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2008 09,10 11:00 |
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国営ファンドを巡る動きが示唆する「米国・イラン共謀の可能性」 元外交官・原田武夫の『国際政治経済塾』 ■「ホワイトナイト」として期待される国営ファンド 金融の世界では、時に変にメルヘンチックな用語が使われる。その一例が「ホワイトナイト(白馬の騎士)」である。「ホワイトナイト」とは、企業Aが好ましくない企業Bに買収されそうになった際、困っている企業Aに対して救いの手を差し伸べる企業Cのことを表す。 この時、企業Cは、企業Bに先行してA社株を買収したり、企業Bに対し逆に買収を仕掛けたりする。ハゲタカに食われる前に企業Aは「ホワイトナイト探し」を必死で行うのだ。 今のマーケットは、「ホワイトナイト」の例えを使うとよく分かるように思う。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
こうした湧き上がる懸念を払拭すべく、国際通貨基金(IMF)は08年4月、SWFによる投資に関するガイドラインを決めることとした。そして9月1日及び2日、チリのサンチヤゴで行われた会合(IWG)において、その概要に関する「合意」がもたれたのだという。ちなみに最終的な「合意」は10月11日にワシントンで開かれるIMF総会で得られる見込みだ。そうであれば、10月11日がマネーの織り成す巨大な“潮目”となる可能性が高いこととなろう。 しかし、本当に「合意」は得られたのだろうか?そもそも、このガイドラインはSWFが今後行う投資を安全なものとして保証できる力を持っていくのだろうか?また、ガイドラインの準備が進み、SWFによる大量の資金注入が見込まれる現在に至ってもなお、株価が下落の一途を辿っているのはなぜなのだろうか?
マネーが織り成す「世界の潮目」をウォッチしている中、この関連で最近気になるニュースが1つあった。先程ご紹介したIWGでは、アラブ首長国連邦(UAE)のSWFであるアブダビ投資庁長官が議長を務めた。そのUAEの有力メディアが また、法律の専門家たちからも、このガイドラインが形骸化するといった批判が聞こえ始めている(9月1日付英インターナショナル・フィナンシャル・ロー・レビュー誌参照)。 外交官であった私の経験からすると、外交の世界では次のようなことがよくある。会合の現場においては全体のために合意した“ふり”をするが、後になって「自分は合意していない」と叫び出し、いわば“後出しじゃんけん”をするというやり方である。これを外交の世界では「解釈宣言」という。今回のガイドラインはまだ最終的に決定されていない。しかし、10月11日の「合意」の後、すぐさま異議を唱える国が出てくる可能性はなきにしもあらずなのである。 ここで注目すべき国の1つが中国である。中国のSWFである中国投資有限責任公司(CIC)は、「SWFガイドラインに従う準備ができている」と早々と宣言している。しかし、これまでの経緯を振り返ると、CICはそもそも米欧勢がリードして決められるガイドラインに従うことを拒絶していたのだ。その上、ガイドラインを「愚か」とまで批判していたのである。 そのCICが手の平を返したかのように、ガイドラインの受け入れを表明したのだから驚きだ。また、CICが近く日本の株式市場に投資を行うとの情報も大手メディアを通じて流されている。SWFを巡る最近の中国勢の言動は“異様”としか言いようがない。 他方、ロシアはというと、この「ガイドライン」の無視すらも暗示している。6月末に、ポールソン米財務長官がモスクワを訪問した際、プーチン露首相が「ロシアにはSWFがない」と発言したのである。これは米国が主導権を握る形で「ガイドライン」が決められても、これには従わないことを示唆した発言として捉えられているのだ。 このように、各国のSWFガイドラインを巡る立場は、全く安定していない。CICのように立場が二転三転するところもあれば、ロシアのようにガイドラインを寄せ付けない立場を取るところすらあるのだ。つまり、来たる10月11日に総会の中で議論が行われ、最終的に採択されるまでは安心できない。だからこそ、マーケットはその間、“神経質”な展開を続けるものと考えられるのだ。
ちなみに、今後の国際経済全体の生殺与奪を握っているIWGに、私たちの国、日本は入っていない。それではどのような国が入っているのかというと、こともあろうに、米国と「悪の枢軸」の1つであるはずのイランの名が連ねられているのだ。 私はこれまで、現在の金融不安を払拭するには、有効需要創生の1つとして、「地政学リスクの炸裂によるマーケットの乱高下」が必要であるとの分析を行ってきた。そして、その主な“仕掛け”がイラン問題である可能性が高いと申し上げてきたのである。 しかし、これは必ずしもイランにとって“悪くない話”である可能性が高いことも忘れてはならないだろう。 去る6月23日にEUが独自の対イラン制裁を決定し、イラン最大の金融機関であるメリ銀行のEU域内にある全資産の凍結、更にはメリ銀行の欧州支店による営業を禁止した。この時、イランは欧州にある約1,750億ドルもの資金を引き出し、その一部を金(ゴールド)の購入に充てたと自ら宣言したのだ。そのため、仮にイスラエル及び米国が対イラン攻撃を行い、「有事の金」で金価格は高騰すると、被害者であるはずのイランも得をする仕組みが既にできあがっているのである。つまり、 いずれにせよ10月11日のIMF総会において完全な合意が得られるという確証がないにも拘らず、IMFは今回はガイドラインを発表したのである。こうしたIMFの“焦り”からも分かるように、世界の金融マーケットが引き続き危機的状況にあることは確かである。日本の個人投資家・ビジネスマンにとっても、9月は気の抜けない展開が続いていきそうである。 PR |
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