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2009 08,31 17:00 |
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注目されるスウェーデンのマイナス金利 世界初の出来事にしては、驚くほどそっけない発表だった。しかし、スウェーデン中央銀行(リクスバンク)は去る7月、銀行の準備預金にマイナス金利を導入した世界初の中央銀行となり、未知の領域に足を踏み入れた。 日本の金融危機が最悪期を迎えた時ですら、日本の中央銀行は、市中銀行に貸し出しの増加を促すことを狙いとするこうした対策には手をつけなかった。 だが各国中央銀行は、過去2年間の異例の対策からの出口戦略を熟考する一方で、スウェーデンの実験を注意深く監視していくことになるだろう。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
■キング総裁が懸念する流動性の罠 イングランド銀行のマーヴィン・キング総裁は、英国で流動性の罠――現金が銀行システムの中に滞留したまま、裾野の広い経済の中に染み出て行かない状態――が大きな懸念になりつつあることから、スウェーデンを手本にする可能性があると仄めかしている。 日銀が2001年から2006年にかけて量的緩和を実施した時に日本で起きたのが、まさにこのような資金の滞留だった。日本の市中銀行は、中央銀行の刺激策にもかかわらず、悲惨な経済状態を恐れて貸し出しを拒んだ。 ほかの国でもこのような事態が続けば、各国中央銀行はスウェーデンの例に倣う以外ほとんど選択肢が残されていないかもしれない。 RBCキャピタル・マーケッツのポンド金利商品開発責任者のジョン・ライス氏は、「英国の量的緩和実験が成功するかどうかは、銀行が手に入れた余分なカネを個人や企業向けの貸し出しに回すかどうかに大きくかかっている」と話す。 「今後2~3カ月でその兆候が現れなければ、イングランド銀行はマイナス金利を検討するかもしれない。これは要するに、貸し出しを拒む銀行に対する罰金だ」(同氏)
例えば英国では、中央銀行が主に市中銀行から国債や企業資産を買い取ることによって、1400億ポンド近い資金が経済に注入されてきた。 しかし、量的緩和政策が3月5日に実施されて以来、理論的には市中銀行によって企業や個人への貸し出しに使われるはずのこうした資金の多くが、結局は準備預金としてイングランド銀行に預けられている。 市中銀行の預金は、3月初めの310億ポンドから、7月末には1520億ポンドに増加した。 銀行はこのような準備金の大幅増加を民間部門向けの貸し出しを増やすことに使えるため、このこと自体は問題ではない。銀行の準備金が増えれば増えるほど、貸し出しの余力はそれだけ増える。 しかし、銀行が大きく増えた準備金を貸し出しに回した兆候はまだ見られない。貸し出しを示す直近のマネーサプライの数字は依然かなり低迷している。 そのため、キング総裁は先日、四半期インフレ報告書を公表した後にリクスバンクのモデルについて聞かれた時、マイナス金利の可能性を排除しなかった。「それは、準備金に付与した金利を引き下げることで我々の資産購入の効果が高まるかどうかを見極めるために、我々が間違いなく考慮していく考え方だ」とキング総裁は述べた。 総裁の発言は、英国の短期国債の利回りが過去最低水準まで低下し、英ポンドが為替市場で圧力を受けてきた理由の1つだ。
キング総裁は当初、量的緩和に効果が出始めるまで6カ月間の猶予を与えた。9月第1週にその期限が切れる。マネーサプライの数字、とりわけ金融機関を除く重要なM4に効果の兆候が現れなければ、マイナス金利という政策が確かな可能性に見え始めるかもしれない。 欧州では、欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を導入する可能性は比較的低いと考えられている。 これは、他の中央銀行に比べてECBが高い政策金利を維持しており、代わりにマネーマーケット(短期金融市場)のオペを刺激剤として利用してきたためだ。例えばECBは6月末に、期間1年の無制限の資金を市中銀行に供与した。 だがECBも、自らの政策の成否を評価するという点では、イングランド銀行と同じ問題を抱えている。英国と同様、ECBでも市中銀行の準備預金が過去数カ月間で急増している。 現段階では、米国がマイナス金利政策を導入する可能性も小さいように見える。この件に関してほとんど議論が行われておらず、この政策が選択肢であることを政策立案者が仄めかすような動きもないからだ。 預金金利を現在マイナス0.25%としているリクスバンクでマイナス金利を最も熱心に提唱しているのは、世界的に著名な金融政策理論の専門家で、プリンストン大学でともに教鞭をとって以来、米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長と親交のあるラルス・スベンソン副総裁である。 リクスバンクの7月の政策会合の議事録によると、スベンソン氏は、ゼロ金利あるいはマイナス金利に関する「問題を誇張」してきた「ゼロ金利神話」を一蹴した。「マイナス金利におかしなところは何もない」と同氏は述べている。
スウェーデンの銀行スカンジナビスカ・エンスキルダバンケン(SEB)のチーフ債券ストラテジスト、ヘンリック・ミテルマン氏は、過去最低水準となる0.25%へのレポ金利引き下げとマイナスの預金金利の組み合わせは、景気回復が軌道に乗るまで中央銀行が金利をゼロ近辺にとどめておく意向であることを示す、強力なシグナルを市場に送っていると言う。 「リクスバンクがやったことは非常に勇敢だった。彼らは市場がこの政策に対応できるかどうか見ることを決めたが、市場はきちんと対応してきた」(同氏) ストックホルムのダンスケバンクの債券アナリスト、カール・ミルトン氏は、リクスバンクの決定は、一部の人が言うほど先駆的ではなかったと釘を刺す。リクスバンクは、市場の流動性を調整するために日常的に預金金利をレポ金利より50ベーシスポイント低く抑えている、とミルトン氏は言う。 レポ金利が0.25%に引き下げられた時、預金金利は自動的にマイナス領域に入らざるを得なかった。「それは銀行に懲罰を与えたり、銀行に貸し出しを無理強いしたりするために行われたものではなかった」とミルトン氏は言う。 さらに、スウェーデンの銀行は、他国に比べると中央銀行の預金ファシリティをあまり利用しておらず、マイナス金利の影響は限られる。 しかし、リクスバンクは、マイナス金利に纏わるタブーを破ることで、ほかの中央銀行がもっと効果的に利用し得る重要な前例を作ったのかもしれない。ICAPのエコノミスト、ドン・スミス氏は次のように話す。 「スウェーデンの政策は確かに非常に興味深い。我々は何か起きるか様子を見る必要がある。これは確かに極めて異例の政策だが、今は極めて異例の時でもある」 PR |
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