2025 01,31 15:45 |
|
2009 08,22 10:00 |
|
米国から固定電話が消える ■電話回線を断つ これまでになく多くの米国人が家庭用固定電話を解約している。この流れは由々しき結果を伴うだろう。 米国の新聞業界の凋落については、これまで散々言われてきた。頻繁に引用される試算によれば、米国では2043年の第1・四半期中に最後の新聞が玄関先に配達されるそうだ。だが、それも米国社会のもう1つの必需品に比べれば、確実に健全な見通しだ。家庭用の固定電話である。 通信会社は毎月70万件のペースで家庭用固定電話が解約される事態に直面している。一部のアナリストは現在、米国世帯の25%が携帯電話だけを利用していると推測しており、この割合は今後3年以内に倍増する可能性がある。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
■2025年に米国最後の回線が断たれる もし固定電話の契約件数が今のペースで落ち込んでいけば、最後の固定電話回線は2025年中に断たれることになる。 この傾向がもたらす影響は、大方の人が考える以上に大きい。当然、通信会社は厳しい状況に追い込まれていく。だが、料金が上がって、ビジネスモデルが成り立たなくなると、固定電話を必要とするすべての企業も痛手を被ることになる。同じくらい深刻な問題は、固定電話回線の縮小が警察や消防といった救急サービス業務を脅かすことだ。 過去数年間で進行してきた固定電話利用率の低下傾向は、ここ数カ月でその勢いを増している。 健康調査で固定電話を使用するため、その関連データをまとめている米国疾病対策センター(CDC)によれば、2005年上半期に携帯電話のみを利用する世帯は全体の7.3%しかなかった。それが昨年末には20.2%に達した。昨年下半期だけで2.7ポイント跳ね上がり、過去最高の上昇幅を記録している(上記図参照)。 景気後退が固定電話離れを加速させたとインフォネティクス・リサーチのアナリスト、ステファン・テラル氏は説明する。人々が節約に走り、携帯電話よりは固定電話を切り捨てる心積もりができているからだ。 だが、これは国土が広く、固定電話回線網の運営や改善にコストがかかる米国にとっては特に深刻な問題となる。 こうした事情が近年の通信産業の激変と相まって、米国では都市部でさえ、固定回線経由のインターネットアクセスが忌々しいほど遅くなり、その結果、米国の固定電話は欧州よりも、なくて済むものになっている。 多くの企業が固定電話に依存してさえいなければ、これらすべては大した問題にはならない。一番初めに打撃を受けるのは電話セールス会社だが、彼らに同情する声はあまり聞かれないだろう。 そもそも携帯電話の番号は把握しにくいうえ、米国では携帯電話利用者は発信だけでなく着信にも通信費が徴収されるため、ほとんどの場合、電話セールス会社が携帯電話利用者に電話をかけることは法律で禁止されている(もっとも、多くの電話セールス会社は依然かけているが)。
携帯電話だけを利用する層の拡大は、世論調査会社にも混乱を来している。 昨年初頭まで、調査会社は彼らを無視していた。ところが、そこで世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが、調査会社が「携帯電話オンリー(cellphone-onlys=CPOs)」を締め出すと、大統領選の世論調査でジョン・マケイン氏に対するバラク・オバマ氏のリードを2~3ポイント低く見積もる結果になるとの分析を明らかにした。 また、ピュー・リサーチ・センターのような企業が携帯電話の回答者に通信にかかる費用を払っていることもあって、CPOsに対する調査は2倍も高くつく。さらに都合が悪いことに、調査会社は彼らの実態をほとんど把握できていない。 CPOsは概して30代前半、年間所得は5万ドル以下の未婚者で、平均的な人に比べて転居する頻度が高い。だが、そうした要素を調整したとしても、CPOsには特有の投票パターンが見られるとマサチューセッツ大学アムハースト校のブライアン・シャフナー教授は語る。 同教授の試算によれば、2008年6月時点で固定電話による回答者の49%がオバマ氏に傾倒する一方、CPOsの間ではその割合が65%にも上った。恐らくCPOsは「新しいものに挑戦する意欲が大きい」のだろうとシャフナー教授は推測する。
そして、通信会社自体の問題がある。意外なことに業界大手は、相手が携帯電話会社であろうとケーブル会社であろうと、固定電話を奪われていくことにさほど大きな危機感を抱いていないように見える。携帯電話会社とケーブル会社は既に、固定電話の市場シェアの20%を獲得している。 通信大手の広報担当者らは、こうした状況は織り込み済みで、そのために新規事業に投資してきたと主張する。 例えばベライゾンは、米国の北東部で2000万近くの世帯に固定電話サービスを提供している一方、8770万の契約者を抱える米国最大の携帯電話会社でもあり、さらに250万世帯を網羅する新しい光ファイバー網にも何十億ドルもの投資をしている。 ベライゾンは3州で固定電話事業の一部を売却しており、その他の州でも同様の交渉を進めている。 それでもベライゾンも、同社の最大のライバルであるAT&Tも、大部分においては今も「ワイヤーライン(旧式の固定電話)」のままだ、とバーンスタイン・リサーチのアナリスト、クレイグ・モフェット氏は言う。 同氏の試算によれば、ベライゾン、AT&T両社の固定電話事業は5割強の売上高を生み出しており、コストのシェアはそれ以上に大きいという。これら2社と米国の固定電話会社第3位のクエストは、既に数千人の人員を削減しているが、コスト削減のためさらなる解雇に踏み切ると発表している。
だが、固定電話の急速な減少は各社の利益をどんどん圧迫していく、とモフェット氏は述べる。電話回線網の運営にかかる高額な固定費を、数が減っていく顧客で負担することになるからだ。また、交換台を利用する企業など、固定電話を安易に廃止することができない企業にとっては請求額の増加につながるだろう。 モフェット氏曰く、たとえベライゾンとAT&Tが「ワイヤーラインの問題」を克服できたとしても、その問題が完全に消えるわけではない。ほとんどの通信会社は、いざという時に拠り所となる携帯電話事業を持たない。ベライゾンの固定電話事業の一部を引き継いだフェアポイントは悪戦苦闘している。 ハワイアン・テレコムも固定電話の顧客を急速に失ったため、昨年12月に破産申請する事態に陥った。このような宿命は、大幅な積み立て不足にある通信業界の年金基金がどうなるかという疑問も投げかけている。 AT&Tとベライゾンを合計すると、将来の年金給付債務は、破産直前のゼネラル・モーターズ(GM)のそれと同じくらい大きいのである。 規制当局としては、固定電話会社に補助金を出すか、救済するか決めなければいけないだけではない。旧来の電話網を使った公共サービスが今まで通り提供されるよう手段を講じなければならない。
消防士や救急車サービス、その他様々な「(緊急対応の)第一応答者」が利用する「逆探知」のソフトウエアは、固定電話でしか機能しない。また、電話の設置を望む世帯に必ず電話線を引くという政府主導の内部補助の措置も、主に固定電話に向けられている。回線数が減少すれば、遠隔地や貧困世帯に電話線を引くために必要な補助金の額も増えることになる。 危険なのは、規制当局が無線やブロードバンドサービスに対して新たな税を導入することだ、とモフェット氏は指摘する。 すると、新しいサービスから得られる利益が、老朽化したインフラを生かし続けるために使われることになる。これは成長の鈍化のレシピである。モフェット氏曰く、そうなった時、「ワイヤーラインの問題」は本当の意味ですべての人の問題となるのだ。 PR |
|
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |