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2008 04,07 18:11 |
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4月7日以降、百貨店やスーパー、専門店など大手流通業の2008年2月期の決算発表が本格化する。 既に三越、J・フロントリテイリング(大丸と松坂屋の持ち株会社)、セブン&アイ・ホールディングス、イオンなどが2007年秋以降の景気減速を受けて年明け後に業績の下方修正を余儀なくされている。 主要取引先であるオンワードホールディングスが2008年2月期に予想する販路別の売上高は、百貨店が前年比2.6%減で、スーパーなどチェーンストアが同5.1%減。取引先のこうした厳しい見立てからも分かるように、今回は「流通惨敗」とも言うべき色合いが濃い決算となりそうだ。それを取り繕うように流通各社は新しい中期経営計画を作成中。決算と同時に発表するという。 興味のある方は、"つづきはこちらです"をクリック!
百貨店業界にとって痛手となったのが、百貨店の金城湯池だった富裕層の市場に変調が見られたことだ。特に、ここ数年の株価上昇局面で富裕層の仲間入りをした「にわか富裕層」が脱落したことが大きい。逆資産効果だ。
例えば身近な贅沢品の1つである腕時計。首都圏のある大手百貨店では2007年12月を境に100万円を超す高級腕時計の店頭売上高が落ち始めた。 ただ、にわか富裕層が消費の第一線から脱落したことで、逆に存在が際立って見えてきたものもある。「高級腕時計も、富裕層を受け持つ外商社員がついている上顧客からの注文は減っていない」とこの百貨店幹部は明かす。 にわか富裕層と異なり、より豊富な資産を持つ旧来の富裕層の市場は依然として堅調だということだ。 富裕層を「金融資産1億円以上の世帯」と定義した野村総合研究所金融コンサルティング部の宮本弘之上級コンサルタントは、「金融資産が5億円以上ある旧来の資産家や不動産オーナーなどにとって、年初からの2割近い株価下落は、資産の絶対額から見ればまだ狼狽するほどではない」と言う。 こうした富裕層の2極化は、百貨店以外の場でも見受けられる。高級外車販売のヤナセでは同11月以降、400万~600万円クラスの外車販売実績に陰りが見え始めたが、「1000万円を超える車種は、まだ落ち込み幅は小さい」(ヤナセ)。本当の富裕層マーケットの足腰の強さを示した格好だ。 しかし、にわか富裕層の脱落で見えてきた富裕層市場を今後も百貨店が独占できる保証はない。むしろ富裕層の消費に占める百貨店のシェアは低下していくと見るのが自然だ。市場の底堅さを見た異業種の新規参入組が、百貨店とは異なるアプローチで市場の取り込みを急ピッチで進めている。 「2006年の設立以来、会員数は一貫して伸びている」。こう話すのは、金融資産1億円以上の富裕層のみが入会可能なプライベートクラブを運営するアブラハム・グループ・ホールディングス(東京都港区)の髙岡壮一郎社長。 同社の会員制組織「YUCASEE(ゆかし)」はインターネットでの活動が中心。富裕者限定のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と考えればいい。富裕層が横につながることで、会員間では百貨店の外商マンが1人で集められる情報とはケタ違いの多さ、深さの情報が交わされている。モノの売り買いで言うと、例えばウィーン交響楽団の本拠地にある大ホールの90年間命名権が「25億円」で募集されている。特別仕様の別荘や外車、リゾート、美術品などの情報も飛び交う。 同社は今年1月、試験的に会員向けの購買代行サービスも始めた。自動車、金融商品、美術品、旅行など、様々なモノやサービスを会員の求めに応じて探し出し、購買を代行する。百貨店と真正面から競合する新業態だ。 髙岡社長は、百貨店が富裕層を捉え切れていないとし、理由をこう分析する。「世の中に溢れてしまったモノは富裕層は求めない。コモディティー化していない商品を求めようとすれば個別対応しかあり得ない」。この問題意識への解を示せない限り、富裕層市場での百貨店の存在感は低下し続ける。
一方、原材料費の高騰などに伴う価格転嫁が始まった、専門店やスーパーなどの現場。こちらは消費者が生活防衛の度合いを一層強めている。その結果、堅調と見られてきた属性の購買層や商品群の消費で底割れが始まった。 顧客属性で言うと、学生やOLなどの若い女性客の消費に黄信号が灯り始めた。ファッション関連支出の優先順位が高く、景気の変動を受けにくいはずだが、その神話が崩れつつある。 若者に人気の衣料品店や雑貨店が多く入居するファッションビル運営のパルコ。2007年度の上半期は値札を気にせずに商品を手に取るお客が多かったが、下半期に入ると価格志向が急速に強まっているという。平野秀一社長はその様子をこう表現した。 「バブル崩壊後に起きた消費行動の変化に似ている」 この言葉が大げさでないことは、ファッション業界で「最後の砦」と言われる化粧品の不振を見ても分かる。 予算の制約で衣類の購入を見送っても、女性は化粧で自身の変身願望を満たすことだけは守るとされてきた。しかし、資生堂は2007年10~12月期、国内化粧品の売上高が前年同期より6%も減少した。富裕層向けの5万円のクリームは好調だが、1万円前後の「少し手を伸ばせば届く」商品や数千円台の化粧品の買い控えが起きている。 IPO(新規株式公開)長者などイリュージョン(幻想)的な富裕層が脱落した一方で、底堅い旧来の資産家に食い込み切れない百貨店。そして、消費意欲の程度を表す「消費者態度指数」が下落を続ける中、生活防衛の度合いを強める生活者との格闘が本格化するスーパーや専門店。 流通企業が決算発表で示すであろう新たな経営計画は、激変する消費市場の姿をその企業が本当に正視したのか、正面から格闘する覚悟があるかを周囲に示す唯一の材料となる。 PR |
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