平等院鳳凰堂
世界に類を見ない老舗企業大国ニッポン
R25.jp　2008.07.10
http://r25.jp/b/honshi/a/ranking_review_details/id/110000004513

創業100年超が10万社以上！　日本に老舗企業が多いワケ

　先日ニュースにも取り上げられ、一部で話題にもなったが、日本には現在、創業１００年以上の会社が10万社以上あるという（横澤利昌・編『老舗企業の研究』より）。また、創業２００年以上の会社も約３０００社ある。次いでドイツが約８００社、オランダが約２００社だから、日本がいかに老舗企業大国かがわかる。でもなぜ日本に老舗企業が多いのか？

「日本は極東の島国で、歴史的に見て侵略や戦争の経験が少ないというのがひとつの理由です。蒙古襲来も水際で撃退しましたし。戦乱が続く不安定な国では、商売を続けることが困難なのです。また、日本人は継続を美徳とする価値観を持っています。会社を長く続けることを誇りに思う人が多いし、同じものを作り続ける職人がこんなに尊ばれている国は、アジアでは日本くらいでは？」（アジアの老舗企業状況に詳しいジャーナリスト・野村進さん）

日本の老舗企業の約半分にあたる4万５０００社の製造業を支えてきた職人たちは、伝統を重んじる文化と、織田信長の楽市楽座や江戸時代の徳川幕府に見られるように、時の権力者に守られ、仕事に専念することができたのだ。

そして現在、日本には世界最長寿の企業とされる社寺建築の金剛組をはじめ、創業１０００年以上の会社も7社存在する。では、日本の老舗企業に共通する点とは？

「一族経営の企業も確かに多いのですが、血族にこだわらず、３代目あたりで養子を入れた企業が長続きする傾向にあるようです。『老舗の土台を築くのは、３代目あたりの養子』という言葉もあるほどです。明治32年創業の金箔業者・カタニ産業や、明治18年創業で現在はケータイのバイブレーション機器で有名な田中貴金属などがまさにそうですね」（同）

また、老舗企業の社訓には、「分をわきまえろ」や「分相応」などの言葉が目立つそう。長く続くには、それ相応の理由があるのである。
(平田桃子／verb)

興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック！

[0回]

「エノキアン協会（Les HENOKIENS）」

「エノキアン協会」という団体をご存知だろうか。
　17年前の1992年３月に野村総合研究所が出版した『共生の戦略』の中で
紹介されているので、ご存知の方もいるかもしれないが、
改めて簡単にその内容をご紹介する。

　エノ牛アン協会はパリにある経済団体で、1981年の設立である。
聖書に出てくる永遠の命を持つというエノックという人物にちなんで
名付けられている。
この協会のメンバーになるためには次の３つの条件を満たすことが必要である。

　①創業以来200年以上の社史を持つ
　②創業者が明確で、常にその家系に属し、
　　その家系が現在も実質的に経営する
　③財務的に健全な個人企業または法人

現在、フランス・イタリアを中心にヨーロッパの伝統産業である
ワイン、ガラス製品、宝石などの分野の企業40社で構成されている。

国別の内訳は、イタリア16社、フランス12社、ドイツ4社、オランダ1社、
北アイルランド1社、日本4社、ベルギー1社、スイス2社である。

日本企業4社の内訳は、

・法師 (旅館)（西暦718年創業、温泉旅館業:粟津温泉）
・月桂冠株式会社（1637年創業、酒造業）
・岡谷鋼機株式会社（1669年創業、商社：名証一部上場）
・赤福（1707年創業、和菓子製造・販売）

である。中でも
・法師：粟津温泉（石川県）の旅館。西暦718年の創業で、
　　　エノキアン協会の中で最も古い創業の歴史を持ちます。

　何世紀も存続し、今なお健全な財務内容を
特つこれらの会社には、次のような共通の特
徴がある。
　①危機への創造的な適応
　②オリジナルな品質への限りないこだわり
　③後継者の育成への注力
　④過度な成長、過度なパワーを望まない
　エノ牛アン協会の事例は、成長重視の戦略に対するアンチテーゼとして
紹介されることが多いが、もう１つの教訓は存続し続けることの難しさである。
当初のメンバーのうち、すでに会員の条件を満たすことができなくなって、
脱落したメンバーもいる。まずは存続しなければ成長などありえないのである。

　しかし、存続し続けるためには、品質へのこだわりや、
危機に対する柔軟な対応など、技術的なものだけではなく、
カルチャー的なものの継承も必要である。
社会に受け入れられる企業カルチャーの確立と、
そのカルチャーを経営者のみならず、全社員にも連綿と継承していくことが、
企業経営の原点ではないだろうか。

　語は変わるが、「定点維持」という言葉がある。
定点も維持も日常良く使う言葉であるが、定点維持という目文字熟語風の
使い方は日常あまりされていない。実は、定点維持とは操船用語である。

　一本釣りをする漁船の場合、魚のいる狭いポイントの上に
いかに長時間前を止めて釣りをするかが重要である。
風が吹き、潮が流れている海上で、一定の場所に船を止めるように
操船することを定点維持という。
一本釣り漁船だけではなく、一部の海洋調査船やサルベージ船などでも
定点維持が重視されている。

　昭和の初期までは、一本釣り漁船には釣り字とは別に櫓押しと呼ばれる
操船係が必要だった。
ちょっと風が強いと、二丁櫓といって２人がかりで櫓を操作して、
船をポイントの上に止めていたようだ。

　３人乗っていても、実際に釣りをするのは１人だけだった。
この頃、すでにエンジンを載せた漁船が登場していたが、
エンジンを使うのは港と釣り場の往復だけで、釣り場ではエンジンを止めて、
櫓押しで定点維持を行っていた。
エンジンでは定点維持のための細かい操船ができなかったのである。

　当時、千葉県勝浦の漁師だった石橋京吉氏が、スパンカーと呼ばれる
装置を発明した。
スパンカーは２枚の帆を組み合わせたもので、船の船先を風に向けるための
ものである。また、角度を調整することにより、潮の流れにも対応することが
できる。風の流れと潮の流れの合成ベクトルの方向に船は流されるが、
スパンカーの働きにより、船が風と潮に押された分だけ、
エンジンで前進してやれば簡単に定点を維持することができる。
スパンカーのおかけで櫓押しは不要になり、１人だけで定点維持をしながら
釣りをすることが可能になった。

　のんびりと止まって釣りをしているように見える漁船も、
止まるということ自体にかなりのノウハウ、技術革新が集積しているのだ。
川の上流に向かってアヒルが静止しているよ引こ見えても、
水の中では川の流れに流された分だけ、必死で水を操いている。
しかし、水の上からでは分からないのと似ている。

　21世紀を本当に良い時代にするために、もう一度、
21世紀にも通用するわれわれの原点とは何かを良く確認し、
その原点にどうやってより近づいていくか、
原点に到達したら、いかに努力して定点維持を行うか、
こういったことが本当に人事だと思う。
(おおのけん)