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2009 04,19 14:20 |
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(2009年4月16日付 英フィナンシャル・タイムズFinancial Times紙) ティモシー・ガイトナー氏はロイド・ブランクファイン氏を自由にさせてやるべきだろうか? ゴールドマン・サックスの会長兼CEO(最高経営責任者)であるブランクファイン氏は、同社が米国政府の息苦しい支配を振り払う最初の大手銀行になることを切望している。ガイトナー氏は米財務長官として、それを認めるかどうか決めなければならない。
ブランクファイン氏の主張は魅惑的だ。ゴールドマンの将来――そして世界の金融システムの将来――がどうなるか分からないように見えた昨年秋に受け取った100億ドルの税金を返済するのは、ゴールドマンの「責務」だというのである。 ゴールドマンは今、うまくやっているように見える。今週は、18億ドルの最終利益という予想外に堅調な第1四半期決算を発表した。 ゴールドマンはここ数週間、公的資金の返済を既成事実化しようとしてきた。まずブランクファイン氏は悔恨の情を示す――ライバル銀行にとっては腹立たしい――スピーチを行い、ゴールドマンは苦い経験を経て賢くなり、改革の実行に専念すると投資家に誓った。 そして、これらの投資家から50億ドルを調達し、財務長官の前で振り回してみせるカネを用意した。 しかし、ガイトナー氏は時間をかけてじっくり判断すべきである。不安定な米国経済を考えると、ゴールドマンや納税者の支援を受けたほかの銀行の将来が不確かなだけではない。ゴールドマンは、公的支援という恩恵に浴しながら、政治の支配という負担を逃れたいと思っているのだ。それは納税者にとっていい話ではないように思える。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
ほかの銀行を不良債権救済プログラム(TARP)に縛られたままにしておく一方で、ゴールドマンを自由に歩き回らせることには、明らかに政治的リスクがある。そんなことをすれば、これまで何人もの財務長官を輩出してきた歴史を持つゴールドマンが特別待遇を受けているという疑いを強めてしまう。 こうした疑念は、現在政府の管理下にあるアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)とゴールドマンが結んでいたクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)をすべて払い戻すという決定によっても当然和らぐことはなかった。 それよりもっと大きな危険は、ゴールドマンを自由にすることによって長期にわたる前例ができることだ。 ゴールドマンは、補佐官の任命プロセスが紆余曲折を経ているために今なお何もかも1人で取り仕切っているガイトナー氏、あるいは米議会が、自分たちの経営の仕方を根本的に変更する機会を得る前に、逃げ切りたいと思っている。 これまでのところ、ゴールドマンは従業員にどれだけ給与を払えるかという点において多少腹立たしい制限を受けてはいるが、自由奔放なジャズ・エイジの行き過ぎの後にウォール街に構造改革を迫った1933年のグラス・スティーガル法に比べれば、規制など無きに等しい。 ゴールドマンは決して認めないだろうが、同社の政治運動は非常にうまくいっている。 今週発表された決算が、それを物語っている。ゴールドマンは借入比率を大幅に低下させている。資本に対する資産の比率は2007年末の26倍から現在はわずか14倍まで低下した。だが、債券や通貨のトレーディング部門は、市場の混乱から生じた大幅なスプレッド(利回り格差)を利用して、かつてないほど多額の利益を上げている。
ゴールドマンは多額の資本と、将来の混乱に備えて短期米国債の形で保有する1640億ドルに上る手元流動性を持っている。 このことは、ゴールドマンがもはや危険に瀕していないだけでなく、他社の弱みにつけ込んで、苦境に陥った企業が抱える債務や割引されたプライベートエクイティ(非上場株)の持ち分を買い取るだけの十分な経営資源を持っていることも示している。 ブランクファイン氏は、ウォール街のこれまでの給与慣行を「自分勝手で強欲」だと批判していたが、ゴールドマンは今でも収益の半分――第1四半期は47億ドル――をボーナスの原資として確保している。 ブランクファイン氏が言ったように、ゴールドマンは心の中では「屈辱」を感じているのかもしれないが、外からは、以前と少しも変わらない銀行のように見える。 以前と同じというのは、ただ1点、ゴールドマンが今は米国政府の支援を受けていることを除いては、の話だ。それこそが、ブランクファイン氏がTARP資金を返済したいと思っている理由である。ゴールドマンは100億ドルを返済した暁には、望むものを従業員に支払い、多かれ少なかれ好きなものを売買し、以前と同じように活動する状態に戻りたいと思っている。 ブランクファイン氏は幻想を撒き散らしている。たとえゴールドマンが資本を返済したとしても、政府支援を受けた銀行であるために、世界は取り返しがつかないほど変わっているのである。 政府支援を受けた銀行であるという状態は、少なくとも1年間は公式には変わらない。TARPから受け入れた優先株のほかにも、ゴールドマンは連邦預金保険公社(FDIC)が保証した債券でさらに280億ドルを調達しており、FDICのバランスシートを使い続ける意向だ。 より根本的な問題として、我々は今ではゴールドマンが「システム上重要な銀行」であることをはっきりと知っている。要するに、ゴールドマンは大きすぎて潰せない銀行であり、そのバランスシートが破綻した時には、米国政府によって救済されるということだ。
このような特権は、重い条件とともに与えられるべきである。 ゴールドマンの立場は、同行が嫌々与えられたレッテルではなく、自らの選択であるという点に注意してほしい。というのもゴールドマンは事業を縮小し、失敗した時はパートナーがすべてを失うのと引き換えに、望むリスクを何でも取れるプライベートエクイティグループかマーチャントバンクのような金融機関になれば、このような立場を回避できるからだ。 ゴールドマンは、アドバイザリー部門や資産運用部門とともに資本市場部門や株式業務などの有力部門を持ちたいと願っているために、このような存在になることは望んでいない。 同社は、報酬問題で頭が一杯の議会はそれほど真剣には新たなグラス・スティーガル法を導入しようとしていないと――恐らく正確に――計算しているのだろう。 だが、ゴールドマンや他のウォール街の銀行が政府支援に対して適切な対価を支払わざるを得なくなるという確証はまだない。その対価を高くしなければ、これらの銀行に本当に独立しようとする動機は生まれない。
民間所有と暗黙の公的支援、それに不十分な規制という組み合わせがどれほど有害なものになり得るかを知るために、遠い昔を振り返る必要はない。それが、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)や連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を生み出したのだ。 ウォール街の銀行の規模を制限する健全な構造改革について考えることができないのであれば、ガイトナー氏は少なくとも、規制上の制約に痛みを感じさせる役割を担わせる必要がある。同氏は、銀行のレバレッジや自己売買の自由度に制限を加えることについては話しているが、実際にこれが何を意味するのかについては定義していない。 ガイトナー氏は、新たな特権に対してゴールドマンが支払わなければならない対価を設定するまでは、同行を鎖につないでおくべきだ。ブランクファイン氏が大急ぎで普段通りの仕事に戻るのを許せば、ゴールドマンはまた勝利してしまう。 PR |
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