人銀行家が考えるより、はるかに強かなようだ。
改めて指摘するまでもなく、中国の海外進出は近年目覚ましい。 WSJの評論によれば、「2009年の中国の対外直接投資は433億ドルに達したが、その投資先はアフリカの天然資源などだけでなく、最近では英国のバークレー銀行、南アフリカのスタンダード銀行、シンガポールのリース会社、バンク・オブ・アメリカ・アジア部門などサービス業に集中している」という。 中国株式会社の投資戦略は、従来のような「製造部門」のための原料確保と市場開拓だけでなく、最近力をつけ始めた「財務部門」を中心とする国際金融ネットワーク作りをも目論む、より包括的なものに進化しつつあるようだ。 そうであれば、金融分野でも米中が衝突するのはもはや時間の問題だろう。既に、オバマ政権は今年の米中間の最大の課題を人民元切り上げ問題に絞り始めたと言われている。 筆者が出会った米国人銀行家の戦略が正しく、中国はいずれ第2の「プラザ合意」を受け入れざるを得なくなるのか、それとも中国株式会社というシステムがその財務体質を一層強化して、しぶとく生き残るのか。 この米中間の勝負、まだ始まったばかりではあるが、一時も目は離せない。 PR |
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