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2008 10,29 20:26 |
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日銀利下げ検討が呼び水、株高/債券高/円安の流れ鮮明に 日銀が利下げを検討していることが明らかになり、日・米・欧の協調利下げ観測を背景に、株高/債券高/円安の流れが鮮明になった。 ただ、GM決算延期をめぐる一部報道などをきっかけに日経平均は上昇幅がいったん縮小し、ドル/円も98円台から96円台へと円高方向に振れた。利下げしないと市場にみられていた日銀の利下げへの動きは金利市場に大きなインパクトを与えたが、株式市場を中心に世界的な景気後退リスクは、協調利下げによっても払しょくされないという一部参加者の見方を裏付けたかたちだ。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
<協調利下げ期待を好感> 29日の株式市場では日経平均が大幅に続伸し、午前の取引で8000円台をいったん回復した。米国株が大幅上昇となったことや、外為市場でドル高/円安に振れたことなどを好感し、朝方から幅広い銘柄に買いが先行した。「海外勢が個別銘柄に大口売りを出すなど需給懸念が消えたわけではないが、月内のヘッジファンド等の売りオーダーは一巡した印象だ。一部の国内の長期運用資金などが買い下がりスタンスをみせている。いったん戻りを試す展開だろう」(コスモ証券・エクイティ部次長の中島肇氏)との声が出ていた。 背景にあるのは、日米欧の主要中銀による協調利下げへの期待感だ。前回の米欧6中銀による協調利下げ時に参加しなかった日銀は「当面、流動性の供給を増やしながら、政策金利は維持していくと多くの参加者が見ていた」(邦銀関係者)という。 株式市場は、この協調利下げへの動きを素直に好感した。第一生命経済研究所・主席エコノミストの嶌峰義清氏は「株式市場は日米欧の協調利下げ観測をひとまず好感して、28日の米国株、きょうの国内株式ともに大幅に上昇した」と指摘。ユナイテッド投信投資顧問・シニアファンドマネージャーの高塚孝一氏も「短期的な実体経済への影響があるかはともかく、世界が利下げ姿勢を見せるなか、これまでそっけない態度を示していた日銀が協調姿勢を示すのは良いことだ」と述べた。 ドイツ証券副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーの武者陵司氏は「ドル高とG7による円高阻止で、世界の流動性環境の潮目は変わった。米国中央銀行を核とする国際信用秩序が構築される見通しが立ったからだ」と分析。その上で「世界株式はいったん大底をつけたと考えてよいのではないか」との見通しを示した。
ただ、第一生命経済研の嶌峰氏は「世界的にファンダメンタルズの悪化がこれから本格化することが明確となる一方で、景気対策が遅れ気味である現状は変わっていない。28日に発表された8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数が調査開始以来、最大の低下となるなど、米国の住宅価格は下げ止まっていない」と指摘。この先の世界経済の動向は楽観できないとの見方を示す。 実際、29日午後の市場では、NHKがニュース番組の中でGM決算の発表が29日から延期されると報道したことをきっかけに「やはり世界景気悪化の影響が広がっている。利下げで全てが解決するわけではない」(大手証券)との見方が広がり、日経平均はいったん7800円台に水準を切り下げる場面もあった。 ある邦銀関係者は「きょうは協調利下げの流れをマーケットは評価したが、金融政策だけでこれから来る世界的な景気後退の波を防げるわけではない。財政政策はすぐに打ち出せないので、米国で新政権がスタートする来年1月までは、景気下押しのリスクが大きい。まだ、この先に大きな株価の下げ局面がありそうだ」と警戒感を緩めていない。
日銀の利下げ検討に最も反応したのは、金利市場だった。国債先物12月限は一時、前日比1円27銭高の138円52銭まで上昇。現物市場では中短期ゾーンを中心に金利が急低下し、5年債利回りは同15bp低い0.880%と4月16日以来、2年債利回りは同14bp低い0.560%と4月7日以来の水準に低下した。 金融政策の影響を受けやすい2年や5年などの中短期ゾーンには銀行勢などからまとまった買いが入った。「今後の財政悪化や市場の流動性不足に伴う価格変動リスクへの警戒が、長めのセクターの上値を抑えている」(BNPパリバ証券・チーフストラテジスト、島本幸治氏)として、長期・超長期ゾーンは出遅れ気味となったが、長期ゾーンには生保・年金勢の買いが入るなど、日銀の利下げ観測報道をきっかけに慎重だった国内勢の買いが顕在化し、国債先物の相場水準を大きく押し上げた。 もっとも、日銀の利下げは市場動向を見極めて最終判断するとされており「日銀が実際に利下げに踏み切るのかどうか、見極めたい」(国内証券)として買い一巡後は様子見ムードも広がった。 複数の市場筋によると、国内の大手銀を中心に、日銀は利下げしないとの思惑が根強く、きょうの利下げ検討を伝える報道を受け、朝方から短期ゾーンの利回りが急低下し、イールドカーブはスティープ化が目立ったという。 BNPパリバ証の島本氏は「各国で金融・財政政策のフル稼働がスティープ化を招く公算に変わりない。特に日本では、長期/超長期債の下落リスクに留意が必要だ」と述べている。 日銀利下げについて、実体経済への効果を疑問視する声も出ているが「日銀がかつて実施した量的緩和政策・ゼロ金利政策で一定の効果を上げたことは記憶に新しい。住宅ローン減税をはじめとする政府の追加景気対策とセットで行われるとすれば、景気浮揚効果が期待できるのではないか」(みずほコーポレート銀行・国際為替部為替市場第二チーム参事役 新井厚志氏)との指摘も出ている。
29日は外為市場でも、大きな価格変動があった。ドル/円は一時、株高などを材料に99.79円まで上昇した。 ただ、東京勢は資本筋、実需筋ともドル売り意欲が高く、さらに高値でファンド勢による利食い売りなども加わり、午後の取り引きでは96円台に押し戻された。「ドルの反発が長続きするかわからない。ドル売り需要をさばける時にさばいておきたいという(輸出)企業が多い」(邦銀)との声が出ていた。 日銀の利下げ検討に加え、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中銀(ECB)も利下げを検討しているとみられ「米国は50bpの利下げが見込まれ、日銀が利下げしたとしても、欧米との金利差は残る。中長期的に見て、円高要因になりやすい」(外為ブローカー)との指摘もある。 クロス円相場は、日経平均が上昇しているにもかかわらず、戻り売りに押されて朝方の高値から大幅に反落している。ユーロ/円はきょうの高値127.34円から一時、122円台まで急落。ユーロ/円と豪ドル/円で、ファンド勢による断続的な利食い売りが出ていたという。ある米系証券関係者は、前日から利下げ期待が市場に広がり株高/円安につながったとの見方を示した上で「その動きはすでに一巡した感じ」と述べている。 日銀が利下げに踏み出したことで、世界的な協調利下げ期待の広がりを背景に株安連鎖にとりあえず、歯止めが掛かったかたちだが、短期的な視点とは別に、大きな問題が覆いかぶさってきたのではないかとの懸念も一部で表明されている。日銀OBでもあるクレディ・スイス・経済調査部チーフ・エコノミストの白川浩道氏は「金融市場が再び日銀によるアグレッシブな金融緩和を要求し、円安・株高を切望するならば、数年後に今よりも厳しい円安・株高修正(円高・株安)を受け入れる覚悟ができていなくてはらない」と指摘。その上で「目先の市場安定化を優先し、日本経済の長期繁栄を犠牲にすべきではない」と強く警鐘を鳴らしている。 PR |
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