2024 11,24 03:21 |
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2007 12,01 12:00 |
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“隠れ債務超過状態”ジャスダック経営を擁護する大新聞のピンボケ DIAMOND online このところ、日本証券業協会の傘下にある「ジャスダック」を中心とした新興市場の再編問題が、非常に混迷しているかのように報じられている。だが、混迷しているのは、再編問題ではなく、むしろ、報じる大手メディアの方ではないだろうか。 各メディアはそろって、問題の本質が、東証マザーズや大証ヘラクレスの10倍前後の手数料を証券会社各社から徴収しないと経営が成り立たず経営危機に陥っているジャスダックの再建問題であることを見落としている。そして、「身売り」「合理化」に抵抗し、保身を図っているとしか思えないジャスダック現経営陣に与する記事を量産しているのが実情と言わざるを得ない。 まず、代表的なメディアの報道の流れをご紹介しておこう。 一連の報道の発端となったのは、朝日新聞が11月24日付で報じた「大阪証券取引所が、ジャスダック買収を打診、日証協と協議」という記事だ。そして週末を挟んで、毎日新聞が同24日付で「大阪証券取引所、ジャスダック買収へ、日証協に提案」と、この報道に追随した。 ところが、翌27日になって、朝日、毎日に先を超された形の日本経済新聞が「新興市場、再編巡り混迷 ジャスダック、独立にこだわる」と報じた。その根拠として、ジャスダックの筒井高志社長の記者会見での「自分の力を強化していきたい」との発言を取り上げているのだ。 フジサンケイ・ビジネスアイも「筒井社長は『2年後に新しい取引システムを導入するなど新しい取り組みを進めている』と単独での存続に意欲を見せた」と日経と足並みを揃える形で報道した。 さらに日経は、東証の斉藤淳社長の定例記者会見での発言のうち「肝心のジャスダックが自分たちでやるんだと繰り返し主張している。第3者が力で、べき論でやってもうまくいかない面がある」と述べた点にスポットを当てて、ここに新興市場の再編問題の混迷が極まったと印象付けた。
最初の朝日と毎日の2つの記事に共通しているのは、大証が主体的に買収を提案したという点である。ところが、筆者が取材したところ、まさに、この点で、この2つの記事のニュアンスが事実とずれていることが判明した。 というのは、日証協の安東俊夫会長が筆者の取材に応じ、「私から今夏、(東京証券取引所と大阪証券取引所の両方に対して)買収希望がないか打診した」と真相を明かしたからだ。日証協は、発行済み株式数の7割を超える株式を保有するジャスダックの大株主だ。その打診の意図についても、安東氏は「東証マザーズ、大証ヘラクレス、ジャスダックの3つの新興市場の再編を通じて、米ナスダック市場に対抗できるような壮大な市場を作る布石にしたかった」と、率直に語っている。 ただ、安東氏が明かしたのは、きれい事の夢物語だけではない。その背景には、現在、経営規模・収入のわりに多過ぎる人員を抱えて、マザーズ、ヘラクレスと比べると桁違いに高い株式売買手数料(ほぼ10倍)を証券各社から徴収しないと経営が成り立たないジャスダックの「再建問題があった」ことも認めている。 ちなみに、証券各社は、投資家に手数料を請求する際に、個別の取引所の委託手数料の料率を細かく開示することがない。このため、ほとんど一般には知られていないが、ジャスダックは、マザーズ、ヘラクレス並みに手数料を下げると、あっという間に経営が破綻しかねない状況にある。関係者の中には、こうした状態を評して「隠れ債務超過」「実質債務超過」と揶揄する向きもあるほどなのである。 そこで、ジャスダックの経営問題を放置できないと考えた安東会長がまず、動いた。自力再建は困難と考えて、東証と大証に再建に協力を打診したのだ。背景には、ジャスダックの経営再建問題があった。これが、一連の問題の真相である。降って湧いたかのように、突然、大証が買収を申し込んだわけではなかったのである。 こうした安東協会長の打診に対して、東証は実に冷ややかだった。東証では、すでにマザーズの運営がある程度軌道に乗っており、これ以上、新興市場の振興に力を入れなくとも、新興市場銘柄はいずれ、東証第1部に移行してくるところが多いと読んでおり、「渦中の栗を拾う行為を避けたい」(東証幹部)との判断が働いたからである。そこで、やんわりと、しかし、即座に協力拒否を安東協会長に伝えたという。 この事実と、斉藤東証社長の記者会見での発言を比べると、なかなか興味深い。日経が報じた、あの会見で、実は、斎藤社長は「東証がまったく関心がないという態度をとるつもりはない。考えることがあれば、考えるが、今のところ、頭の整理がついていない」と、この時点に至っても、東証として関心がないということを述べているに過ぎないのだ。 にもかかわらず、この会見を、あえて、新興市場の再編問題全体の混迷を示唆したものとして報じたところは、記者の方向感覚の甘さが露呈したと言わざるを得ない。
この点についても、筆者は取材した。米田道生大証社長はこれに応じ、「結論から言えば、大変興味はあるが、課題も多いとお答えした」と回答した。 換言すれば、大証にとってはヘラクレスという新興市場が経営の大黒柱なので、仮にジャスダックを買収・統合して、それがヘラクレスの強化に繋がるならば、大証の生き残り策として是非、実現したいが、現状では「隠れ債務超過状態」のジャスダックを高値掴みさせられるようなことがあれば、大証本体の経営までおかしくなりかねない、との経営判断があると伝えたというのである。
ここまでみてくると、最後にクローズアップされるのは、やはり、「隠れ債務超過状態」にあり、マザーズやヘラクレスより桁違いに高い売買手数料を取り、証券各社ばかりか、投資家にもその負担を付け回しながら、まだ2年後へ向けてシステム投資を続けて、リストラ・合理化はその先の課題にして頬かむりし、いたずらに独立路線に拘泥しているジャスダック経営陣の呆れた無責任ぶりだろう。そんなジャスダック経営陣の主張に理があるかのように報じた新聞にも、首を傾げたくなる。 日証協の安東会長は、「年内に大きな方向性は打ち出したいが、大株主の腕力で無理やり押し通すような方策は避ける」と、なお、話し合いを重視して、ジャスダック経営陣の理解を得る姿勢を守っている。だが、今のジャスダック経営陣を、それほど手厚く処遇する必要があるだろうか。果敢な決断こそ、それぞれの新興市場や証券会社、投資家の利益に繋がるように思えてならない。 PR |
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